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東風
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こち
ふりがな文庫
“
東風
(
こち
)” の例文
吹きこめた北の風西の風がかすかな
東風
(
こち
)
にかはらうとする。その頃になるときまつて私は故のない憂欝に心を浸されてしまふ。
樹木とその葉:23 梅の花桜の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
東風
(
こち
)
菫
(
すみれ
)
蝶
(
ちょう
)
虻
(
あぶ
)
蜂
孑孑
(
ぼうふら
)
蝸牛
(
かたつむり
)
水馬
(
みずすまし
)
豉虫
(
まいまいむし
)
蜘子
(
くものこ
)
蚤
(
のみ
)
蚊
(
か
)
撫子
(
なでしこ
)
扇
燈籠
(
とうろう
)
草花 火鉢
炬燵
(
こたつ
)
足袋
(
たび
)
冬の
蠅
(
はえ
)
埋火
(
うずみび
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「あの
東風
(
こち
)
と云うのを
音
(
おん
)
で読まれると大変気にするので」「はてね」と迷亭先生は
金唐皮
(
きんからかわ
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
から煙草をつまみ出す。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
年頃
(
としごろ
)
愛
(
めで
)
玉ひたる梅にさへ別れををしみたまひて「
東風
(
こち
)
吹
(
ふか
)
ば匂ひをこせよ梅の花
主
(
あるじ
)
なしとて春な
忘
(
わすれ
)
ぞ」此梅つくしへ
飛
(
とび
)
たる事は
挙世
(
よのひと
)
の知る処なり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
かすかな
東風
(
こち
)
が、梅のかおりをほのかにおくってくる、かな女はそのかおりをきき澄ますようなしずかさで話しだした。
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
「やはり外は冷たいの。この冷たい
東風
(
こち
)
に馴れるまでのあいだであろう。いまに咳もやむ。
陽
(
ひ
)
もあたたかになろうし」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
南風
(
はえ
)
の時は何処、
東風
(
こち
)
では釣れぬ、そよそよ北風がよい、その他雨上り、水の濁り、曇り工合、又朝夕のマヅメ時——といつた状況が会得されてくる。
日本の釣技
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
冬中
閉
(
とざ
)
されてあった
煤
(
すす
)
けた部屋の
隅々
(
すみずみ
)
まで、
東風
(
こち
)
が吹流れて、町に
陽炎
(
かげろう
)
の立つような日が、
幾日
(
いくか
)
となく続いた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
水嵩
(
みずかさ
)
の増した
渓流
(
けいりゅう
)
のせせらぎ
松籟
(
しょうらい
)
の
響
(
ひび
)
き
東風
(
こち
)
の訪れ野山の
霞
(
かすみ
)
梅の
薫
(
かお
)
り花の雲さまざまな景色へ人を誘い
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
山三郎はじり/\して居りますが、何うも仕方がない、朝の内は
西風
(
ならい
)
が吹き、昼少々前から
東風
(
こち
)
から
南風
(
みなみかぜ
)
に変って、彼是れ今の四時頃に漸く浦賀へ這入りました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ふいと風が吹立ツて、林は
怯
(
おび
)
えたやうに、ザワ/\と
慄
(
ふる
)
へる……
東風
(
こち
)
とは謂へ、
尚
(
ま
)
だ雪を
嘗
(
な
)
めて來るのであるから、
冷
(
ひや
)
ツこい手で引ツぱたくやうに風早の頬に
打突
(
ぶツか
)
る。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
……なぜ、こうポカつくかといえば、この二三日、ずっと南よりの
東風
(
こち
)
が吹いているからなんです。嘘だと思うなら、浅草の測量所へ行って天文方のお日記を見ていらっしゃい。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この土地の極寒には、民家の煙突から立ち昇る煙が、皆蝋燭を立てたやうに真つ直ぐになつてゐるのであるが、けふは少し西へ靡いてゐる。大洋から暖気を持つて来る
東風
(
こち
)
が吹いてゐるのだらう。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
「
東風
(
こち
)
吹かばにおいおこせよ梅の花、あるじなしとて春を忘るな」
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
うつせみの世ははかなしや風すらも西は
東風
(
こち
)
にぞ吹きかはりぬる
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
〽五月西、春は南に秋は北、いつも
東風
(
こち
)
にて、雨降ると知れ
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
東風
(
こち
)
と待ち南とも恋ふ風音を鎮もる
獄
(
ひとや
)
に
終日
(
ひとひ
)
聴きたり
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
東風
(
こち
)
吹くと語りもぞ行く
主
(
しゅう
)
と
従者
(
ずさ
)
太祇
(
たいぎ
)
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
年頃
(
としごろ
)
愛
(
めで
)
玉ひたる梅にさへ別れををしみたまひて「
東風
(
こち
)
吹
(
ふか
)
ば匂ひをこせよ梅の花
主
(
あるじ
)
なしとて春な
忘
(
わすれ
)
ぞ」此梅つくしへ
飛
(
とび
)
たる事は
挙世
(
よのひと
)
