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冥利
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みょうり
ふりがな文庫
“
冥利
(
みょうり
)” の例文
「六郷から向うは初めてだな」六助が励ますように云った、「金を貰って遊山旅をするようなもんだ、しょうばい
冥利
(
みょうり
)
ってものだぜ」
秋の駕籠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
富有な旦那の
冥利
(
みょうり
)
として他人の書画会のためには千円からの金を棄てても自分は
乞丐
(
こじき
)
画師の仲間となるのを
甘
(
あまん
)
じなかったのであろう。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
いつもの彼であれば、芸人
冥利
(
みょうり
)
、
讃嘆
(
さんたん
)
のささやきを呟いてくれる、そうした人たちの方へ、礼ごころの
一瞥
(
いちべつ
)
はあたえたかも知れない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「お前さんの前だが、
沈魚落雁閉月羞花
(
ちんぎょらくがんへいげつしゅうか
)
、へっへ、卍って野郎も考えて見りゃあ悪党
冥利
(
みょうり
)
の果報者——ほい、えらく油あ売りやした。」
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
『じゃ、おじさんが代を払ってやるから、そばを喰いねえ』と、申しますと、商売物のそばを
喰
(
た
)
べると、
冥利
(
みょうり
)
がつきると申します。
奉行と人相学
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
よしよし、それ以上負けさしちゃ、多賀屋も
冥利
(
みょうり
)
が悪かろう。お前は思ったより良い男だ、手の込んだ人殺しなんかするより、心を
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そんなような謀叛気がお角さんの頭にむらむらと湧いて来たのは、実行の
如何
(
いかん
)
にかかわらず、商売商売の
冥利
(
みょうり
)
だから仕方がありません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
伊「身請でも
為
(
し
)
ようてえ大事なお客様だ、早く往ってきな、畜生なんッて
冥利
(
みょうり
)
が悪かろうぜ、ねえはアちゃん
左様
(
そう
)
じゃねえか」
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
冥利
(
みょうり
)
として、ただで、お
銭
(
あし
)
は遣れないから、肩で船を
漕
(
こ
)
いでいなと、毎晩のように、お慈悲で療治をおさせになりました。……ところが旦那。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「うん……こんな
美女
(
たま
)
を龍平の野郎め、よろしく、ひとりで
永々
(
ながなが
)
と楽しんでいやがったんだから、ああなったのも、男
冥利
(
みょうり
)
に尽きたんだろう」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
冥利
(
みょうり
)
を知らない男さね。同じ忙しいんでも遊ぶのと働くのは違うよ。余程豪い仕事をしている積りだから驚いてしまう」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だんなのようないい男のお手にかかるならせめても女
冥利
(
みょうり
)
でござんすから、さ、ご随意におなわをかけなさいましな
右門捕物帖:06 なぞの八卦見
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
出せといったら黙って出せ! (仙太返事をせず)……出さねえな? バクチ打ちの作法も
冥利
(
みょうり
)
も忘れた野郎だ
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
こうやって自分の手にかけたお座敷で、
兄弟分
(
きょうでえぶん
)
がこしれえたお庭を眺めながら、旦那様のお
相伴
(
しょうばん
)
をして
一杯
(
いっぺえ
)
頂戴出来るなんて職人
冥利
(
みょうり
)
の行止まりでげしょう。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いくら商売だからといっても物には
冥利
(
みょうり
)
というものがあるからのと、親父は私が店の真ん中に一段高く飾り立てた蒲団を眺め眺め、満足そうにそう言いました。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
新聞記者
冥利
(
みょうり
)
に胆太く腰を据え、たとえ一ト月二タ月未決に繋がれても、最後まで俺の身分を明さずにこの事件のドンヅマリまで交際い、必ずこの大スクープをモノにし
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それを無にしてもったいない、十兵衛厭でござりまするとは
冥利
(
みょうり
)
の尽きた
我儘
(
わがまま
)
勝手、親方様の御親切の分らぬはずはなかろうに胴欲なも無遠慮なも大方
程度
(
ほどあい
)
のあったもの
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「おびただしくも酔いにけり——酔うということはよいことさ、芸に酔い術に酔う。いつもいつも
醒
(
さ
)
めている奴は
冥利
(
みょうり
)
や金ばかりにかじりつく。ハッハッハ、陶然と酔えよ」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
三島の社の放し
鰻
(
うなぎ
)
を見るように、ぬらりくらりと取止めのないことばかり申し上げていたら、御疳癖がいよいよ募ろうほどに、こなたも職人
冥利
(
みょうり
)
、いつのころまでと日を
限
(
き
)
って
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一流の妓であればある程商売
冥利
(
みょうり
)
と云ふことを忘れ、お客に鼻も引つかけないで威張つてゐるのが
癪
(
しゃく
)
に触つたからなので、京都大阪は如才のない土地柄故それ程でもなかつたけれど
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
病人は寝ているのが仕事だ、悪いことをしてここへ来て、遊んで寝そべって、しかも毎日高い薬を呑ませてもらっているとは、何と
冥利
(
みょうり
)
の尽きたことではないか、というのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
それをお前さんのように、ヤ人の機嫌を取るのは厭だの、ヤそんな
鄙劣
(
しれつ
)
な事は出来ないのとそんな我儘
気随
(
きまま
)
を言ッて母親さんまで路頭に迷わしちゃア、
今日
(
こんにち
)
冥利
(
みょうり
)
がわりいじゃないか。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
おまけに証人は特製の別嬪と来てるんですから、
冥利
(
みょうり
)
につきまさアね……でまア、そんなわけで、やがて洗濯屋は証拠不充分で無罪を判決され、ひとまずその事件もケリがついたんです……
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
「お名前どおりの福の神といっしょにいると思えば、男
冥利
(
みょうり
)
につきるよ。」
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
芸人
冥利
(
みょうり
)
に尽きる話だという、評判も評判、大変な前景気であったが、本人も、一生懸命で、相変わらず藤代町の宿屋木更津屋の二階で
