“くるしみ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
苦痛30.5%
23.2%
苦悩19.5%
困苦2.4%
悃苦2.4%
苦悶2.4%
苦惱2.4%
苦慮2.4%
苦楚2.4%
苦難2.4%
劬労1.2%
困難1.2%
病苦1.2%
痛苦1.2%
1.2%
苛責1.2%
苦厄1.2%
迫害1.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
父も家庭に対するくるしみ、妻子に対するくるしみ、社会に対するくるしみ——所謂いはゆる中年の苦痛くるしみいだいて、そのの狭い汚い町をとほつたに相違さうゐない。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
つひに彼はこのくるしみを両親に訴へしにやあらん、一日あるひ母と娘とはにはかに身支度して、忙々いそがはしく車に乗りて出でぬ。彼等はちひさからぬ一個ひとつ旅鞄たびかばんを携へたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
突然こなたに向きて、しからば問いまいらせん、愛の盗人もし何の苦悩くるしみをも自ら覚えで浮世を歌い暮らさばいかに、これも何かの報酬あるべきか。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
娘をいたわる心とてはなく、かへつてその身の衣服まで売却うりなして今は親子三人が着のみ着のままなる困苦くるしみをば、ひとへに夫の意気地なきに帰して、夫を罵り、お袖にあたり
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
此兄弟丹後にさまよひ三庄太夫が為に悃苦くるしみたるゆゑに丹後の人をいみきらひ、丹後の人此国に入ればかならず大風雨有て日をわたる事むかしよりの事なり。
一こゑ深き苦悶くるしみのおとをみそらに殘しおき
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
生きものの負はでかなはぬ苦惱くるしみの象徴かもよ駱駝の瘤は
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
世に栄え富める人〻は初霜月の更衣うつりかへも何の苦慮くるしみなく、紬に糸織に自己おのが好き/″\のきぬ着て寒さに向ふ貧者の心配も知らず、やれ炉開きぢや、やれ口切ぢや
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ウカウカと文三がつかませられるままに掴んで、あえだりもんだり円めたり、また引延ばしたりして骨を折て事実ものにしてしまい、今目前にその事が出来しゅったいしたように足掻あがきつもがきつ四苦八苦の苦楚くるしみ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
信仰の先導者なるイエスは其の前に置かれたる喜楽よろこびに因りてその恥をも厭わず十字架の苦難くるしみを忍び給うた(同十二章二節)、信者は希望のぞみなくして苦しむのではない
人の霊魂のうみ劬労くるしみは実にこれである。かかる道程を経て進歩するのである。さればヨブ記の実験記たるはますます明かである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
この困難くるしみから救わるる道は、私が死ぬよりほかに、どうしても無いので御座いましょうか。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
体内みうち病苦くるしみと、唆る様な素朴な烈しい恋の歌と、そして、何がなき頼りなさに心が乱れて、その沈んで行く気持を強い太鼓の響に掻乱される様に感じながら、踊りには左程の興もなく
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼は先にひし事の胸にられたらんやうに忘るるあたはざるさへあるに、なかなか朽ちも果てざりし恋の更に萠出もえいでて、募りに募らんとする心のみだれは、ふるにかた痛苦くるしみもたらして、一歩は一歩より
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あひだ婦人ふじん心痛しんつう恐怖きようふはそも、をしぼるあせつて、くれなゐしづく垂々たら/\ちたとふ。くるしみまたきはまつて、ほとん狂亂きやうらんして悲鳴ひめいげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんな苛責くるしみに会いながら、病気一つせずに、日にし丸々と肥って、康強すこやかに、美しくそだって行くのです、この島の清らかな風と、水と、豊穣ゆたか食物かてと、美しい、楽しい
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さて、観自在菩薩が、般若の宗教を体験せられたその結果は、どうであったかといいますと、「五うんはみな空なりと照見しょうけんせられて、ついに一切すべて苦厄くるしみを度せられた」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
私は、これだけの虐遇なやみ迫害くるしみに会いながら、なおも神様の禁責いましめを恐れている私たちのまごころを、この瓶に封じこめて、海に投げ込もうと思っているのです。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)