さげ)” の例文
いつもの癖で、椅子の中に深く身を沈めると、中禿ちゅうはげの頭を撫で上げながら、自慢の長いひげ自烈度じれったそうにヒネリ上げヒネリさげした。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さげられしが此事一應加役方へ掛合の上ならでは吟味ぎんみに取掛りがたき儀なれどもかれが申し立て如何いかにも不便ふびんなりと思はれしかば大岡殿の英斷えいだん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると癇癪持かんしゃくもちきみは真二つに斬りさげんと刀のつかに手をかけたのを、最愛のおんなかたわらから止めたので、命だけはたまわって、国外に追放の身となったのである。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、その日の七つさげりに、小平太は屈托くったくそうな顔をしながら、ぼんやり林町の宿へ戻ってきた。すると横川勘平が待ち構えていて、相手の顔を見るなり
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
左樣さやうならとてかしらさげげるに、あれいちやんの現金げんきんな、うおおくりはりませぬとかえ、そんならわたし京町きやうまち買物かいものしましよ、とちよこ/\ばしりに長屋ながや細道ほそみちむに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お前の明るいおさげの頭が、あの梯子はしごを登った暗い穴の所へ、ひょっこり花車はなぐるまのように現われるのさ。すると、俺は、すっかり憂鬱がなくなっちゃって、はしゃぎ廻ったもんだ。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
恐入ったいもうと、妹と云っては縁が切れてるから奧州屋新助殿どんのお内儀さんに対して大西徳藏かくの如くだ(両手を突き頭をさげる)矢張是も親のばちだ、親の罰だから誠に何うも困る
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
前髮まへがみさげ可愛かはゆこれ人形じんぎやうのやうにおとなしくして廣庭ひろにはでは六十以上いじやうしかいづれも達者たつしやらしいばあさんが三人立にんたつその一人ひとり赤兒あかんぼ脊負おぶつこしるのが何事なにごとばあさんごゑ
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
極端なだんまりやで、止宿人と顏を合せても、輕く頭をさげるばかりで、口をきく事は殆ど無い。會社の同僚とのつきあひも無く、飮んだり喰つたり、見たり聽いたりの道樂も無い。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
婆やはぴょこぴょこと幾度いくども頭をさげて、前垂まえだれで、顔をふきふき立って行った。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
柱にもたれて身は力なくさげたるかしら少しあげながらにらむに、浮世のいざこざ知らぬ顔の彫像寛々かんかんとして大空に月のすめごとたたずむ気高さ、見るから我胸の疑惑はずかしく、ホッと息き、アヽあやまてり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こちらをさげすんだやうにそんな體裁のいいことを云ふのは許さない。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
ひしがるゝともおぼ無事なきことは申上難く候と言ひつのるにぞ然ば猶後日の調べと再度さいどどうさげられ長庵三次の兩人は又も獄屋ごくやへ引れける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それはお前に頭を下げるのじゃない、王様にさげるのだ。そんな事を喜んでいるより、俺と一所に来て野原で遊んで見ろ。
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)
それから夜はどうしても寝床の中に寝ないで、王様の馬小屋の藁の中に寝た。その馬は王様を載せるのが自慢で、「自分が通ると、人間が皆頭をさげる」
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)
さげ扨申されけるは越前かく夜中やちうをもかへりみず推參すゐさん候は天下の御大事に付中納言樣へ御願ひ申上度儀御座有ござあつての儀なり此段御披露ひろうたのみ存ずるとぞのべられたり主税是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)