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呷
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あお
ふりがな文庫
“
呷
(
あお
)” の例文
又も大盃を
呷
(
あお
)
り付けて、素敵に酔払っているらしく、
吉角力
(
きちずもう
)
の大関を取ったという
双肌
(
もろはだ
)
を脱いで、素晴らしい筋肉美を露出している。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
早いこと、早いこと!
陽炎
(
かげろう
)
か
電光
(
いなずま
)
のごとく、内ポケットから紙包みを出したかと思うと、もう伯爵はグウッと酒で
呷
(
あお
)
りつけている。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その叔父は人の好さそうな顔で笑いながら、左手の指で輪を
拵
(
こしら
)
えて、なにかを
呷
(
あお
)
るまねをした。——これだよ、みんな飲み
代
(
しろ
)
だよ。
ひやめし物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
娘の留守に
自棄酒
(
やけざけ
)
を
呷
(
あお
)
った金五郎が、夜中にフラフラとお六を殺したくならないものでもあるまい——と、こう万七親分は言うんだ
銭形平次捕物控:120 六軒長屋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
酒を
呷
(
あお
)
って酔いつぶれてしまったこともありましたが、いけません。故意と避けようと
計画
(
たくら
)
むと、なおさらはっきり鮮かに見るのです。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
▼ もっと見る
高手小手に縛り上げて、裏の中二階に転がし放しにして、其
傍
(
そば
)
でお鉄はやけからの茶碗酒を
呷
(
あお
)
りながら、さも口惜しそうに口を切った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
まごまごしている雇婆を
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てて、
冷
(
ひや
)
のままの酒を、ぐっと一息に
呷
(
あお
)
ると、歌麿の巨体は
海鼠
(
なまこ
)
のように夜具の中に縮まってしまった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
盃をする
間際
(
まぎわ
)
に、近所の飲み屋で酒を
呷
(
あお
)
っていたのも、
衆
(
みんな
)
が
揶揄
(
からか
)
っていたように、きまりの悪いせいばかりとも思えなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうして、ネオン・サインの陰を酔っ払ってよろめきまわり、電髪嬢を
肴
(
さかな
)
にしてインチキ・ウイスキーを
呷
(
あお
)
っている。呆れ果てた奴等である。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
などゝ大人めいた口をきいて皆を笑わせながら、仙吉は
猪口
(
ちょく
)
を持つような手つきで茶飲み茶碗からぐい/\と白酒を
呷
(
あお
)
った。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それに、立てつづけに
呷
(
あお
)
る冷酒の酔いも手伝っていたであろう。彼の眼は憤りともつかず、悩ましさともつかぬ一種異様な輝きをおびてきた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
主膳はこんな
独言
(
ひとりごと
)
を言っているうちに、立てつづけに
呷
(
あお
)
りました。浴びるように飲みました。気がようやく荒くなりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
咽を鳴らす音、めしをかむ歯の響き、汁を吸う舌打ち、がぶがぶ
呷
(
あお
)
る大盃に吐くため息。しばしがほどは、銀座街頭の跫音雑声よりも
喧
(
かま
)
びすしい。
食指談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
まあ一杯過ごして元気をつけろ兄弟! ——苦力頭のアバタにはこんな表情が浮かんでいた。俺は涙の出るような気持で、強烈な支那酒を
呷
(
あお
)
った。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
彼らは楽屋口に近い、畳敷きの部屋に一とかたまりになって、
徳利
(
とっくり
)
からじかの冷酒を
呷
(
あお
)
りながら、
無駄口
(
むだぐち
)
を
叩
(
たた
)
いていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
女はしばらくすると勝手へ出て行ったが、すぐ、生水を
呷
(
あお
)
っているらしい
喉鳴
(
のどな
)
りがごっつりと、幾たびもつづいた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
論より証拠この通りと、そんなキザな、ろくでもないうたがいを晴らすため無理からなお
呷
(
あお
)
りつけることも出来た。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
