はら)” の例文
狐は毎夜その女のところへ忍んで来るので、張の家では大いにうれいて、なんとかして追いはらおうと試みたが、遂に成功しなかった。
水牛の背にも、昆蟲あつまりて寸膚を止めねば、時々怒りて自らテヱエルの黄なる流に躍り入り、身を水底にまろがしてこれをはらひたり。
勿論もちろん是も面白い世の中といえば言える。いわゆる二重三重生活は我々の単調なる存在から、退屈というおそろしい悪魔を追いはらう効力はある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いかな? その陋劣さもしい心を人間ひとの胸からはらひ浄めて、富めるも賤きも、真に四民平等の楽天地を作る。それが此教の第一の目的ぢや。解つたぞな?
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
人蟒われいまだ死せざるに、この者われをあなどり、取次もなしに入り来るといかって毒気を吐くを、舎利弗慈恵を以てはらい、光顔ますますく、一毛動かず。
直言讜議ちょくげんとうぎまずはばからず、時には国王の逆鱗げきりんに触れるほどの危きをも冒し、ますます筆鋒を鋭くして、死に至るまで実利主義のために進路の荊棘けいきょくはらった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
高ッ調子のお国がいなくなると、うちは水の退いたようにケソリとして来た。お作は場所塞ばしょふさげの厄介物をはらった気でいたが、新吉は何となく寂しそうな顔をしていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
まひを列ねてあたはらひ、歌を聞きて仇を伏しき。すなはち夢にさとりて神祇をゐやまひたまひき、所以このゆゑに賢后とまを一〇。烟を望みて黎元を撫でたまひき、今に聖帝と傳ふ一一
この中で、露国ろこくの船将が対馬尾崎浦つしまおざきうらに上陸し駐屯ちゅうとんしているとの報知しらせすら伝わった。港はとざせ、ヨーロッパ人は打ちはらえ、その排外の風がいたるところを吹きまくるばかりであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
七たびも生かえりつつ夷をぞはらわんこころ吾れ忘れめや〔七たび生れて賊を滅ぼす〕
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それは幕政の局に当つて財況其他の実情を知悉し、夷のはらふべからず、戦の交ふべからざることを知つてゐたからである。しかし此に於ては漢方より洋方に遷ることをがへんぜなかつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
其咒力により一切の災厄をはらい病苦を救いて、功徳を施すことを怠らなかった。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
けだし弓は昔時せきじにあつては神聖なる武器にして、戦場に用ゐらるるは言ふまでもなく、蟇目ひきめなどとて妖魔ようまはらふの儀式もある位なれば、金気きんき粛殺しゅくさつたるに取り合せておのずから無限の趣味を生ずるを見る。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「それは聞いた、横浜の毛唐けとうを打ちはら先鋒せんぽうとやら」
士もなんだか夢のような心持になって、かれらを追いはらうすべもなく、手足をなぐられるやら、噛まれるやら、さんざんの目に逢わされた。
他の土人たちは声でおどし、かつ鉄砲をその前後の空間に打ち掛けて、悪魔を追いはらおうとしたがついに効を奏せず、捕われた者は茂みに隠れてしまった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こは車の大道を去るべき知らせなり。我は道の傍にきづきたる壇に上りぬ。脚下には人の頭波立てり。今やコルソオの競馬始らんとするなれば、兵士は人をはらはんことに力をつくせり。
しかし史朗はその時、清川に頭臚あたまなぐられ、泣きつらかきながらはらわれて来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
古アッカジア人既に婬鬼をはらう呪法を備え(一八七四年パリ板ルノルマン著『カルジアおよびアッカジア魔法篇』三六頁)、一八一七年板マーチンの『トンガ島人記』二巻一一九頁には
「あしきをはらうて救けたまへ。」の御神樂歌と代り、大和の國の總本部に参詣して來てからは、自ら思立つてか、唆かされてか、家屋敷所有地全體賣拂つて、工事總額二千九百何十圓といふ
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
先ずその蛙の巣窟をはらうに如ずと云うので、お出入りの植木職を呼あげて、庭の植込をかせ、草を苅らせ、池をさらわせた。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ネブトというと腫物はれもののように聞えるが、なお目的は睡魔をはらうにあって、宇都宮の方ではこれをネムタ流しといい、その際に紙で作った人形を流す風習もあった(同上)。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『ハツハハ。酔へエばアア寝たくなアるウ、(と唄ひさして、)寝れば、それから何だつけ? うん、何だつけ? ハツハハ。あしきをはらうて救けたまへだ。ハツハハ。』と、またグラリとする。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
太史たいし(史官)の奏上そうじょうによると、昨夜は北斗ほくと七星が光りをかくしたということである。それは何のしょうであろう。師にその禍いをはらう術があるか」
「あしきをはらうて救けたまへ。」の御神楽みかぐらうたと代り、大和の国の総本部に参詣して来てからは、自ら思立つてか、唆かされてか、家屋敷所有地もちち全体すつかり売払つて、工事費総額二千九百何十円といふ
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかも昔からの言い伝えで、毛人を追いはらうには一つの方法がある。それは手をって、大きな声ではやし立てるのである。
あらゆる邪魔をうちはらひ、戀と意地とを立て通した最期の笑顏も、鏡に映せばおなじ顏で、勝利の滿足に變りはあるまい。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
なんとかして永久にこの幽靈を追ひはらつてしまふのでなければ、小幡一家の平和を保つことは覺束おぼつかないやうに思はれた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
但し道士の修法が成就して、潮はようやく退いた後であるので、はらいの祈祷をおこなった上に、堤を築き、宮を建てることにして帰った。(隠居通議)
彼はどんな利益を犠牲にしても、悪魔のような久次郎を追いはらってしまわなければならないと決心した。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのうちに事態いよいよ危急に迫って、七月二十九日には成歓牙山せいかんがさんのシナ兵を撃ちはらうことになる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老女はあると答えると、それではおれがはらってやろうといって、道士はふくろのなかから一枚のおふだを取り出して火にくと、やがてどこかで落雷でもしたような響きがきこえた。
なんとかしてその禍いをはらう法はあるまいかと相談しましたが、与茂四郎は別にその方法を教えてくれなかったそうです。ただこの後は決して蟹を食うなと戒めただけでした。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのなかに郝居士かくこじという人があった。かれは邪をはらい、魔をくだすの術をよく知っていた。
その頃、誰が云い出したのか知らないが、コロリの疫病神をはらうには、軒に八つ手の葉をつるして置くがいいと云い伝えられた。八つ手の葉は天狗の羽団扇はねうちわに似ているからであると云う。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
敵がちっとぐらい暴れ廻ったところで、誰かが又それを何とか撃ちはらってくれるだろう位に多寡をくくっているので、彼は年の若い師冬が熱しているほどにはこの問題を重大視していなかった。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
背後うしろからは忠一を先に、角川家の人々が追って来た。前には巡査が立っている。敵に前後を挟まれた重太郎は、ず当面の邪魔をはらうにしかずと思ったのであろう、刃物をふるって巡査に突いてかかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
正親 かうして惡魔をはらふのぢや。(又打つ。)
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)