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飢
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うえ
ふりがな文庫
“
飢
(
うえ
)” の例文
彼は少量の携帯食糧に
飢
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
いだが、襲い来った山上の寒気に我慢が出来なかった。仕方なく落下傘を少しずつやぶっては燃料にした。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それをぼつぼつと摘まんで食べたのは、客などのきたときのただの
慰
(
なぐさ
)
みであって、
飢
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
ぐというのは始めからの目的でなかった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
孔子がこれに和して弾じ、曲、
三度
(
みたび
)
めぐった。傍にある者またしばらくは
飢
(
うえ
)
を忘れ疲を忘れて、この武骨な
即興
(
そっきょう
)
の
舞
(
まい
)
に興じ入るのであった。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
単に
飢
(
うえ
)
を救われただけでなく病中の面倒までみてもらった。それも楽な生活をしているわけではなく、お豊は料理茶屋のかよい女中で
稼
(
かせ
)
いでいた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
徳さんが、どうして生きていたかと、不審に耐えなんだが、成程、彼は蟹の生肉で
飢
(
うえ
)
をいやしていたのだ。私達はそれを徳さんに貰って、たべた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
で、そのまま誓を立てさせては、今時誰も通らぬ山路、半日はよし、一日はよし、三日と
経
(
た
)
たぬに、
飢
(
うえ
)
もしよう、渇きもしよう、炎天に
曝
(
さら
)
されよう。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、あわれな人間の生活の有様や、
飢
(
うえ
)
に
啼
(
な
)
いているあわれな
獣物
(
けだもの
)
などの姿をながめたのであります。
月と海豹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
斯
(
か
)
くて
夜半
(
やはん
)
まで草を分けて詮議したが、安行の行方は依然不明であった。
加之
(
しか
)
も夜の更けると共に、寒い雨が意地悪く
降頻
(
ふりしき
)
るので、人々も
寒気
(
かんき
)
と
飢
(
うえ
)
とに疲れて来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
日が高くなり、
飢
(
うえ
)
と疲れが少しずつ加わるにつれて、井上半十郎の焦燥は次第に濃くなりました。
江戸の火術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は
飢
(
うえ
)
と疲れでがっくりと
仰臥
(
あおのけ
)
になったまま、暗い
蒼穹
(
おおぞら
)
にきらめく星屑をうち眺めた。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
妻は病牀に
臥
(
ふ
)
し児は
飢
(
うえ
)
に
号
(
な
)
くと
詠
(
うた
)
った
梅田雲浜
(
うめだうんぴん
)
の貧乏は一通りのものではなかった。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
ましてや戦後の世の中、代用食に折々
飢
(
うえ
)
を忍んでいる人達の言葉をきけば、無理に死ぬるわけにも行かないから、自然に死んでくれるのが何よりの仕合せだと言っているではないか。
老人
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さあ
斯
(
か
)
うなると
今迄
(
いまゝで
)
張詰
(
はりつ
)
めて
居
(
を
)
つた
氣
(
き
)
も
幾分
(
いくぶん
)
か
緩
(
ゆる
)
んで
來
(
き
)
て、
疲勞
(
つかれ
)
も
飢
(
うえ
)
も
感
(
かん
)
じて
來
(
く
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
ある犬通の話に、
野犬
(
やけん
)
の牙は
飼犬
(
かいいぬ
)
のそれより長くて鋭く、且
外方
(
そっぽう
)
へ
向
(
む
)
くものだそうだ。
生物
(
せいぶつ
)
には
飢
(
うえ
)
程恐ろしいものは無い。食にはなれた野犬が猛犬になり狂犬になるのは唯一歩である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
汝
(
なんじ
)
はこの
曠野
(
あらの
)
に我等を導きいだして、この全会を
