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捨鉢
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すてばち
ふりがな文庫
“
捨鉢
(
すてばち
)” の例文
「おいらは船頭だ、船頭は船をうごかすだけだ! 頼まれたものを積むだけだ! そんなこたア知るもンか」と
捨鉢
(
すてばち
)
の語気になった。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軍国主義、愛国心、アナアキストの
捨鉢
(
すてばち
)
な
行為
(
ふるまひ
)
、人殺しの美しい思想、そしてまた婦人に対する
侮蔑
(
さげすみ
)
——かういふものを
凡
(
すべ
)
て歌ひたい。
茶話:01 大正四(一九一五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼女にはしかし気のせゐか、その軽快な皮肉の
後
(
うしろ
)
に、何か今までの従兄にはない、寂しさうな
捨鉢
(
すてばち
)
の調子が潜んでゐるやうに思はれた。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
熟柿
(
じゅくし
)
くさいにおいが、あぶらぎった体臭の中に溶けて、ぷうんと鼻先に流れてきた。おのぶは、わざとらしく
捨鉢
(
すてばち
)
な笑顔を見せながら
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
鰐淵直行、この人ぞ間貫一が
捨鉢
(
すてばち
)
の身を寄せて、
牛頭馬頭
(
ごずめず
)
の手代と頼まれ、五番町なるその家に
四年
(
よとせ
)
の
今日
(
こんにち
)
まで
寄寓
(
きぐう
)
せるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
そして
捨鉢
(
すてばち
)
な
舌鼓
(
したつづみ
)
の音が聞えたかと思ふと、黒板を背にして呆然と、まるで影法師か何かのやうに立ちすくんでしまつた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
半分は
捨鉢
(
すてばち
)
な気持で新聞広告で見た霞町のガレーヂへ行き、円タク助手に雇われた。ここでは学歴なども訊かれず、かえってさばさばした気持だった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「もうこれ以上は仕方がない。心気
疲労
(
つか
)
れて仆れるまで、ここにこうして立っていよう」造酒は
捨鉢
(
すてばち
)
の決心をした。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかも更に悪いことには、人間はこの運命の狂いを悔いることなく、
殆
(
ほと
)
んど
捨鉢
(
すてばち
)
な態度で、この狂いを潤色し、美化し、享楽しようとさえしているのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それらの発散する
捨鉢
(
すてばち
)
な幻怪味と
蟲惑
(
こわく
)
も、音楽も服装も食物も、みんな
落日
(
おちび
)
を浴びて長い影を引いている。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
と、
捨鉢
(
すてばち
)
になって彼も勝手な理窟を考えた。五六十円と睨んだ彼女の懐中は
既
(
も
)
う自分の様に思えだした。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
と、
捨鉢
(
すてばち
)
につぶやいたお初、門倉たちがいる方へ、出て行ったが、相変らずのキンキンした調子で
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
自選であるか、自詠であるかどうかは知らないが、それにしても最初の句の「ともかくも」とは
拠
(
よん
)
どころなくという意味も含んでいる。仕方がないからとの
捨鉢
(
すてばち
)
もある。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「それからお内儀さんというものが
捨鉢
(
すてばち
)
の
大乱痴気
(
だいらんちき
)
で
身上
(
しんしょう
)
は忽ちに滅茶滅茶、
家倉
(
いえくら
)
は人手に渡る」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
腐れた
屍
(
しかばね
)
に
胆
(
きも
)
を冷やし、人間のする
鬼畜
(
きちく
)
の
業
(
ごう
)
を
眼
(
まなこ
)
にするうち、度胸もついて参ります、
捨鉢
(
すてばち
)
な
荒
(
すさ
)
びごころも出て参ります、それとともに、今日は人の身、明日はわが上と
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
僕としては何だか寂しいような、悲しいような、やるせなく
捨鉢
(
すてばち
)
になったような思いがする。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼女はなお——最後の喜びと言えないまでも——心が元気づいてくる若々しい愛情の最後の動きを、愛や幸福の希望などにたいする力の
捨鉢
(
すてばち
)
な
眼覚
(
めざ
)
めを、経験したのだった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
外国ですと
身体
(
からだ
)
に故障のない限りは決して飢えるという恐れがありません。料理屋の給仕人でも商店の
売児
(
うりこ
)
でも、新聞の広告をたよりに名誉を
捨鉢
(
すてばち
)
の身の上は、何でも出来ます。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
絶望、
呪詛
(
じゅそ
)
、
捨鉢
(
すてばち
)
——悲劇の材料なら好みのまゝにわれ等の一家から拾えるであろう。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ゆうべ
