広東カントン)” の例文
と、いうのは、去年の秋ごろ、広東カントンから一通の手紙が来て、これから広東よりももっと南の、○○方面の特務機関として赴任する。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ハルクがはじめて口をきいた、しかも片言ながら、とにかく広東カントン語で……。そして二人は、しっかり握手をしてしまったのである。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
みさきの十二天へ登って、お光さんは、港内を見下ろしながら、広東カントン服の膝を組んで、その上へ、巻煙草を挟んだ指を放心的に乗せていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東雅楼と云うのは南京町ナンキンまちにある、表の店で牛豚肉の切売もしている広東カントン料理の一ぜんめし屋なのであったが、四人が奥へ這入って行くと
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
三十何呎なんフィイト蟒蛇うわばみを退治した話や、広東カントン盗侠とうきょうランクワイセン(漢字ではどんな字に当るのだか、ルウズ氏自身も知らなかった。)
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
広東カントン出来の錦襴の筒袖に蜀紅錦の陣羽織を羽織り、亀甲きっこう模様の野袴を穿き、腰に小刀を帯びたままゴロリとばかりに寝ていたが
船が印度洋を通りかゝつた頃、青年将校は苦力とまかなひ方との間に激しい喧嘩がおつぱじまつてゐるのに気がいた。賄ひ方は広東カントン人だつた。
対極広東カントンに向って一大デモンストレーションを行っている新事態が、「アメリカの発見そのものよりも重大な結果」として分析されている。
広東カントンの貴重な料理で大きな宴会でなければ使わないと言ったが、わたしはかつて江蘇こうその飯屋の献立表でこれを見たことがある。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
てう六時に船は港口かうこうり、暹羅シヤムの戴冠式に列せられる伏見若宮わかみや殿下の一行を載せて伊吹、淀の二艦と広東カントンから来た警備艦宇治の碇泊して居るあいだを過ぎ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いけなければ船はエベットを仮船頭にして広東カントンへやり、おれはお前らといっしょにカムサッカで越冬し、翌春、奥蝦夷(千島)へ下るロシア船をみつけ
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
蜀山人しょくさんじんの狂歌に「さ蕨が握りこぶしをふり上げて山の横つら春風ぞふく」、支那にも蕨の異名を『広東カントン新語』に拳菜、『訓蒙字会』に拳頭菜など挙げいるから
先人李石曹リーシーツワンは何故か同志の実戦に参加しないで上海より広東カントンに身を避けたのであった。それにもかかわらずいまでは南京ナンキンと広東の提携説さえつたわるに至った。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
青蛙堂せいあどう小石川こいしかわ切支丹坂きりしたんざか、昼でも木立ちの薄暗いところにある。広東カントン製の大きい竹細工の蝦蟆がまを床の間に飾ってあるので、主人みずから青蛙堂と称している。
* その後広東カントンを去る四、五十マイルの内地で見た物にくらべると、これ等は余程丈夫でも密実でも無い。
広東カントン盲妹もうまいという芸者があるということだが、盲妹というのは、顔立の綺麗な女子を小さいうちに盲にして特別の教養、踊りや音楽などを仕込むのだそうである。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
初めは北京にいたが、近頃ではずっと上海シャンハイにいた。その他広東カントンにもいたし、武昌ブショウにも永くいたね。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
広東カントンの勇士が方天戟ほうてんげきを操る如く、南洋の土人がブーメラングをろうする如く、米友は杖槍を投げては受留め、受留めては投げながら、川中島の川原の中でひとりたわむれている。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
五層の楼の上から一望すれば果てはなく、広東カントン全市の風と月の鑑賞の権利を一人占めにした思いである。広州の路は碁盤のように区画されて家が立ちならび、珠江には木の葉を
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
まあなべにはとじぶたという釣りあいでさがしてくれる例を知っていますけれど、何しろ二人の妹は満州と広東カントンに嫁にいっていて消息なく、二人の弟はどちらも戦死してしまい
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ヨーロッパにおける茶についての最も古い記事は、アラビヤの旅行者の物語にあると言われていて、八七九年以後広東カントンにおける主要なる歳入の財源は塩と茶の税であったと述べてある。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
広東カントン奉行の取り扱いをもって済ませるつもりであったのがそもそもの誤算であったと言い、政府で取り扱うまいとしたところから破裂に及んだと言い、広東奉行が全くのこしらえごとをして
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
春は、清明せいめいの後、秋は重陽ちようやうの後、順風を得て渡航するのを常としたが、朝鮮や遼東に向ふ者は対馬から、直隷、浙江せつかう、山東に向ふ者は五島から、福建、広東カントンに渡るものは薩摩から出発した。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
これを要するに我より外国に乗り出ださざるの大弊にて今日これを改めんことを欲す。西洋においては露・英・仏・米・蘭の五国、漢土にては天津テンシン上海シャンハイ広東カントンの三港に日本商館を設け建つべし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
汽船会社の先輩の世話で上海シャンハイ航路の汽船の事務員になって、上海へ往く途中で病気になり、その汽船会社と関係のある上海の病院に入院中、福岡県出身の男と知己しりあいになって、いっしょに広東カントンへ往き
