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驀地
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まっしぐら
ふりがな文庫
“
驀地
(
まっしぐら
)” の例文
も口の中、耳も早けりゃ脚も早い、おりから風さえ加わって横ざまに降りしきる霙を衝いて、三次は
驀地
(
まっしぐら
)
に駕籠を追って走った。
早耳三次捕物聞書:01 霙橋辻斬夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大空の熱度激変せし為なるべし太西洋の面より
捲
(
ま
)
き起こりたる疾風、
驀地
(
まっしぐら
)
に欧羅巴を襲い来たり、
凄
(
すさ
)
まじき勢いにて吹き
煽
(
あお
)
れり。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
大工道具を担いでいたそうだが、どうも挙動が怪しいというので、押えようとすると大工道具を投棄てるが早いか
驀地
(
まっしぐら
)
に構内へ逃込んだ。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それを無意識に拾いあげると右手にぐっと握りしめ、林の中からとびだした。そして正面に見える池谷控家へむかって
驀地
(
まっしぐら
)
にかけだした。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
はっと思った拍子に彼は、たった今大急ぎでそこに来かかったのだというような早足で、
驀地
(
まっしぐら
)
に板橋を渡りはじめていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
余は
興
(
きょう
)
に
乗
(
じょう
)
じた。運転手台に前途を
睥睨
(
へいげい
)
して
傲然
(
ごうぜん
)
として腰かけた。道があろうと、無かろうと、斯速力で世界の果まで
驀地
(
まっしぐら
)
に駈けて見たくなった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
再びヨボヨボと歩き出すと、ひとしきりの風が
驀地
(
まっしぐら
)
に道の砂を捲いて老翁を包んだ時
余
(
よ
)
は深き深き空想を呼起こした。
凩
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そしてただ裸一箇の自分となり独力、座禅思惟の一法によってかの解脱を掴むか掴まえぬか、面と向った真剣の勝負に
驀地
(
まっしぐら
)
に突き進むこととなった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
朝早く
農鳥
(
のうとり
)
岳の北の野営地を出発、南へ農鳥岳、
広河内
(
ひろごうち
)
岳、白河内岳と縦走を続け、時間が遅くなったので
其処
(
そこ
)
から
驀地
(
まっしぐら
)
に東俣の谷へ下り込みました。
日本アルプスの五仙境
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
たたたたたっ結び矢来に沿って
驀地
(
まっしぐら
)
に近づきながら、つと馬上に伸び上り、狙い定めてふっと一の矢を射て放った。
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
忽
(
たちま
)
ちどれもこれもが、
所謂
(
いわゆる
)
『犬の舵』と呼ばれる尻尾を高々とあげて
驀地
(
まっしぐら
)
に駈けよって、お客を迎えると、一同に向って挨拶をしはじめたものである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
日程によると宇治を見物する筈だが、秘書役二人の不在中に何う模様が変ったのか、僕達は
驀地
(
まっしぐら
)
に京都へと志した。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
汽車は急行で、東方へ向って
驀地
(
まっしぐら
)
に走っている。しばらくの間無言でいた妻は、その時何の前置もなしに僕にむいた。そして二人はこういう会話をした。
妻
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
音のようすでその辺りに巨大な穴でも開いていて、そうして大河が
驀地
(
まっしぐら
)
にそれへ落ち込んでいるようであった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
向うの平地へ
驀地
(
まっしぐら
)
に走る、森は孤立した小島になる、水楊が川の
畔
(
ほとり
)
にちょんぼりと、その蒼い灰のような、水銀白を柔らかに
布
(
し
)
いた薄葉を微風にうら
反
(
が
)
えしている
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
門口でこういい
棄
(
す
)
てて、城内めがけて
驀地
(
まっしぐら
)
に走り出した頃に、諸所の小屋から、同じような身分の士や、その妻子が外へ出て、くるくると空を仰いで騒ぎ出していた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
雨が降り出したとみえて、窓
硝子
(
ガラス
)
がすっかり曇っている。私は指先で曇りを除いて外を見た。汽車はどこを走っているのだろう、ただ暗闇の中を
