水際みづぎは)” の例文
「是はなんでせう」と云つて、仰向あほむいた。あたまうへには大きなしいの木が、日のらない程あつい葉をしげらして、丸いかたちに、水際みづぎは迄張り出してゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし何時見てもあの女は、何だかかう水際みづぎは立つた、ふるひつきたいやうな風をしてゐる。あれは確かにどの女も、真似の出来ない芸当だらう。……
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おつぎはそれから水際みづぎはへおりようとするとみづわたつてしづかにしかちかひとこゑがして、時々ときどきしやぶつといふひゞきみづおこる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
水際みづぎは立つた、あの冷静な外交振りも、斯かる深い源泉から湧き来つたものかと、今更のやうに感服されるのである。
趣味としての読書 (新字旧仮名) / 平田禿木(著)
……した水際みづぎは岩窟いはむろに、つたり、すわつたり、手拭てぬぐひあやにした男女だんぢよ裸身はだかがあらはれたかとおもふと、よこまどからはうまがのほりとかほす、うまやであらう。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主が年の頃は十七八になりもやせん、身には薄色に草模樣を染めたる小袿こうちぎを着け、水際みづぎは立ちしひたひよりたけにも餘らん濡羽ぬれは黒髮くろかみ、肩に振分ふりわけてうしろげたる姿、優に氣高し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
水際みづぎはの砂の上を、そつと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さかした石橋いしばしがある。渡らなければ真直に理科大学の方へ出る。渡れば水際みづぎはつたつて此方こつちへ来る。二人ふたりは石橋を渡つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長崎の湾も小山は水際みづぎはからすぐにそびえ立つて、そのまた小山には、鬱々うつうつと松が茂つてゐる、しかし上陸して見ると、植物はノオルウエイよりもはるかに熱帯的である。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
で、老爺ぢい今度こんど自分じぶんきざんだうをを、これはまた不状ぶざま引握ひんにぎつたまゝひとしくげる、としぶきつたが、浮草うきくささつけて、ひれたて薄黒うすぐろく、水際みづぎはしづんでスツととまる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときおつぎのこゝろにはなゝめ土手どて中腹ちうふくへつけられた小徑こみち見出みいだしてほど餘裕よゆうがなかつたのである。土手どて内側うちがは水際みづぎはからしのが一ぱい繁茂はんもして夜目よめにはそれがごつしやりと自分じぶんあつしてえる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
で、一かうすゞしさなんぞせつけない。……たゞ桟橋さんばしから、水際みづぎはから、すぐすくへる小瑕こゑびこと。……はじめ、はねうす薄萠黄うすもえぎせみが一ぴきなみうへいて、うごいてゐた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)