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一揖
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いちゆう
ふりがな文庫
“
一揖
(
いちゆう
)” の例文
彼女は、私の注文を聞くと、
一揖
(
いちゆう
)
してくるッと
背後
(
うしろ
)
を向き、来た時と同じように四つ足半の足
巾
(
はば
)
で、ドアーの奥に消えて行った。
白金神経の少女
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「お早う。」私たちは手を
握
(
にぎ
)
りました。二人の子供の助手も、両手を拱いたまま私に
一揖
(
いちゆう
)
しました。私も全く嬉しかったんです。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼はせかせかと右のほうへゆき、くるっと振り向いて、せかせかと左のほうへゆき、急に立ちどまると、いんぎんに
一揖
(
いちゆう
)
した。
超過勤務
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「おそれいります。」魚容は
一揖
(
いちゆう
)
して、「何せどうも、身は軽くして
泥滓
(
でいし
)
を離れたのですからなあ。叱らないで下さいよ。」
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
旅僧はその時、
南無仏
(
なむぶつ
)
と唱えながら、
漣
(
ささなみ
)
のごとき杉の木目の式台に立向い、かく誓って合掌して、やがて笠を脱いで
一揖
(
いちゆう
)
したのであった。——
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
島太夫は
恭
(
うやうや
)
しく
一揖
(
いちゆう
)
したが、そろそろと
龕
(
がん
)
まで歩いて行き燭台に
仄
(
ほの
)
かに灯をともした。部屋の中が
朦朧
(
もうろう
)
と明るんで来る。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白木の
位牌
(
いはい
)
には、
祐筆
(
ゆうひつ
)
相田清祐のあざやかな
手蹟
(
しゅせき
)
が読まれた。端座してそれを見つめていた阿賀妻は、
一揖
(
いちゆう
)
して、「されば?——」と振りかえった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私は
一揖
(
いちゆう
)
して、タゴール老人の傍に坐った。話題は無論この島における
膃肭獣
(
おっとせい
)
の生活以外のものであるはずはなかった
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
それから傍の畑に入りこちらを見返りもせずにせっせと草を取り始めた。
隠者
(
いんじゃ
)
の一人に違いないと子路は思って
一揖
(
いちゆう
)
し、道に立って次の言葉を待った。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
と閣下が
一揖
(
いちゆう
)
した。外では時々顔を合せるけれど、言葉を交すのは初めてだった。安達君は鄭重に挨拶を申述べた。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
三度目には馬から降りて、徒歩で出て来て
一揖
(
いちゆう
)
したが、その気高い姿勢と、洗煉された足取りは、疑いもない宮廷舞踊の名手である事を証明していた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だが、意外意外、怪人は御一行の前に直立不動の姿勢をとったかと思うと、ピストル持つ手を胸に当てて、うやうやしく
一揖
(
いちゆう
)
した。威儀正しい最敬礼だ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
磯上伴作は力尽きたように、バタリと椅子に腰を下ろすと、壇上の環玉枝は、静かに
一揖
(
いちゆう
)
して壇を下りました。
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜も
三更
(
さんこう
)
(午後十一時—午前一時)に至る時、扉をたたいて進み入ったのは、白い
鬚
(
ひげ
)
を垂れて紅い
冠
(
かんむり
)
をかぶった老人で、朱鑠を仰いでうやうやしく
一揖
(
いちゆう
)
した。
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ギンツェ営業部長 (
一揖
(
いちゆう
)
して)公爵閣下の仰せのとおり、いかなる障害、いかなる困難がありましても、吾人は決して、その困難、はたまた障害のために
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
そして老人は、我々の前に来て、
莞爾
(
にこ
)
やかに
一揖
(
いちゆう
)
すると、
慇懃
(
いんぎん
)
な調子で何か話し掛けてくるのであったが、もちろん何を言っているのか、わかろうはずもないことであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
源内先生は、そう言うと、満面に得意の微笑を泛べながら一座の人々に軽く
一揖
(
いちゆう
)
した。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と、かの虎船長は
一揖
(
いちゆう
)
して、きっと形をあらため、かたりだしたところによると
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
若者
(
わかもの
)
はその全体の
風貌
(
ふうぼう
)
からいままでに知らなかった
威圧
(
いあつ
)
をうけたので、思わず
一揖
(
いちゆう
)
した。すると老人は音も立てずに一歩歩をすすめて、「何か思いごとがあって毎日ここにこられるのか」
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
誰も彼に、話しかけて
呉
(
く
)
れる人はなかった。接待をしている人達も、名士達の前には、頭を幾度も下げて、その会葬を感謝しながら、信一郎には、たゞ儀礼的な
一揖
(
いちゆう
)
を
酬
(
むく
)
いただけだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
二尺七寸の
蛤刃
(
はまぐりば
)
の木剣を
択
(
えら
)
び、型の如く道場の中央へ進んで
一揖
(
いちゆう
)
なし、パッと双方に離れるが早いか、阿念と呼ばれた山伏は、金剛杖を三分に握り占めて横身に構え、春日新九郎は一歩
退
(
ひ
)
いて
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最後に、とく子は私の方へ顔を向け、
一揖
(
いちゆう
)
してから馬車の中に消えた。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
白い顔が夢のように浮かんだと思うと、ゆらりと
一揖
(
いちゆう
)
して出て行く。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その男はひょろ長い
躯
(
からだ
)
に、襟が後頭部までも
被
(
かぶ
)
さりそうな、長い半木綿のフロックコートを
著
(
き
)
ていたが、片手にナプキンを掛けたまま
素早
(
すばや
)
く駆け出して、さっと髪を揺りあげるように
一揖
(
いちゆう
)