驀地
(
まっしぐら
)
に進んで行くのだ。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
折柄、墓石の下に
永久
(
とこしえ
)
の安い眠りについている霊を驚かすように一台の大型自動車がけたゝましい爆音を上げて、この大崎町の共同墓地を目がけて、
驀地
(
まっしぐら
)
に駆けつけて来た。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
即
(
すなわ
)
ち裏の垣より忍び入りて
窠宿
(
とや
)
近く往かんとする時、
他
(
かれ
)
目慧
(
めざと
)
くも僕を
見付
(
みつけ
)
て、
驀地
(
まっしぐら
)
に
飛
(
とん
)
で
掛
(
かか
)
るに、不意の事なれば僕は
狼狽
(
うろた
)
へ、急ぎ元入りし垣の穴より、走り抜けんとする処を
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
病身で鼠のやうに気の弱い伊豆のもとへ
驀地
(
まっしぐら
)
に躍り込み、おつ被せるやうにして、「むむ、ああ、もう俺はあのけつたいな女詩人を見るのも厭になつた」痴川は顔を
大形
(
おおぎょう
)
に顰めて
小さな部屋
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
鯛六の弱り抜いた足は、エレキを掛けられたように動いて、
驀地
(
まっしぐら
)
に横山町の上州屋へ
新奇談クラブ:06 第六夜 人形の獄門
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
馬博士は帽子を
掴潰
(
つかみつぶ
)
して
狂人
(
きちがい
)
のように振回す。樺は奮進の勢に乗って、
凄
(
すさま
)
じく
土塵
(
つちぼこり
)
を蹴立てました。それと覚った源が満身の怒気は、一時に頭へ衝きかかる。
如何
(
いかん
)
せん、樺は
驀地
(
まっしぐら
)
。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
見ると、モーターボートは、岬の蔭で方向を転じたと見え、湖水の中心に向って、
驀地
(
まっしぐら
)
に進んで行く。船尾にうずくまる黄金仮面の異様な姿は、巨大な金塊の様に、ギラギラと輝いて見える。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
このことがなくっても、馬があばれこまなくても、もう大方の雲行きで感得されるのですが、馬が
驀地
(
まっしぐら
)
に駈け込んで来たので、群衆も、鳴り物も、雨乞いの祭の庭もあったものではありません。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
例えば競馬に於ても第一の騎者がすでに勝利を得べく自らも信じ見物人も思う時、左右より
驀地
(
まっしぐら
)
に追い付き来って三人競争となり、火花を散らして駆け来る
中
(
うち
)
、一人が鞭を挙げて打ちたりとせよ。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「いいですか。じャ、ひい、ふう、みいで
驀地
(
まっしぐら
)
に飛びだすんですぜ」
顎十郎捕物帳:21 かごやの客
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
帆村は
驀地
(
まっしぐら
)
に橋の上をかけぬけた。それから山道に懸ったが、やっと前方に怪人の乗った自動車の姿をチラと認めた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それに
較
(
くら
)
べて、いつまでも処女性を持ち、いつになっても感情のまま
驀地
(
まっしぐら
)
に行くかの女の姿を見ると、何となく人生の水先案内のようにも感じられた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかしながらかねてからある不安なしにではなく考えていたことが、
驀地
(
まっしぐら
)
に近づいてきているような一種の心の圧迫を感じ始めているのは明かだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これから足場の悪い岩の痩尾根を辿って、甲信駿三国の境に近いあたりから、野呂川の谷を
驀地
(
まっしぐら
)
に下り始めた。
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それから国土は下り坂になって、汽車は南方の平野に向って
驀地
(
まっしぐら
)
に走った。して見ると、ドナウはやはり高原を流れていたのだということを僕はおもった。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
一方宇都宮治部大輔公綱は、東の空の白むと見るや、七百余騎を引率し、天王寺さして
驀地
(
まっしぐら
)
に押し寄せ、
古宇都
(
こうづ
)
の民家へ火をかけて、
鬨
(
とき
)
の声をドッとあげた。
赤坂城の謀略
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
脇田はひーいと両手で耳を
塞
(
ふさ
)
ぎ、なにか訳のわからないことを叫びながら、
驀地
(
まっしぐら
)
に廊下へとびだしていった。
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして放課の鐘が鳴ると同時に、
