天道様てんとうさま)” の例文
旧字:天道樣
そこで皆の衆が物持から米や沢庵を持って来てウント喰い倒してやるというのは、天道様てんとうさま思召おぼしめしだ、実にいい心がけである、賛成!
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
よるのこたァ、こっちがてるうちだから、なにをしてもかまわねえが、お天道様てんとうさまが、あがったら、そのにおいだけにめてもらいてえッてよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ウヰルソンの義弟といふのは、たけ七尺もあらうといふ背高男のつぽで、道を歩く時にはお天道様てんとうさまが頭につかへるやうに、心持せなかゞめてゐた。
甲州街道の小間物屋のおかみが荷を背負せおって来た。「ドウもねえあなた、天道様てんとうさまに可愛がられまして、此通り真黒でございます」とほおでる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
瑜ちゃんや、可憐かわいそうにお前はあいつ等の陥穽かんせいに掛ったのだ。天道様てんとうさまが御承知です、あいつ等にもいずれきっと報いが来ます。お前は静かにねむるがいい。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
わたくしもとより重い御処刑おしおきになるのを覚悟で、お訴え申しましたので、又此の儘生延びては天道様てんとうさまへ済みません、現在親を殺して気違だと云われるを幸いに
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれども、その時の私は何故この病気も癒ったのだろうと、つくづく天道様てんとうさまうらんだことで御座いました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
可愛想にまだ八つ七つのお光は始終捨児真の父母など云うことを、思うともなく思って、独り解かれぬ疑問に心を苦しめて居る。之を知る者は只天道様てんとうさまばかりだ。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
天道様てんとうさまと米の飯を求めてどこへ行くか、レーマンに興味を持つ人には、かなり気の揉める問題であろう。
前達めえたちを、連れて行きてえのは山々だが、お役人をたたっ斬って、天下のお関所を破った俺達が、お天道様てんとうさまの下を、十人二十人つながって歩くことは、許されねえ。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
とこう思っての、そっおぶって来て届かねえ介抱をしてみたが、いや半間はんまな手が届いたのもおめえの運よ、こりゃ天道様てんとうさまのおなさけというもんじゃ、無駄にしては相済まぬ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それじゃおれはどっちへまわればいいんだい? こうっと、お天道様てんとうさまがあそこにいるんだから」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのうちには、四国屋のお家様にお目にかかって、何とかいたすつもり、そこは手に職のあるありがたさで、尺金さしがねぽんさし込んでいれば、どこの国にも天道様てんとうさまは照っております
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茂太郎式に反芻はんすうして再応思案してみると、「万人堂の杉のスッポンコラは槍のようにとがっている、さぞお天道様てんとうさまも怖いだろう」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
造船所の上にはとびが鼻唄をうたつてゐたが、お天道様てんとうさまや鳶に用事の無い広海氏は掛りの顔を見ると直ぐと切り出した。
農村のうそん天道様てんとうさまの信心が無くなったら、農村の破滅はめつである。然るに此信心は日に/\消亡しょうもうして、人智人巧唯我唯利の風が日々農村人心の分解ぶんかいうながしつゝあるのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「それに、あの妹のお京というのがあんまり綺麗すぎますよ。妹だか女房だか知らないが、日中は二人家の中に引っ込んだきり、滅多なことじゃ天道様てんとうさまの下に顔も出さねえ」
しげさん。もし、しげさんは留守るすかい。——おやッ、天道様てんとうさまへそしわまで御覧ごらんなさろうッて昼間ぴるま、あかりをつけッぱなしにしてるなんざ、ひどぎるぜ。——ているのかい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
吝嗇者りんしょくもの日済ひなし督促はたるように、われよりあせりて今戻せ明日あす返せとせがむが小人しょうじんにて、いわゆる大人たいじんとは一切の勘定を天道様てんとうさまの銀行に任して、われは真一文字にわが分をかせぐ者ぞ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それとも知らず自分の弁当は流してしまい、旦那の持って居なさる弁当箱には秋田屋のしるしがござんすから、二日二夜ふたよさのひもじさにうっかり喰ったのが天道様てんとうさまばちでござんしょう、旦那
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
桜のつぼみがボツボツと白く見え出す頃、如何なる天道様てんとうさま配合とりあわせであったろうか。絶えて久しい播磨屋千六と、青山銀之丞が、大阪の町外れ、桜の宮の鳥居脇でバッタリと出会ったのであった。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの白痴殿ばかどのの女房になって世の中へは目もやらぬかわりにゃあ、嬢様は如意にょい自在、男はより取って、けば、息をかけてけものにするわ、殊にその洪水以来、山を穿うがったこの流は天道様てんとうさまがお授けの
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天道様てんとうさまの御守護だな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが今夜という今夜、ほんとうに思いがけなく、思う存分にその仕返しができたことを思うと、天道様てんとうさまがまだこちとらをお見捨てなさらねえのだ。
その日も蒸暑むしあつかつた。すべてに公平なお天道様てんとうさまは、禅坊主が来たからといつて、つておきの風を御馳走する程の慈悲も見せなかつた。皆はえりくつろげて扇をばたばたさせた。
天道様てんとうさまの届かない、土地の底の穴の中なら、お上のお目こぼしもあるとしたものでしょう、——一番今晩一と晩だけ、土竜もぐらもちの真似をして、皆川様御夫婦の忠義にお手伝いしましょう
「えっ無罪、え、も勿体もってえねえ、旦那様お有難う存じます、天道様てんとうさまは正直だなア」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はやえことがあるもんか。お天道様てんとうさまは、もうとっくに朝湯あさゆまして、あんなにたかのぼってるじゃねえか。——いってえしげさん。おめえ、てえたんだかきてたんだか、なぜ返事へんじをしてくれねえんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「借金もちは、天道様てんとうさまが中々殺さぬよ」。私もおびただしい借金もちです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何か仕事をしなくちゃあならねえ、何かかせぎをして飯を食わなくっちゃあ天道様てんとうさまに申しわけがない、と言って退屈して、生活の空虚を感じているところへ、話があったのは
「怒るな八、近江屋へ真っ直ぐに案内しろ。親達に歎きをかけた上、大金までせしめようというのは、いかにも憎い幽霊だ。三日経たない内に、きっと天道様てんとうさまの下で化けの皮をいでやる」
「やっぱりおいらたちが悪いことをしねえから、天道様てんとうさまが見通しておいでなさるんだ」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小商売こあきないの一つも始め、飯盛上めしもりあがりの女でも連合つれあいにして、これからは温和おとなしく暮して行きてえものだと思わねえこともねえが、天道様てんとうさまがそうはおろしてくれめえから、とてものことにまた逆戻りで