服裝なり)” の例文
新字:服装
かれ其時そのとき服裝なりにも、動作どうさにも、思想しさうにも、こと/″\當世たうせいらしい才人さいじん面影おもかげみなぎらして、たかくび世間せけんもたげつゝ、かうとおもあたりを濶歩くわつぽした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
腰までしかない洗晒あらひざらしの筒袖つゝそで、同じ服裝なりの子供等と共に裸足はだしで歩く事は慣れたもので、頭髮かみの延びた時は父が手づからつて呉れるのであつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かへつてたのはうさぎで、綺羅美きらびやかな服裝なりをして、片手かたてにはしろ山羊仔皮キツド手套てぶくろを一つい片手かたてにはおほきな扇子せんすつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
二十三四の女盛りで、艶艶した庇髪の陰から覗く、黒味勝ちな眼に馬鹿に charm があるんだ。何と云ふのか知らないが、服裝なりも素敵に凝つてゐたよ。
S中尉の話 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
みのるは男の動く樣子を此方こつちから默つて見てゐた。義男は片手で戸棚から夜着を引き下すと、それをはすつかけにり延ばして、着た儘の服裝なりでその中にもぐり込んで了つた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
六月にはいつたある日、小ざつぱりした服裝なりで、鼻下に髭などある四十恰好の男が、二人の洋服男を連れて訪ねて來た。駒平は、かねて心待ちにしてゐたらしく彼等を迎へた。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
たゞたまのしるしばかり、かみいとむすんでも、胡沙こさかぜかたみだれた、せ、かほやつれたけれども、目鼻立めはなだちのりんとして、口許くちもとしまつたのは、服裝なりうでも日本やまと若草わかくさ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此間も、草履穿きでかまはない服裝なりをして、家を締めて出掛けますと、近所にいらつしやる主人たくのお友達が窓からのぞいて、「ヤア、村田の妻君、今日は見學か。」と冷かしなさるんですよ。
見学 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
此の家の者は皆きちんとした服裝なりをしてゐるのに、此の子だけは殆ど裸體である。色が氣味惡く白く、絶えず舌を出して赤ん坊の樣にベロ/\音を立て、涎を垂れ、意味も無く手を振り足を摺る。
服裝なり老人等としよりらとはちがつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
路傍みちばたの夏草の中に、汚い服裝なりをした一人の女乞食が俯臥うつぶせに寢てゐて、傍には、生れて滿一年とたぬ赤兒が、しやがれた聲を絞つて泣きながら、草の中を這𢌞はひまはつてゐた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
休業きうげふのはりふだして、ぴたりととびらをとざした、なんとか銀行ぎんかう窓々まど/\が、觀念くわんねんまなこをふさいだやうに、灰色はひいろにねむつてゐるのを、近所きんじよ女房かみさんらしいのが、しろいエプロンのうすよごれた服裝なり
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しか宗助そうすけにはそれが安井やすゐだらうとはしんじられなかつた。ところそのはなしいた翌日よくじつすなは宗助そうすけ京都きやうといてからやく週間しうかんのちはなしとほりの服裝なりをした安井やすゐが、突然とつぜん宗助そうすけところたづねてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あなたの服裝なりは困つたわね。」
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)