ぱら)” の例文
二三軒みすぼらしいオランダ船の船員のとまる下宿の木小屋きごやが、そのむこう岸に建っていて、オランダッぱらともよばれていた所です。
左手に細野の人家を眺め、うわぱらと呼ぶ平坦な原野に出る、木立の中や草原には桔梗ききょう女郎花おみなえし、松虫草、コマツナギ等が咲いている。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
幾ら人數にんずが少ないとツて、書生もゐる下婢げぢよもゐる、それで滅多めつたと笑聲さへ聞えぬといふのだから、まるで冬のぱらのやうな光景だ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
書窓しょそうから眺めると、灰色はいいろをした小雨こさめが、噴霧器ふんむきく様に、ふっ——ふっと北からなかぱらの杉の森をかすめてはすいくしきりもしぶいて通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これらの幻像の出るのは、鑓ガ岳の南に続く大雪田だいせつでん、土地の人がオいでぱらと呼ぶ処で、その南側、奥不帰の連峯に寄った辺である。
残雪の幻像 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
下谷したや佐竹ッぱらの浄るり座や、麻布あざぶ森元もりもと開盛座かいせいざを廻り、四谷よつや桐座きりざや、本所ほんじょの寿座が出来て、格の好い中劇場へ出るようになるかと思うと、また
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
蘿月はその頃お豊の家を訪ねた時にはきまっておいの長吉とお糸をつれては奥山おくやま佐竹さたけぱら見世物みせものを見に行ったのだ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しからば、その公許の塩づけ貯蔵個所なるものは、そもそもどこであるか?——右門の判断を待つまでもなく、それは鈴ガ森と小塚こづかぱらの二個所です。
「いまは小塚こづかぱらの無縁墓だ」と栄二はまた窓の外へ眼をやりながら云った、「——げじげじなんて云われるほどあくどいことをしても、結局いいめは出なかったんだな」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そしてその晩も、あくる晩も、また翌る晩もその石碑のもとに野宿をして、じつと石碑の文字に惚々ほれ/″\してゐるので、馬はとうと腹を立てて、其処そこらくさぱらにごろり横になつた。
百姓を斬って、こつぱら処刑場しおきばの中へ逃げ込んだ神尾主膳は、それと知って思わずギョッとしました。こういう際であるけれども、処刑場ときては、いい気持がしなかったらしい。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今から六年前のちょうど今月今日召捕られまして、八月十九日に小塚こづかぱらでお仕置を受けました鼠小僧次郎吉ねずみこぞうじろきちなんか、その五人の中には入って居りません。あんな野郎はまだ駆出しで
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
名主どんも有る村だから、名主どんへ届けて、お役人さまの手を借りてお探しなせえって、それから毎日めえにち松戸流山ながれやまから小金こがねぱらまで探しちゃアけえって来て、知んねえっては泣くだよ
それがしきりに市中を巡邏じゆんらする。尚ほ手先を使つて、彼等盜賊のあとを附けさせると、それが今のしば薩摩さつまぱらの薩州屋敷にはいるといふのでこの賊黨はとう/\薩藩さつぱんちうあふものだといふことが分つた。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
松隈内閣だか隈板内閣だかの組閣にあたって沼南が入閣するという風説が立った時、毎日新聞社にかつて在籍して猫の目のようにクルクル変る沼南の朝令暮改に散三さんざぱら苦しまされた或る男はいわ
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「権次は真砂まさごぱらにいますよ、近所の人が見て来たそうで」
かうかうと金の射光の二方ふたかたに射す野つぱらに木の二本見ゆ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これでも、わかときや、しばぱらかけ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
蘿月らげつころとよの家を訪ねた時にはきまつてをひ長吉ちやうきちとおいとをつれては奥山おくやま佐竹さたけぱら見世物みせものを見に行つたのだ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おっつけ鈴ガ森か小塚こづかぱらにでも参るようになりましょうから、それまでご窮屈でござんしょうが、あそこの自身番でごゆっくり蚊にでも食われなせえよ
これらの幻像の出るのは、鑓ガ岳の南に続く大雪田、土地の人がおいでぱらとよぶ所で、鑓から温泉にくだる夏道はその北寄りに通じているが、雪形は反対の南側、奥不帰の方へよった辺りに出る。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
生馬いきうまきうすゑどころ見ゆるなり光あまねき野つぱらうち
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「わかったぞ! これは小塚こづかぱらだ」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぱら
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
見返柳みかえりやなぎの立っていた大門おおもん外の堤に佇立たたずんで、東のかたを見渡すと、地方今戸町じかたいまどまちの低い人家の屋根を越して、田圃のかなたに小塚こづかぱらの女郎屋の裏手が見え
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天気はし、草つぱらに露がいつぱいだで
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
左右ともに水田のつづいた彼方かなたには鉄道線路の高い土手が眼界をさえぎっていた。そして遥か東の方に小塚こづかぱらの大きな石地蔵いしじぞうの後向きになった背が望まれたのである。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)