(蛇や蚯蚓は構わんが、そこらで食って来た
饂飩
(
うどん
)
なんか吐かれては恐縮だ。悪い酒を
呷
(
あお
)
ったろう。佐川さん、そこらにあったら片附けておやんなさい。)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丁度、桂子との
同棲中
(
どうせいちゅう
)
、よくしていたように、彼女のスベスベした両足を、私の両足の上にのせて貰っただけで催眠剤を多量に
呷
(
あお
)
って、死んだように眠った。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
時雄は
頻
(
しき
)
りに酒を
呷
(
あお
)
った。酒でなければこの
鬱
(
うつ
)
を遣るに堪えぬといわぬばかりに。三本目に、妻は心配して
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
そして、帰りには安酒を
呷
(
あお
)
ってぐでんぐでんに正体もなく酔っ払って来た。するとまた
乱
(
らん
)
ちき騒ぎが始まる。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
雪之丞が、話したような出来ごとがあったあとで、まさか、商売に手を出すはずもない——やけ酒の一ぱいも
呷
(
あお
)
って、
自家
(
うち
)
に戻って来るだろうという推量——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
中には両手に余るほどの煎餅を懐ろに捻込みつゝ更に蜜柑の箱に吶喊するものもあった。茶碗酒を
呷
(
あお
)
りながら蜜柑の一と箱を此方へよこせと呌くものもあった。
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
読み終った私は、よろよろっとベッドに倒れた、そしてがたがた顫える手で薬台の抽斗から赤い包紙に包まれた催眠薬を三つとり出すと、一気にグイと
呷
(
あお
)
った。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
女は破れ畳に白い顔を摺りつけて泣いているのを、友蔵はおもしろそうに眺めながら茶碗酒を
呷
(
あお
)
っていた。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
他人に盛った毒をまず自分が
呷
(
あお
)
らねばならないような立場を、彼は胸を
抉
(
えぐ
)
り取られるように感じた。罪に立とう! 彼はいっさいのものに対して目を瞑ろうとした。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
熱く燗した卵酒を
呷
(
あお
)
りながら主人は、細かいことはあとで家内が起きたら訊いてくれろ、心安い気で自分の家のようにして、家内の相談相手にもなってやってほしい
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
そういって尻ごみをする一同にはカッサバ澱粉のパンをすすめ、じぶんは「
猿酒
(
シュシャア
)
」を
呷
(
あお
)
り“
Dagga
(
ダッガ
)
”という、インド大麻に似た麻酔性の葉を煙草代りに喫っている。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「万歳万歳」の声は四方に起り、一同は
蟻
(
あり
)
の
甘味
(
あまき
)
に付くように水汲み隊の
周囲
(
まわり
)
に集り、
咽
(
のど
)
を鳴らして水筒の口から水を
呷
(
あお
)
る。その
旨
(
うま
)
い事! 甘露ともなんとも
譬
(
たと
)
えようがない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
四杯
呷
(
あお
)
ってからいわれるのに、「千寿どの安堵めされい。狂言の工夫が付き申した」
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お蔦 やけの
深酒
(
ふかざけ
)
は毒と知りながら、ぐいぐい
呷
(
あお
)
って暮すあたしに、一文なしも
糸瓜
(
へちま
)
もあるもんか。お前さん大
食
(
ぐら
)
いだろうから、それじゃ足りない、これもあげるから持ってお行き。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
強い酒を
呷
(
あお
)
りつけては癇をたてていたが、戦闘訓練が面白くなったとみえて狂的な熱意をみせ、傷病兵も頑丈な囚徒兵も見境なくいっしょくたにして、今日は水中攻撃、明日は陸上肉攻と
ノア
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
だが、やがて生活を
蝕
(
むしば
)
んでくる毒を
呷
(
あお
)
っているに等しい。
清浄身
(
しょうじょうしん
)
の
沙門
(
しゃもん
)
からみれば、むしろ、あわれなのはああした
儚
(
はかな
)
い夢の中に生きがいを
焦心
(
あせ
)
っている多くの男や女たちではあるまいか。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういうわけで、僕は仏蘭西へ——わけても、この「よひどれ」の詩人が、そこの酒場でアプサンを
呷
(
あお
)
り、そこのマロニエの並木の下を
蹣跚
(
ばんさん
)
とよろめいて行った、あのパリへ行きたいと思ったのです。
十年
