内気うちき)” の例文
旧字:内氣
山石早苗やまいしさなえと目があうと、内気うちきな早苗はあかい顔をしてこっくりした。マスノは先生のスカートをひっぱって、じぶんのほうへ注意をひき
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
もとは極々ごくごく内気うちきの優しいかたが、この頃ではだいぶ気が荒くなって、何だか心配だと源兵衛が来るたびに申します。……
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたし去年きよねんふゆつまむかへたばかりで、一たい双方さうはうとも内気うちきはうだから、こゝろそこから打釈うちとけるとほどれてはゐない。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
お妙は、町娘らしい何時もの内気うちきさをスッパリ忘れたように、こう言い切って、きッ! と父親を見上げた。壁辰と喬之助は、呆然ぼうぜんとして立っている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かれらはほがらかにわらいました。内気うちきむすめは、そのも、浜辺はまべにきて、じっとおきほうをながめて、いまだにかえってこない、若者わかものうえあんじていました。
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
さきからはまたどう言ふつもりか、所詮内気うちきなこの身には過ぎた相手ととつおいつ、思案もまだ極まらぬ時、ばたばたとはしご降り来し梅子文子は息を切らせて
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
内気うちきで音楽好きのベスは、陽気なピロちゃん。お姫様のように上品で、絵の好きな末娘のエーミーはトクべえさん。……まるで、ご註文のように、キチンとあてはまる
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それまでの私の心は、ただ、私の事を、はずかしめられた私の事を、一図いちずにじっと思っていた。それがこの時、夫の事を、あの内気うちきな夫の事を、——いや、夫の事ではない。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
海岸線かいがんせんまはりの急行列車きふかうれつしや古間木こまきへ(えきへは十和田わだ繁昌はんじやうのために今年ことしから急行きふかうがはじめて停車ていしやするのださうで。)——いたとき旅行たび経験けいけんすくな内気うちきものゝあはれさは
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
然しごく内気うちきな人だったものだから、独りで考え込むきりで、誰にも黙っていたのだ。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
アッカは、いぜんから、羊というものは、内気うちきで、かわった動物だということは知っていましたが、この羊たちは、そうではなくて、どうしたらいいのか、こまっているようすです。
が、ベシイ・マンディは、明らかに保守的な、内気うちきな女だったに相違ない。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
彼女かのぢよくちかたは、すこ内気うちきすぎるほど弱々よわ/\しかつた。そしてそれについて、べつにはつきりした返事へんじあたへなかつたが、わざと遠慮ゑんりよしてゐるやうにもえた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
につけよと、上官じょうかんからいわれたのであるが、何事なにごとにも内気うちきで、遠慮勝えんりょがちな清作せいさくさんは、おな軍隊ぐんたいにおって朝晩あさばん辛苦しんくをともにした仲間なかまで、んだものもあれば、また
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
でもあの内気うちきなお佐代さんが、よくあなたにおっしゃったものでございますね
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「うちのむすめは、内気うちきずかしがりやだから、ひとさまのまえにはないのです。」といっていました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また二人ふたりむすめがあって、一人ひとりむすめは、内気うちきおもったことも、くちしていわず、かなしいときも、にいっぱいなみだをためて、うつむいているというふうでありましたから
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
このはなしむすめったときは、どんなにおどろいたでありましょう。内気うちきな、やさしいむすめは、このいえからはなれて、いくとおい、らない、あつみなみくにへゆくことをおそれました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
元来がんらい内気うちきなこのむすめは、人々ひとびとがまわりにたくさんあつまって、みんなが自分じぶんうえけているとおもうとずかしくて、しぜんうたこえ滅入めいるようにひくくはなりましたけれど、そのとき
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)