“一揖:いちゆう” の例文
“一揖:いちゆう”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花6
国枝史郎4
野村胡堂2
中島敦2
久生十蘭2
“一揖:いちゆう”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 戯曲1.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
中野ソックリの男はそういって立上ると、二人に一揖いちゆうして海に飛込み、そのまま抜手を切って泳ぎ去ってしまった。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
私は一揖いちゆうして、タゴール老人の傍に坐った。話題は無論この島における膃肭獣おっとせいの生活以外のものであるはずはなかった
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
磯上伴作は力尽きたように、バタリと椅子に腰を下ろすと、壇上の環玉枝は、静かに一揖いちゆうして壇を下りました。
彼女は、私の注文を聞くと、一揖いちゆうしてくるッと背後うしろを向き、来た時と同じように四つ足半の足はばで、ドアーの奥に消えて行った。
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
三度目には馬から降りて、徒歩で出て来て一揖いちゆうしたが、その気高い姿勢と、洗煉された足取りは、疑いもない宮廷舞踊の名手である事を証明していた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
隠者いんじゃの一人に違いないと子路は思って一揖いちゆうし、道に立って次の言葉を待った。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
島太夫はうやうやしく一揖いちゆうしたが、そろそろとがんまで歩いて行き燭台にほのかに灯をともした。部屋の中が朦朧もうろうと明るんで来る。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
選ばれた使者は、李陵りりょう一揖いちゆうしてから、十頭に足らぬ少数の馬の中の一匹に打跨うちまたがると、一鞭ひとむちあてて丘を駈下かけおりた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
源内先生は、そう言うと、満面に得意の微笑を泛べながら一座の人々に軽く一揖いちゆうした。
しばらくすると、宿直と、看護婦長は、この室を辞して出た。その時、後を閉めようとして、ここに篤志とくし夜伽よとぎのあるのを知って一揖いちゆうした。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、かの虎船長は一揖いちゆうして、きっと形をあらため、かたりだしたところによると、
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
学円、高く一人鐘楼しょうろうたたずみ、水に臨んで、一揖いちゆうし、合掌す。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その証拠にはその少年は、僕を見かけると微笑して、軽く一揖いちゆうしたのだからね。
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて、はでやかな衣類に胸高に帯を結んだ奥女中が、燭台を捧げてしとやかにはいって来た。白い顔が夢のように浮かんだと思うと、ゆらりと一揖いちゆうして出て行く。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
——旅僧はその時、南無仏なむぶつと唱えながら、ささなみのごとき杉の木目の式台に立向い、かく誓って合掌して、やがて笠を脱いで一揖いちゆうしたのであった。——
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
博士、僧都、一揖いちゆうして廻廊より退場す。侍女等慇懃いんぎんに見送る。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて、美人玉乗りのお花は、あでやかに一揖いちゆうして、しなやかな身体からだを、その棺桶様の箱の中へ隠した。一寸法師はそれにふたをして、大きな錠前をおろした。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
白木の位牌いはいには、祐筆ゆうひつ相田清祐のあざやかな手蹟しゅせきが読まれた。端座してそれを見つめていた阿賀妻は、一揖いちゆうして、「されば?——」と振りかえった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そこへ、外国風に身じまいをした運用士官がはいって来た。そのあとには二人の水夫が従っていた。彼は一目で邦夷を見わけることが出来た。つかつかと進んでその前に一揖いちゆうした。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
法師はやがて一揖いちゆうすると敷居をまたいで戸外そとへ出た。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
花房一郎は丁寧に一揖いちゆうして、そのまま廊下へ出ようとしました。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
今は我輩も帰るべしと巡査にも一揖いちゆうして月と水とに別れたり。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
二人の子供の助手も、両手を拱いたまま私に一揖いちゆうしました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
喝采の中に彼女は愛らしく裾をつまんで、一揖いちゆうして退いた。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
オースチン師は一揖いちゆうした。彼は少しも恐れてはいない。彼の恐れるのは不義ばかりだ、金にはいんせず武威にも屈せず真箇大丈夫の英雄僧には、こうした威嚇いかくは無用である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おそれいります。」魚容は一揖いちゆうして、「何せどうも、身は軽くして泥滓でいしを離れたのですからなあ。叱らないで下さいよ。」とつい口癖になっているので、余計な一言を附加えた。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
甲と乙とは渠に向かいて慇懃いんぎん一揖いちゆうして、
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして老人は、我々の前に来て、莞爾にこやかに一揖いちゆうすると、慇懃いんぎんな調子で何か話し掛けてくるのであったが、もちろん何を言っているのか、わかろうはずもないことであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
小次郎法師は、寿ことぶくごとく、一揖いちゆうして、
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誰も彼に、話しかけてれる人はなかった。接待をしている人達も、名士達の前には、頭を幾度も下げて、その会葬を感謝しながら、信一郎には、たゞ儀礼的な一揖いちゆうむくいただけだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
とく子は一人で歩いて行き、乗客達の後に列んだ。やがて乗客達は順順に馬車に乗る。馬車の中は薄暗く、人の顔はよく見えない。最後に、とく子は私の方へ顔を向け、一揖いちゆうしてから馬車の中に消えた。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
ギンツェ営業部長 (一揖いちゆうして)公爵閣下の仰せのとおり、いかなる障害、いかなる困難がありましても、吾人は決して、その困難、はたまた障害のために、両国の親交を損ずることはあるまいと信じます。
朱鑠を仰いでうやうやしく一揖いちゆうした。
顎十郎は、いんぎんに一揖いちゆうすると、
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一揖いちゆうして、
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新九郎も手早く用意の襷鉢巻の身仕度終えて、二尺七寸の蛤刃はまぐりばの木剣をえらび、型の如く道場の中央へ進んで一揖いちゆうなし、パッと双方に離れるが早いか、阿念と呼ばれた山伏は、金剛杖を三分に握り占めて横身に構え
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおさようでござったか」陶器師は軽く一揖いちゆうしたが、「そうとは存ぜずとんだ失礼、平にご用捨くだされい。実はな、拙者、庄八郎殿には数々ご恩をこうむったものでござる。ご子息と聞いてお懐しい。失礼ながらご姓名は?」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その男はひょろ長いからだに、襟が後頭部までもかぶさりそうな、長い半木綿のフロックコートをていたが、片手にナプキンを掛けたまま素早すばやく駆け出して、さっと髪を揺りあげるように一揖いちゆうするや否や、木造の廊下づたいに、そそくさと紳士を二階の有り合わせの部屋へ案内して行った。