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
房二郎は膳の上から盃を取り、眉をしかめながら
呷
(
あお
)
った、「へえー、そういうことかい、へえー、そいつはとびきりへちまの木だ」
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
へべれけになって現われ、初めから計画的に酒を
呷
(
あお
)
って来たものらしく、いきなり若林の傍に坐っている銀子の晴子に
絡
(
から
)
んで来るのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いい気になって立て続けに二杯三杯と
呷
(
あお
)
り、女が
狼狽
(
ろうばい
)
ぶりを、いよいよおかしく、まじまじとながめて、ようやく悦に入り
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私は生活の
虚無感
(
きょむかん
)
に
陶酔
(
とうすい
)
しながら、連日酒を
呷
(
あお
)
り、流連
荒亡
(
こうぼう
)
の夢を追って時の過ぎるのを忘れるような暮し方をしていた。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
黙って二通の郵便物を持って、四里の雪の山道を、私の処へ配達すべく町の居酒屋でコップ酒を
呷
(
あお
)
って出て行ったが、それっきり帰って来ない。
眼を開く
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
田中の部屋では、田中と女二人でトランプをして、その間中、田中はウイスキーとビールを
呷
(
あお
)
りつゞけているのである。
安吾巷談:01 麻薬・自殺・宗教
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
三杯ばかり、立てつづけに
呷
(
あお
)
った。酒精の熱気が五臓六脇へ泌みわたる。咽が快く鳴って、食道を烈液が流れさる爽美の感は、これをなにに
譬
(
たと
)
えよう。
泡盛物語
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
振り向いたのは十七八、並ぶ者なき美しさですが、手酌で
呷
(
あお
)
った酔が発したものか、ポーッと
上気
(
のぼ
)
せた頬の色、キリリと眼を釣って睨み上げた凄艶さ
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
実に豪華な宴会ですが、テーブルを前にして盛んに酒を
呷
(
あお
)
っているのは軍服の士官と背広服の青年、それに一人の美しい女性が交った、たった三人きりでした。
恐怖の幻兵団員
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
何の事ぞ、酒井先生の
薫陶
(
くんとう
)
で、少くとも外国語をもって家を
為
(
な
)
し、自腹で朝酒を
呷
(
あお
)
る者が、今更いかなる必要があって、前世の
鸚鵡
(
おうむ
)
たり、
猩々
(
しょうじょう
)
たるを懸念する?
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜の九時頃、寺の者が大概寝静まって了うとウヰスキーの
角壜
(
かくびん
)
を
呷
(
あお
)
って酔いを買った後、勝手に縁側の雨戸を引き外し、墓地の
生
(
い
)
け
垣
(
がき
)
を乗り越えて散歩に出かけた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無茶苦茶に私はウイスキイを
呷
(
あお
)
った。どのくらい飲んだのか、とにかく、足腰のたたぬまでも飲んだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
強健な体質でない彼女は一升近い酒を
呷
(
あお
)
った上、
虐
(
しいた
)
げられて、外に溢れ出ようとするアルコールの異変が、狂した神経に収縮して身体じゅう五臓六腑に浸み入り凝結して
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
さっきまでの真っ青な顔は、今度は酒でも
呷
(
あお
)
ったように両手で隠した顔の襟頸まで真っ赤に燃えて眼を閉じて、もがけるだけ身をもがきながら声を放って泣き叫んでいた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
両側の家も動くよう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に
蔽
(
おお
)
い
冠
(
かぶ
)
さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、
無闇
(
むやみ
)
にぐいぐいと
呷
(
あお
)
ったので、一時に酔が発したのであろう。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
開墾地の人たちは
茶呑茶碗
(
ちゃのみぢゃわん
)
で、酒をぐびりぐびりと
呷
(
あお
)
った。彼らはそれですぐ酔っ払った。
酷
(
ひど
)
く酔いが回ってくると、彼らは立ち上がって踊りだした。そして、徳利を
叩
(
たた
)
き、卓を叩いて歌いだした。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
呷
漢検1級
部首:⼝
8画
“呷”を含む語句
呷飲
呷切
呷々
呷上