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
茶道に遊ぶものの
冥利
(
みょうり
)
、一度は手に入れたいと思った井戸の茶碗が、こんな機縁で、たった五十両で手に入るというのは、全く夢のようです。
銭形平次捕物控:133 井戸の茶碗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「どうか、これはあなたが、お旅先でお
費
(
つか
)
いなされて下さいまし。とても私たちには、
冥利
(
みょうり
)
が悪くッて、お
頒
(
わ
)
けいただくなんてことはできません」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お羨ましいわねえ双葉さま、そんなに愛して頂だくなんて女に生れた
冥利
(
みょうり
)
というものだわ、ではもちろん貴女のお香箱の蓋は破れたわけですねえ」
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
屠犬児は
天窓
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
きて、「むこうがおめでたいだけにちっとは
冥利
(
みょうり
)
が
悪
(
わり
)
いようだ。はて、
体
(
てい
)
の
良
(
い
)
い
騙取
(
かたり
)
じゃねえか。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いま解いて上げるよ、結んだものだから解けなくちゃあならないんだから。切ってはなんだか
冥利
(
みょうり
)
が尽きるわよ」
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
出せと言ったら黙って出せ!(仙太返事をせず)……出さねえな? バクチ打ちの作法も
冥利
(
みょうり
)
も忘れた野郎だ
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
道「お帰りですか、商売
冥利
(
みょうり
)
ですから出ては見ましたが、今にも降って来そうですから、考えているんです」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「わしは満腹で気が重い。あんなところまで行ったら、もどりは夜明けになってしまう。商売
冥利
(
みょうり
)
につきるようだが、きょうはひとつ、お断りすることにしようじゃないか」
顎十郎捕物帳:17 初春狸合戦
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
むかしの人は正直である、商売
冥利
(
みょうり
)
といふこともよく知つてゐた。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「いや、僕だって店の方を本気にやらなければ
冥利
(
みょうり
)
に尽きる」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
あっしも江戸っ子
冥利
(
みょうり
)
に、すっぱりかぶとをぬぎましょうよ
右門捕物帖:11 身代わり花嫁
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
私にとっては男
冥利
(
みょうり
)
、一つ立派に頼まれましょう。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「全くその通りさ、親分、——その普賢菩薩が、時々涙を流しているから不思議じゃありませんか、岡っ引
冥利
(
みょうり
)
、一度は見ておかなくちゃ——」
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
不時の客の到着にも風呂を沸して待つというのが商売
冥利
(
みょうり
)
の一つでもありますから、それはいずれを
咎
(
とが
)
めだてするというわけにはゆかないのであります。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
寝巻を着かえていた飛脚男も、月の給料にもあたる小判を見ては、このまま寝るのが
冥利
(
みょうり
)
がわるくなって、店へは自分のふところから規定の飛脚料を出し
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
為替
(
かわせ
)
してきらめくものを
掴
(
つか
)
ませて、のッつ
反
(
そ
)
ッつの
苦患
(
くげん
)
を見せない、
上花主
(
じょうとくい
)
のために、商売
冥利
(
みょうり
)
、
随一
(
ずいいち
)
大切な
処
(
ところ
)
へ、偶然
受取
(
うけと
)
って行ったのであろうけれども。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わが
主君
(
との
)
ながら、男
冥利
(
みょうり
)
につきた源三郎! と思うと、
嫉妬
(
しっと
)
にわれを忘れた門之丞、ガラリ障子を引きあけ
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「あたしがその人からあなたを横取りするようなものですもの、その償いぐらいしなければ
冥利
(
みょうり
)
が悪いわ」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
年の
往
(
い
)
かない
中
(
うち
)
は
下
(
くだ
)
らないもので、
女郎
(
じょろう
)
子供とは
宜
(
よ
)
く云ったもので、
冥利
(
みょうり
)
が悪いことで、その冥利で今は斯うやって斯う云う処へ来て、貧乏の
世帯
(
しょたい
)
にわく/\するも昔の
罰
(
ばち
)
と思って居りますよ
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
物の
冥利
(
みょうり
)
を知らぬ話だと思って、つくづく意見をして来たことだがね、わしの意見もなかなかわかっちゃくれまい
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「どうせそうだろうが、商売
冥利
(
みょうり
)
にちょいと見て行こう——小判で百両も持っていたっていうじゃないか」
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すくッと立った電信柱に添って、片枝折れた松が一株、崖へのしかかって立っています、天幕張だろうが、掘立小屋だろうが、人さえ住んでいれば家業
冥利
(
みょうり
)
……
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
冥利
(
みょうり
)
です。犬馬の労もいといません。どうか真面目に一人立ちのできますよう、おひきたて願いまする」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
舟底には奇妙な引力があって幅のある物ならしばらく吸いつけておくこと、並びにその舟が久しく使われていないこと、まずこれらへ着眼したのが藤吉の器量と
冥利
(
みょうり
)
とであった。
釘抜藤吉捕物覚書:03 三つの足跡
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
食ってくからには
冥利
(
みょうり
)
てえことを知らなくちゃならねえ
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“冥利”の意味
《名詞》
冥利(みょうり)
人々が知らない内に享受している神仏から受けている恩恵。
立場などにより得られる恩恵。
(出典:Wiktionary)
冥
常用漢字
中学
部首:⼍
10画
利
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
“冥”で始まる語句
冥加
冥途
冥土
冥府
冥々
冥福
冥
冥想
冥罰
冥護