吉原
(
よしわら
)
で
振
(
ふ
)
り
抜
(
ぬ
)
かれた
捨鉢
(
すてばち
)
なのが、
帰
(
かえ
)
りの
駄賃
(
だちん
)
に、
朱羅宇
(
しゅらう
)
の
煙管
(
きせる
)
を
背筋
(
せすじ
)
に
忍
(
しの
)
ばせて、
可愛
(
かわい
)
いおせんにやろうなんぞと、
飛
(
と
)
んだ
親切
(
しんせつ
)
なお
笑
(
わら
)
い
草
(
ぐさ
)
も、
数
(
かず
)
ある
客
(
きゃく
)
の
中
(
なか
)
にも
珍
(
めずら
)
しくなかった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
一の大将分の奴が無造作に飛ぶを見て他の輩が多少
慄
(
おのの
)
きながら随い飛べど、最後の一、二疋は他の輩の影見えぬまで決心が出来ず、今は全く友達にはぐれると気が付き
捨鉢
(
すてばち
)
になって身を投げ
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
もう二十七八にもなるでしょうが、大家の坊っちゃんらしく、若々しいところがあって、妹のお小夜に似た品のよさと、勘当息子らしい
捨鉢
(
すてばち
)
なところが、妙な不調和と魅力になっているのです。
銭形平次捕物控:093 百物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼にとって大事なことは、ストライキの場合のことだったが、万一にも、それを発表したために、次郎が
捨鉢
(
すてばち
)
になり、進んでストライキの主導権をにぎるような結果になってしまっては、つまらない。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
こう宗蔵は
捨鉢
(
すてばち
)
の本性を
顕
(
あら
)
わして、左の手で巻煙草を吸付けた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
腐れた
屍
(
しかばね
)
に
胆
(
きも
)
を冷やし、人間のする
鬼畜
(
きちく
)
の
業
(
ごう
)
を
眼
(
まなこ
)
にするうち、度胸もついて参ります、
捨鉢
(
すてばち
)
な
荒
(
すさ
)
びごころも出て参ります、それとともに、今日は人の身、明日はわが上と
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
普段ならば人々は見向きもしないのだが、畑作をなげてしまった農夫らは、
捨鉢
(
すてばち
)
な気分になって、馬の売買にでも多少の
儲
(
もうけ
)
を見ようとしたから、前景気は思いの
外
(
ほか
)
強かった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
わたくしはかような訳の判らぬアンニュイな気持を
捨鉢
(
すてばち
)
に朝飯の膳へ
托
(
かこつ
)
けまして
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
女性の特徴たる乳房その他の
痕跡
(
こんせき
)
歴然
(
れきぜん
)
たり、教育の参考資料だという口上に
惹
(
ひ
)
きつけられ、
歪
(
ゆが
)
んだ顔で見た。ひそかに抱いていた性的なものへの嫌悪に逆に作用された
捨鉢
(
すてばち
)
な好奇心からだった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「無論、屋敷は焼け落ちてしまったさ」と、
捨鉢
(
すてばち
)
のように言い放った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
相手に
捨鉢
(
すてばち
)
に出られると、かえって恐ろしい事になりそうです。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この女、
捨鉢
(
すてばち
)
に、どこまでも追い詰めて来る気じゃな?
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
刃
(
やいば
)
に歯向う獣のように
捨鉢
(
すてばち
)
になって彼れはのさのさと図抜けて大きな五体を土間に運んで行った。妻はおずおずと戸を
閉
(
し
)
めて戸外に立っていた、赤坊の泣くのも忘れ果てるほどに気を転倒させて。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
捨鉢
(
すてばち
)
に柄を投げつけた。そして陣刀をぬきはらったが、たびたびの血戦になれた伊那丸は、とっさに咲耶子と力をあわせ、いっぽうの
雑兵
(
ぞうひょう
)
をきりちらして、
湖畔
(
こはん
)
のほうへ
疾風
(
しっぷう
)
のようにかけだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのくせ、「見たけりやたんと見るがいい!」とでも云つた
捨鉢
(
すてばち
)
な、しかも妙な落着きのやうなものが千恵の胸のそこにはありました。ふてくされながら、かげで舌を出してるみたいな気持でした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
少し
捨鉢
(
すてばち
)
な調子です。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いうと、彼は、
捨鉢
(
すてばち
)
ぎみになって
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少し
捨鉢
(
すてばち
)
な調子です。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そんな
捨鉢
(
すてばち
)
をいわないで」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捨
常用漢字
小6
部首:⼿
11画
鉢
常用漢字
中学
部首:⾦
13画
“捨”で始まる語句
捨
捨児
捨置
捨台詞
捨身
捨石
捨台辞
捨小舟
捨科白
捨札