張合はりあひ)” の例文
美禰子が是はうですかと云ふと、うですなといふ。是は面白いぢやありませんかと云ふと、面白さうですなといふ。丸で張合はりあひがない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いや、張合はりあひもなくひらくうち、「あゝ、品川しながはね。」カタリとまどけて、家内かない拔出ぬけだしさうにまどのぞいた。「駄目だめだよ。」そのくせわたしのぞいた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
義母おつかさんさだめしめづらしがるだらうとおもつてたのが、れいごと簡單かんたん御挨拶ごあいさつだけだから張合はりあひけてしまつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
明日よりは何を張合はりあひに生きむと思へば、世にも哀れなるわが姿の、今更のやうに面影に立つさへ可笑し。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
喧嘩になると思つてゐた武助さんは、張合はりあひが抜けて、口先だけで、ものをいつてゐたのである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
うして二内部ないぶ連絡れんらくしてるといふことわかつたので、んだか張合はりあひけてる。小雨こさめす。新聞記者連しんぶんきしやれんはそろ/\惡口わるくちはじめる。地主連ぢぬしれんはまご/\してる。
此のときぐらゐ藝術家の意久地いくぢの無いことはあるまい、いくらギリ/\むだとツて、また幾ら努力したと謂ツて、何のことはない、やぶけたゴムまりべたに叩付たゝきつけるやうなもので何の張合はりあひもない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
おつたはつたまゝ獨語ひとりごとやうに、さうしてすこ張合はりあひのないやう
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たれらぬので、ひさしあひだ雨曝あまざらしぢや。船頭せんどうふね退屈たいくつをしたところまたこれが張合はりあひで、わし手遊おもちやこさへられます。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彌次馬やじうまなんざ、こんな不景氣ふけいきな、張合はりあひのないところには寄着よりつきはしないので、むらがつてるもののおほくはみなこのあたりの廣場ひろばでもつて、びしよ/\あめだからたこ引摺ひきずつてた小兒等こどもらで。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……張合はりあひのないれい寢坊ねばう朝飯あさめしましたあとだから、午前ごぜん十時半頃じふじはんごろだとおもふ……どん/\と色氣いろけなく二階にかいあがつて、やあ、いゝお天氣てんきだ、難有ありがたい、と御禮おれいひたいほどの心持こゝろもち
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……で、だも途中とちゆうまでびくおもうち張合はりあひもあつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)