飢
(
うえ
)
に死なしめんとするなり。」
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
気象学会より寄贈せられたる鑵詰を
噬
(
かじ
)
りて
飢
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
ぎ、また寒気次第に
凜冽
(
りんれつ
)
を加うるといえども、器具散乱して寝具を伸ぶべき余地なく、かつ隔時観測を為しつつあるを以て、睡眠の
隙
(
すき
)
を得ず
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
弁当腹
(
べんとうばら
)
で、長い路を歩いて来たので、少なからず
飢
(
うえ
)
を覚えていたのである。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
と文治は
漸
(
ようよ
)
う
飢
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
ぎまして
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それは
飢
(
うえ
)
と
渇
(
かつ
)
とであった。いや、飢より渇の方がはるかに恐ろしい。雲はだんだん薄くなって、熱い陽ざしがじりじりとボートのうえへさしてきた。
幽霊船の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
草原の牝狼が、白けた冬の月の下で
飢
(
うえ
)
に
悩
(
なや
)
みながら一晩中
凍
(
い
)
てた土の上を歩き廻る
辛
(
つら
)
さを語ることもある。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
遁るべきやうなければせん
方
(
かた
)
無くせめては
斯
(
か
)
くもせば助からんかと、
飢
(
うえ
)
の用意に持ちたる
団飯
(
にぎりめし
)
を
取出
(
とりい
)
で、手に載せて差出せしに、取食ひて此上無く悦べる様なり。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
宗吉は、しかし、その長屋の前さえ、
遁隠
(
にげかく
)
れするように素通りして、明神の境内のあなたこなた、人目の
隙
(
すき
)
の隅々に立って、
飢
(
うえ
)
さえ忘れて、半日を泣いて泣きくらした。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
口に
飢
(
うえ
)
を覚えるように、心にもまた常に飢を覚えている故である。
珈琲
(
コーヒー
)
の香も嗅ぎたい。アラン・ポーの詩もよみたい。町のムスメを憎しみ嘲けるに先だって、おのれの身を省みねばならない。
冬日の窓
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
飢
(
うえ
)
に死なしめんとするなり。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
飢
(
うえ
)
を
医
(
い
)
するに足るものは以前も多く、その中には或いは起原の稲よりも古いものが、あるかも知れぬと思うにもかかわらず、注意せずにはおられない一つの特徴は
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
梁山泊
(
りょうざんぱく
)
の
割符
(
わりふ
)
でも襟に縫込んでいそうだったが、晩の旅籠にさしかかった
飢
(
うえ
)
と
疲労
(
つかれ
)
は、……六よ、怒るなよ……実際
余所目
(
よそめ
)
には、ひょろついて、途方に暮れたらしく
可哀
(
あわれ
)
に見えた。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
元船
(
もとぶね
)
を
乗棄
(
のりす
)
てて、
魔国
(
まこく
)
とこゝを覚悟して、
死装束
(
しにしょうぞく
)
に、髪を
撫着
(
なでつ
)
け、衣類を
着換
(
きか
)
へ、羽織を着て、
紐
(
ひも
)
を結んで、てん/″\が
一腰
(
ひとこし
)
づゝ
嗜
(
たしな
)
みの
脇差
(
わきざし
)
をさして
上陸
(
あが
)
つたけれど、
飢
(
うえ
)
渇
(
かつ
)
ゑた上、毒に当つて
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
飢
(
うえ
)
を感ずるままに始めは虫を捕って喰っていたが、それでは
事足
(
ことた
)
らぬように覚えて、のちには
狐
(
きつね
)
や
狸
(
たぬき
)
、見るに
随
(
したが
)
い引裂いて食とし、次第に力づいて、寒いとも物ほしいとも思わぬようになったと語る。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
飢
常用漢字
中学
部首:⾷
10画
“飢”を含む語句
飢死
飢餓
飢饉
飢渇
飢民
飢寒
大飢饉
飢饉年
寒飢
飢餲
飢凍
飢饉歳
半飢餓
飢餓困憊
飢雀
飢涎
飢殺
飢人地蔵
飢人
近飢
...