驀地
(
まっしぐら
)
に駈け出して、彼は誰よりも先きに三角帽を教師に取ってやった。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
と俊一君は
驀地
(
まっしぐら
)
に駅へ向った。都合よく殆ど待たずに乗り込んでから、続けざまに溜息をついた。
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
病身で鼠のように気の弱い伊豆のもとへ
驀地
(
まっしぐら
)
に躍り込み、おっ
被
(
かぶ
)
せるようにして、「むむ、ああ、もう俺はあのけったいな女詩人を見るのも嫌になった」痴川は顔を
大形
(
おおぎょう
)
に
顰
(
しか
)
めて
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
新三郎は、飛立つ思い、旅装束のまま、
駕籠
(
かご
)
を二挺呼んで、
驀地
(
まっしぐら
)
にお茶の水へ——。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さりとて残し置かんも口惜し、こは
怎麼
(
いか
)
にせんと案じ煩ひて、
霎時
(
しばし
)
彳
(
たたず
)
みける処に。
彼方
(
あなた
)
の森の陰より、
驀地
(
まっしぐら
)
に
此方
(
こなた
)
をさして
走
(
は
)
せ来る獣あり。何者ならんと打見やれば。こは彼の黒衣にて。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
夫人は先に立って円タクを交渉し、京浜国道を
驀地
(
まっしぐら
)
に大森の方へ走らせた。
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
足は
驀地
(
まっしぐら
)
に玉島の家へ向っていた。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
はっと驚く暇もなく彼女は
何所
(
どこ
)
とも
判
(
わか
)
らない深みへ
驀地
(
まっしぐら
)
に陥って行くのだった。彼女は眼を開こうとした。しかしそれは堅く閉じられて
盲目
(
めしい
)
のようだった。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そのあとから、真夜中ながら
弥次馬
(
やじうま
)
のおしよせてくる
気配
(
けはい
)
がした。私は弥次馬に追越されたくなかったので、
驀地
(
まっしぐら
)
に駈けだした。今度は大丈夫走れるぞと思った。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
見ると褐色の群が花を蹴散らして、
驀地
(
まっしぐら
)
に谷の方へ駆け下りて行く。それで漸く鹿だなと安心する。
鹿の印象
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
祐吉は裸馬の背へひらり跨がると、側に伸びていた梅の枝を
折取
(
おりと
)
って鞭代り、ピシリとひと当て呉れて——
驀地
(
まっしぐら
)
に門から出て行った。まるで疾風のような速さである。
天狗岩の殺人魔
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
新太郎君も親の安心と自分の本務を考えないではないが、美しい賞品が更に大きい動機を為していたから、一月半も
驀地
(
まっしぐら
)
に走った今日、一向それに近づけなくては励みがない。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
おまえは、決して
臆
(
おく
)
してはならない。負けてはならないぞ。そしてこの重荷を届けるべきところにまで
驀地
(
まっしぐら
)
に届けることだ。わき見をしては
却
(
かえ
)
って重荷に押し
潰
(
つぶ
)
されて危ないぞ。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
馬上でピッタリ男女の者が、縋るようにして抱き合ったが、キューッと、ひと締め! 馬を締めた! タッタッタッ! タッタッタッ! 野花を蹴散らし砂塵を上げ、走る走る
驀地
(
まっしぐら
)
!
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「鳥のおつこちるところが見たいんですわ。濡れた綿のやうな空の奥から、長い頸を下へまつすぐに延して、翼を張りひろげて、
驀地
(
まっしぐら
)
に墜落するのですつて。どんなに素敵でせう……」
麓
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
万七にしてやられて、ガラッ八の八五郎は、
驀地
(
まっしぐら
)
に神田へ取って返しました。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
汽車は闇を
驀地
(
まっしぐら
)
に走っている。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
“驀地”の意味
《名詞》
急におこるさま。
猛烈な勢いで突き進むさま。ましぐら。まっしぐら。
(出典:Wiktionary)
驀
漢検1級
部首:⾺
20画
地
常用漢字
小2
部首:⼟
6画
“驀”で始まる語句
驀進
驀
驀然
驀直
驀向
驀出
驀走