の知る処なり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
秀政どのの
御意
(
ぎょい
)
、まことに至言。世間の様態、ものに
喩
(
たと
)
えて申すならば、吉野の桜、雪とけて、
東風
(
こち
)
の訪れに会いたるごとく、人もみな、やがてお花見を
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「まずまず、この年も今日一日になった。春になれば南か
東風
(
こち
)
が吹きだすから、故郷へ吹き戻される便宜もあるだろう。いい年のはじめになるように、目出度く〆飾をして正月を迎えよう」
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
... それだから
東風
(
こち
)
を
音
(
おん
)
で読むと僕がせっかくの苦心を人が買ってくれないといって不平を云うのです」「こりゃなるほど変ってる」と迷亭先生は図に乗って腹の底から雲井を鼻の
孔
(
あな
)
まで吐き返す。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一、その外
霞
(
かすみ
)
、
陽炎
(
かげろう
)
、
東風
(
こち
)
の春における、
薫風
(
くんぷう
)
、
雲峰
(
くものみね
)
の夏における、露、霧、
天河
(
あまのがわ
)
、月、
野分
(
のわき
)
、
星月夜
(
ほしづくよ
)
の秋における、雪、
霰
(
あられ
)
、氷の冬におけるが如きもまた皆一定する所なれば一定し置くを可とす。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
東風
(
こち
)
の顔
咥
(
くわ
)
へ
煙管
(
ぎせる
)
の煙飛び
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
如月
(
きさらぎ
)
近くを思わせる、
冷
(
ひや
)
やかな
東風
(
こち
)
が吹きだして、小さい風の
渦
(
うず
)
が、一月寺の闇に幾つもさまよっているようだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「昨日の約束を忘れたのか。
下
(
くだ
)
した船を
東風
(
こち
)
に乗せて国へ
上
(
のぼ
)
らせようという目出度い祝儀に、盃が下ったまま上らないのは縁起が悪い。房次郎よ、
泣
(
うた
)
うのはやめて、早く盃をのぼらせないのか」
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
河内路
(
かはちぢ
)
や
東風
(
こち
)
吹き送る巫女が袖
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
東風
(
こち
)
の空雲一筋に
南
(
みんなみ
)
へ
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
太夫
(
たゆう
)
鹿
(
か
)
の
子
(
こ
)
の腰帯に、
裾
(
すそ
)
を上げて花結びにタラリと垂れ、柳に衣裳をかけたようななよやかさは、
東風
(
こち
)
にもたえまいと思われるほど、細ッそりとした形である。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
河内路や
東風
(
こち
)
吹き送る
巫女
(
みこ
)
が袖
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
伝馬町の不浄門からぽい、と突き出されて、いきなり、
娑婆
(
しゃば
)
の朝
東風
(
こち
)
に吹かれた途端は、覚えているが?
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
河内路
(
かわちじ
)
や
東風
(
こち
)
吹き送る
巫
(
みこ
)
が袖
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
しばらく、四天王寺に
停
(
とど
)
まっていた。そして、ふたたび
草鞋
(
わらじ
)
の緒を結ぶと、足を、
河内路
(
かわちじ
)
へ向けて、二月末の木の芽時を楽しむように、
飄々
(
ひょうひょう
)
と、
袂
(
たもと
)
を
東風
(
こち
)
にふかせてゆく。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
河内路
(
かはちぢ
)
や
東風
(
こち
)
吹き送る
巫
(
みこ
)
が
袖
(
そで
)
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「湖南の
東風
(
こち
)
、鞍上の揺られごこち、何とも
堪
(
たま
)
りません。——思わずうとうといたしました」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同時に、彼の人生観へも
惻々
(
そくそく
)
と二月の
東風
(
こち
)
のように冷たい息吹きをかけられた心地がした。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
足がつかえたように、白々と吹く春先の
東風
(
こち
)
の中に、又八は
目瞬
(
まばた
)
いていた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うすく埃の立つ
東風
(
こち
)
の中を、駕は飛ぶ、駕は追う。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まだ
東風
(
こち
)
が肌寒い。翌年の二月初旬である。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東風
(
こち
)
吹
(
ふ
)
く
一隊
(
いったい
)
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“東風”の意味
《名詞》
東 風(とうふう、ひがしかぜ、あゆ、こち、こちかぜ)
東からの風。
(とうふう)中国において、春になると、東から吹いてくる風。春の到来を象徴する。春風。
(出典:Wiktionary)
東
常用漢字
小2
部首:⽊
8画
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
“東風”で始まる語句
東風子
東風愁寂幾回開
東風俗
東風戦