するや否や
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
今は我輩も帰るべしと巡査にも
一揖
(
いちゆう
)
して月と水とに別れたり。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
喝采の中に彼女は愛らしく裾をつまんで、
一揖
(
いちゆう
)
して退いた。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
登は片手で「どうぞ」というふうに
一揖
(
いちゆう
)
した。松次郎は明らかに不安そうで、そのために却って虚勢を張り、長次のほうへ近よっていった。
赤ひげ診療譚:07 おくめ殺し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
中野ソックリの男はそういって立上ると、二人に
一揖
(
いちゆう
)
して海に飛込み、そのまま抜手を切って泳ぎ去ってしまった。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
一揖
(
いちゆう
)
した九十郎が裾たくし上げ、刀の鯉口くつろげて、表門の方へ走って行く姿が、星空の下に魔物めいて見えた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
笑い
寝
(
や
)
むころ馬車は石動に着きぬ。車を下らんとて弁者は席を
起
(
た
)
てり。甲と乙とは渠に向かいて
慇懃
(
いんぎん
)
に
一揖
(
いちゆう
)
して
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて、美人玉乗りのお花は、あでやかに
一揖
(
いちゆう
)
して、しなやかな
身体
(
からだ
)
を、その棺桶様の箱の中へ隠した。一寸法師はそれに
蓋
(
ふた
)
をして、大きな錠前を
卸
(
おろ
)
した。
踊る一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分で苦しんで、自分で創造して、自分の芸術を楽しんでいるようだ。大向うなどは大した問題ではない。喝采が湧き起ると、静かに立ち上って、フランス人らしく行儀よく
一揖
(
いちゆう
)
する。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
報告書は
麾下
(
きか
)
の
陳歩楽
(
ちんほらく
)
という者が身に帯びて、単身都へ
馳
(
は
)
せるのである。選ばれた使者は、
李陵
(
りりょう
)
に
一揖
(
いちゆう
)
してから、十頭に足らぬ少数の馬の中の一匹に
打跨
(
うちまたが
)
ると、
一鞭
(
ひとむち
)
あてて丘を
駈下
(
かけお
)
りた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
温泉場にはチト固苦しく上品に見えるものだから、気をとられて眺めていると、少女は顔をあげて俺と視線が合うや否や、頬を染めて腰をかがめ、
一揖
(
いちゆう
)
するなりソコソコに宿の中庭へ入って行った。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
つかつかと進んでその前に
一揖
(
いちゆう
)
した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
甲斐は
一揖
(
いちゆう
)
した。それは否とも、応ともとれる表情であった。六郎兵衛は低頭して出ていった。うしろから見る彼の肩や背までくたくたに疲れた人のようであった。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
オースチン師は
一揖
(
いちゆう
)
した。彼は少しも恐れてはいない。彼の恐れるのは不義ばかりだ、金には
淫
(
いん
)
せず武威にも屈せず真箇大丈夫の英雄僧には、こうした
威嚇
(
いかく
)
は無用である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時、後を閉めようとして、ここに
篤志
(
とくし
)
の
夜伽
(
よとぎ
)
のあるのを知って
一揖
(
いちゆう
)
した。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
花房一郎は丁寧に
一揖
(
いちゆう
)
して、そのまま廊下へ出ようとしました。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
顎十郎は、いんぎんに
一揖
(
いちゆう
)
すると
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「いらっしゃい、どうぞ」と佐藤正之助は
一揖
(
いちゆう
)
した、「力ずくで止めたりはしませんから」
燕(つばくろ)
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、民弥は意にも介せず、朗らかに微笑しちょっと
頷
(
うなず
)
き、菊女へも会釈の
一揖
(
いちゆう
)
をしてから
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
博士、僧都、
一揖
(
いちゆう
)
して廻廊より退場す。侍女等
慇懃
(
いんぎん
)
に見送る。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あなたのお部屋へ、ね」と津川は
一揖
(
いちゆう
)
して云った、「かしこまりました、若先生」
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その証拠にはその少年は、僕を見かけると微笑して、軽く
一揖
(
いちゆう
)
したのだからね。
鴉片を喫む美少年
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
学円、高く一人
鐘楼
(
しょうろう
)
に
佇
(
たたず
)
み、水に臨んで、
一揖
(
いちゆう
)
し、合掌す。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
甲斐は
一揖
(
いちゆう
)
した、「それこそおぼしめし違い、浪人のことでお歴々にふさわしいもてなしはできませんが、おたち寄り下さればこの上もなき名誉、よろこんで御接待をつかまつります」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
白法師の眼はこう云った時
焔
(
ほのお
)
のように輝いた。法師はやがて
一揖
(
いちゆう
)
すると敷居を
跨
(
また
)
いで
戸外
(
そと
)
へ出た。林の中へはいって行く。間もなく姿は木に隠れたが、その神々しい白衣姿は、三人の眼に残っていた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
小次郎法師は、
寿
(
ことぶ
)
くごとく、
一揖
(
いちゆう
)
して
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それは失礼」彼は気取って
一揖
(
いちゆう
)
した、「ではおふみどの、酒を頼みます」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“一揖”の意味
《名詞》
軽く一礼すること。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
揖
漢検準1級
部首:⼿
12画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