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こころもと
ふりがな文庫
“
心許
(
こころもと
)” の例文
面貌
(
めんぼう
)
ほとんど生色なく、今にも
僵
(
たお
)
れんずばかりなるが、ものに激したる
状
(
さま
)
なるにぞ、介添は
心許
(
こころもと
)
なげに、つい居て着換を捧げながら
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仁右衛門はそれを見ると腹が立つほど淋しく
心許
(
こころもと
)
なくなった。今まで経験した事のないなつかしさ可愛さが焼くように心に
逼
(
せま
)
って来た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
女中のお竹さん、西山の景勝を説くこと極めて詳、ただし湯島近所から雪の山が見えるとはいわないので、少しく
心許
(
こころもと
)
なく思う。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
「いかにも、私には三人の連れの者がありました、途中においてその者の姿を見失いたるが故に
心許
(
こころもと
)
なく、これまで追いかけて参りました」
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
魯粛もその点は甚だ
心許
(
こころもと
)
なかったのである。——が、今となっては、どうしようもない。途方に暮れるばかりだった。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
夫婦は「当所に加藤家浪人弓削田宮内住居」の札を見つけて驚喜した、雨風に
曝
(
さら
)
されて、札は
心許
(
こころもと
)
なく古びていたが、夫婦は意気込んで、ところの者に尋ねた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
「わたくし
昨夜
(
ゆうべ
)
は、恐ろしい夢を二つほど見ましたの。まだ、こんなに、破れるような
動悸
(
どうき
)
がして……。わたくし貴方を、狩猟にやるのが
心許
(
こころもと
)
なくなってきましたわ」
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しかし、出来栄えはごらんの通りで、小田氏のかずかずの御助力にも、また竹内氏の遠方からの御支持にも、果してお報いできるかどうか、
甚
(
はなは
)
だ
心許
(
こころもと
)
ない次第である。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この方は食
中
(
あた
)
りの心配はないが、今度の壁画摸写の難事業を思うと、如何にも
心許
(
こころもと
)
ない気がした。
壁画摸写
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それより幸子と悦子だけでは家の方が
心許
(
こころもと
)
ないから、しっかり留守番をするように頼むと、きびしく云い付けて追い返して、家から半丁ほど北のところで線路へ上った。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ぞろぞろと
蹤
(
つ
)
いて来た女や子供たちも、そうですかとは引き取ることが出来ないのだ。殿様が旅に出られることは後に残されるものにとって
甚
(
はなは
)
だ
心許
(
こころもと
)
ない思いであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
と、法印は、かよわい女一人をあずかっているのが、
心許
(
こころもと
)
なげだ——見かけによらぬ気の弱い奴。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
一八七二年正月ケント州の Bedgebury の親戚の宅で泊っているうちに劇烈な熱病(rheumatic fever)に罹り、一事は
心許
(
こころもと
)
ない容態であった。
レーリー卿(Lord Rayleigh)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
『あのお
爺
(
じい
)
さま、』
私
(
わたくし
)
はとうとう
切
(
き
)
り
出
(
だ
)
しました。『
私
(
わたくし
)
一人
(
ひとり
)
では
何
(
なに
)
やら
心許
(
こころもと
)
のうございますから、お
差支
(
さしつかえ
)
なくば
私
(
わたくし
)
の
守護霊
(
しゅごれい
)
さまに一
緒
(
しょ
)
に
来
(
き
)
て
戴
(
いただ
)
きたいのでございますが……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
罪のかげはこの
児
(
こ
)
の上を
掩
(
おお
)
えるように思われて、その行末の何とやらん
心許
(
こころもと
)
なく物悲しく覚えらるるなり、早き牛乳配達と遅れたる新聞配達は、相前後して
忙
(
せわ
)
しげに人道を行違う
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
母親は何となく
心許
(
こころもと
)
なく思って、見え隠れにあとからついて行く、というのであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
上野を出るあの
混雑
(
こんざつ
)
の汽車に、小さな女の子が一人で出掛けるのは、
心許
(
こころもと
)
ないと思ったが、これを差しむけた。ところが翌日、思いもかけず姉娘が、博雄を伴って
悄然
(
しょうぜん
)
と帰って来た。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
どうも御婦人がたについてかれこれ申しあげるのは甚だもって
心許
(
こころもと
)
無い次第で、それに、もうそろそろ我々の主人公たちのことに戻らなければなるまい、というのは、もう二三分の間
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
懐炉
(
かいろ
)
だけでは
心許
(
こころもと
)
なくて、熱湯を注ぎこんだ大きな
徳利
(
とくり
)
を夜具の中へ入れて眠ることにしていたが、ある夜、徳利の
利目
(
ききめ
)
がなくって真夜中ごろにしばらく忘れていた激しい痛みを感じだした。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
二三日前に雪が降って、まだ雪解けの泥路を、女中と話しながら、高下駄でせかせかと歩いて行く彼女の足音を、自分は二階の六畳の部屋の万年床の中で、いくらか
心許
(
こころもと
)
ない気持で聞いていた。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
相生町の老女の家へ、人と犬とを送り届けて、昨夜出た人の行方を
心許
(
こころもと
)
なく帰って見ればその人は、極めて無事にこうして眠っているのであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
足軽でも
奔
(
はし
)
らせるべきではあるが、主君の飲料水となると小者では
心許
(
こころもと
)
ない。私が——と伝右衛門自身歩いて、漸く捜しあてて来た井戸水であった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大助は敵の我を忌むを
識
(
し
)
りて、
小主公
(
わかだんな
)
の安否
心許
(
こころもと
)
なく、なお
推返
(
おしかえ
)
して言わんとするを、三郎は遮りて
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
妾に会わんと
仰
(
おお