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
広東カントンあたりなら、この派手な花も大いにふさわしそうな気がするが。
家からの便りは、それゆえ、太平洋戦がはじまると間もなく広東カントンで受取つたきり、それが最後であつたから、一家をあげて父の郷里の宇都宮近在へ疎開しようとしている消息を知つているだけである。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
ところが意外にも支那に利権回復熱が高まり、米が広東カントンに鉄道の敷設をはじむるとこれを拒む。独逸ドイツ山東サントンに鉱山の採掘を始むると、また躍起運動を開始してこれを拒み、いずれもその利権を取戻した。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
○高雄市商工館所蔵広東カントン系本島男子用布鞋ぬのぐつ
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
並び広東カントン武漢ぶかん秋二つ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
広東カントン蜜柑みかんをむいたれば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「それは第一が中華民国の上海シャンハイとか広東カントンとかいった方面から。第二は露西亜ロシアのウラジオから。第三は太平洋方面あるいはアラスカ方面から」
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふたりの間には、同時に、おそろしく早口な、広東カントンごろつきのアクセントで、喧嘩じゃないかと思うような会話がはじまった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「数年ならずして英蘭からチャグレスへ、チャグレスおよびサンフランシスコからシドニー、広東カントンおよびシンガポールへ汽船の定期就航を見るに至るだろう」
咸臨丸その他 (新字新仮名) / 服部之総(著)
奉天の総領事赤塚正助氏は正覚坊しやうがくばうのやうに酒が好きなので聞えた男だ。氏が前任地広東カントンから奉天への赴任途中久し振に郷里の鹿児島へ廻り道をした事があつた。
広東カントン人の用心深さが麻雀マアジャン、私から一千ドルをサルーンから投出してしまった。黄海は日本の駆逐艦くちくかんのマストが見える、夜は外人達によって舞踊会は傾いた部屋を旋回している。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
陸海軍からも捜索機が出され、台湾の全島や澎湖島ほうことう、対岸の福建、広東カントン両省の大陸沿岸東沙島やフィリッピンのルソン島まで、不時着しそうなところは、残らず捜索された。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
四川しせん広東カントンは? ちょうど今戦争の真最中だし、山東さんとう河南かなんの方は? おお土匪どひが人質をさらってゆく。もし人質に取られたら、幸福な家庭はすぐに不幸な家庭になってしまう。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
広東カントンが独立して以来にはかに断髪者が殖えたので剪髪せんぱつ店が大繁昌である。その店頭の旗に「漢興剪髪かんおこるはつをきれ」などと大書たいしよして居る。日本人の在住者は醜業婦を加へてわづかに一千足らずである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
土産みやげハ何ニシヨウ。御注文ノ広東カントン犬ハコノ間カラ捜シテイマスガナカナカ見ツカラナイ。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
前清ぜんしん乾隆けんりゅう年間のことだそうだ。広東カントンの三水県の県署のまえに劇場がある。そこである日、包孝粛ほうこうしゅくの芝居を上演した。包孝粛は宋時代の名判官はんがんで、日本でいえば大岡さまというところだ。
女侠伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
広東カントンへの路は珠江をさかのぼる。船を住まいとする幾万艘をみつつ行く。ともづなをつなぎとめたのは植民州のはずれの岸であるが、市中の音や楼閣の姿がガラス窓を通して入ってくる。)
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そして、彼女は広東カントン仕立のスマートな服がよく似合った。色の白い、やや丸こい顔と、天啓陶磁てんけいとうじのような薄手な姿態にも。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数年ならずしてイングランドからチャグレスへ、チャグレスおよびサンフランシスコからシドニー、広東カントンおよびシンガポールへ、汽船の定期就航を見るにいたるだろう。
やがて広東カントン料理になるべく宿命づけられているとも知らず、稜々たる三角形の鰭を水面に高くあらわして、近海産の世にも恐ろしきタイガー・シャーク、つまり短く書くと虎鮫が
軍用鮫 (新字新仮名) / 海野十三(著)
広東カントンへは対岸の九竜停車場きうりようステイシヨンから汽車に乗れば四時間で達せられ、澳門マカオへは汽船で二時間の航程だから、有名な賭場見物にかないかと勧める人もあつたが、自分は少し腸を痛めて居るので辞した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
広東カントン製の竹彫りの人形にもなかなか精巧に出来たのがあります。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だが、いかに強力な補助金が与えられたにしても、一方サンフランシスコ・広東カントン(上海)間に石炭のための寄港地がなかったら、前記の技術条件の下では物にならない。
(おれは旅人たびびとらしい。わが家は、きっと、遠い広東カントン省かどこかにあるのであろう)
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は釣糸も雑誌も弁当も煙管も、そこへ置きっぱなしにしたまま、自転車にひらりとうちまたがると、ペダルかき鳴らし、広東カントン郵便局まで電信をうつために力走また力走をつづけるのであった。
軍用鮫 (新字新仮名) / 海野十三(著)