乾物屋かんぶつや)” の例文
節季はむろんまるで毎日のことで、醤油屋しょうゆや、油屋、八百屋やおや鰯屋いわしや乾物屋かんぶつや、炭屋、米屋、家主その他、いずれも厳しい催促さいそくだった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
清吉せいきち正二しょうじは、学校がっこうかえりに、乾物屋かんぶつやまえとおると、おじさんが、みせにすわっていました。二人ふたりは、はいってそばへこしかけました。
海が呼んだ話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
番所の書庫から赦帳ゆるしちょうや捕物帳などを山ほど持ち出し、出勤もせずに弓町ゆみちょう乾物屋かんぶつやの二階に寝っころがって、朝から晩までそんなものを読み耽っている。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
西風が毎日のように関東平野の小さな町に吹きあれた。乾物屋かんぶつやの店には数の子が山のように積まれ、肴屋さかなやには鮭が板台はんだいの上にいくつとなく並べられた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
一番頓狂とんきょう乾物屋かんぶつやの子は、ありあわせの竹の棒にまたがって、そこいら中をかけずり廻った。
大人の眼と子供の眼 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
その話てえのは? 横丁の乾物屋かんぶつやのお時坊が嫁に行つて、ガラツ八ががつかりして居るつて話ならとうに探索が屆いて居るが、あの娘の事なら、器用にあきらめた方がいゝよ
そして街から街へ、先に云つたやうな裏通りを歩いたり、駄菓子屋だぐわしやの前で立留たちどまつたり、乾物屋かんぶつや乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、たうとう私は二條の方へ寺町てらまちさがり其處の果物屋くだものやで足を留めた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
同人どうにん嘆息たんそくした。——いまでも金魚麩きんぎよぶはう辟易へきえきする……が、地震ぢしん四日よつか五日いつかめぐらゐまでは、金魚麩きんぎよぶさへ乾物屋かんぶつや賣切うりきれた。また「いづみ干瓢鍋かんぺうなべか。車麩くるまぶか。」とつてともだちは嘲笑てうせうする。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とほりを二丁目ちやうめほどて、それを電車でんしや方角はうがくまがつて眞直まつすぐると、乾物屋かんぶつや麺麭屋ぱんやあひだに、古道具ふるだうぐつてゐるなりおほきなみせがあつた。御米およねはかつて其所そこあしたゝめる食卓しよくたくつた記憶きおくがある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
で、またしばらく歩くと、ある乾物屋かんぶつやの前へたって
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「おかあさん、いま、まちの一けん乾物屋かんぶつやにたくさんしろまめがありましたから、はやく、なくならないうちにっておきましょう。」
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
母親ははおやは、手内職てないしょくをしたり、よそへやとわれていったりして親子おやこらしていた。おれは、小学校しょうがっこうをおえると、まち乾物屋かんぶつや奉公ほうこうされた。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、いまでは、おかあさんも、美代子みよこ乾物屋かんぶつやひとたちが、しんせつであったということをわすれてしまいました。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある乾物屋かんぶつやでは、こんなときにこそ、小舎こやをそうじして、平常ふだんちているまめや、小豆あずきなどをひろあつめて、ってしまわなければならぬとおもったのです。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんど、乾物屋かんぶつやるときだって、ちっともおれがわるかったとおもっていない。すこしばかりのいわしのにぼしをいぬにやったとて、そんなにわるいことでないだろう。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに大工だいくはいって、みせ模様もようえたり、こわれたところをなおしたりしていましたが、それができあがると、いつのまにかこざっぱりとした、乾物屋かんぶつやになりました。
海が呼んだ話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自転車屋じてんしゃやあと乾物屋かんぶつやができてから、二かげつばかりたつと、ゆうちゃんの叔父おじさんは、不思議ふしぎ病気びょうきにかかりました。それは、ふいに原因げんいんのわからぬねつて、手足てあしがしびれてきかなくなるのでした。
海が呼んだ話 (新字新仮名) / 小川未明(著)