)
せらるるも多分はこの物好きのおん興じにやと
心許
(
こころもと
)
なく存じ候えども、あまりの
嬉
(
うれ
)
しさに兎角の分別も
出
(
い
)
でず、唯仰せに従い明夜は必ず御待ち申す
可
(
べ
)
く候。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今宵もちょろちょろと火を燃していた。口には出さなかったが、
心許
(
こころもと
)
ない夜々であった。彼らの仲間はそういう日と夜を、ぽつねんと迎え、ぼっそりと見送っていたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
ただ、ペン一本で、こうして考え考えしながら一字、一字、書いて、それを訂正して行こうとしているのだから、
心許
(
こころもと
)
ない話である。げに、焼き滅ぼすは一瞬、建設は百年、である。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
くどうも言うようじゃが、
心
(
こころ
)
せい。お身の行く末いかにも
心許
(
こころもと
)
ないぞ。玉藻はきのう少納言入道の屋形へまいって、別室で入道に対面し、世におそろしいことを密々に訴えたそうじゃ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
近ごろ、上方において、信雄卿が
殺
(
あや
)
められたりとの聞えがある。秀吉の勢威、日に
募
(
つの
)
って、畏るるものを知らぬ折から、ありそうなことだ、何とも
心許
(
こころもと
)
ない
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの洋裁学院の附近が最も被害
激甚
(
げきじん
)
であって、妙子が無事であるかどうか
頗
(
すこぶ
)
る
心許
(
こころもと
)
ないこと、憂慮のあまり夫に頼んで、兎も角も行ける所まで行って見て貰うことになり
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
較
(
くら
)
べると、アカダモのうすい葉は黄ばんではかなげな色に見え、ドロ柳の葉は
心許
(
こころもと
)
ない白っぽさでめまぐるしいほど揺らめいていた。季節は彼らのところにいち早く訪れるのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
さあ、お奥では大騒動、
可恐
(
おそろ
)
しい大熱だから
伝染
(
うつッ
)
ても悪し、本人も
心許
(
こころもと
)
ないと云うので、親許へ下げたのだ。医者はね、お前、手を放してしまったけれども、これは日ならず
復
(
なお
)
ったよ。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして、こんなに酔っている男を和泉屋へ案内するのは、なんだか
心許
(
こころもと
)
ないようにも思ったらしいが、今更ことわるわけにも行かないので、かれは勘定を払って半七を表へ連れ出した。
半七捕物帳:03 勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「ただいまの
御諚
(
ごじょう
)
は口惜しいことにござります。多年御恩顧の
輩
(
ともがら
)
を、左様に
心許
(
こころもと
)
なき者と思し召されてか」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胸のあたりで、声は聞えたようであるが、口へ出たかどうか、
心許
(
こころもと
)
ない。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とは云ったが、冬子の顔は
未
(
ま
)
だ蒼ざめていた。市郎は
心許
(
こころもと
)
なげに
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
心許
(
こころもと
)
ない、可哀さうな感じがするのである。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ほかの小者では、
心許
(
こころもと
)
ない。先頃、難波内記も
賞
(
ほ
)
めておったし、そちならばと、思われるので」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何となく
心許
(
こころもと
)
ないようにも思われてならなかった。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
心許
(
こころもと
)
ない、可哀さうな感じがするのである。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
送っているようでは
心許
(
こころもと
)
ない。ありのままを、夏侯楙駙馬へご報告申しておくゆえ、後詰あるもなきも、随意になさるがよい。それがしは先を急ぎますから、
今朝
(
こんちょう
)
お暇を申す
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心許
(
こころもと
)
ない、
可哀
(
かわい
)
そうな感じがするのである。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「酔いどれの十兵衛に代り、てまえが又十郎の相手いたしまする。久しく木剣も取りませぬゆえ、試合の程、
心許
(
こころもと
)
ない心地もいたしますなれど、不興の
償
(
つぐな
)
いともならば——」
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
心許
(
こころもと
)
ない顔つきをした。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
当国の朝倉殿も、あのような
態
(
てい
)
では、天下の
覇業
(
はぎょう
)
などという大事の相手には
心許
(
こころもと
)
ない。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一濤
(
いっとう
)
一濤ぶつかってくるたびに、
心許
(
こころもと
)
なく、船の力を疑い出すのは人情というものじゃ
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「自分の死は決しておるものの、ここを抜かれては、君家の滅亡と、
心許
(
こころもと
)
のう存じおる。弾正がある間は、織田勢とて、北伊勢を
恣
(
ほしいまま
)
にはさせぬが、この城の潰滅は、
大納言家
(
だいなごんけ
)
の滅亡となろう」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「次郎の為になることだもの、不親切なお前にまかせておいては
心許
(
こころもと
)
ない」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おめえに預けておくのは
心許
(
こころもと
)
ないし、おれが持ち歩いているのも物騒。いッそのこと人目にかからない山の中へでも
埋
(
い
)
けておいて、それから悠々と夜光の短刀を探しにかかろうと考えているんだ」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生きて空しく帰って来るかどうか——秀吉には
心許
(
こころもと
)
なく思われる。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ほう、それは
心許
(
こころもと
)
ない……」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心
常用漢字
小2
部首:⼼
4画
許
常用漢字
小5
部首:⾔
11画
“心”で始まる語句
心
心配
心地
心持
心算
心細
心得
心底
心臓
心遣