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顛倒
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てんとう
ふりがな文庫
“
顛倒
(
てんとう
)” の例文
臍下丹田に力を
籠
(
こ
)
めれば、放屁の音量を大にするばかりであり、丹田の力をぬけば、心気
顛倒
(
てんとう
)
して為すところを失うばかりであった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
中へ入ってみると、なんとなく
顛倒
(
てんとう
)
して、
大店
(
おおだな
)
らしい日頃の節度もなく、奉公人たちはただうろうろと平次の一行を迎えるだけです。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
宇宙を説明する
秘鑰
(
ひやく
)
はこの自己にあるのである。物体に由りて精神を説明しようとするのはその本末を
顛倒
(
てんとう
)
した者といわねばならぬ。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
サタンの使が裁判長の席に坐し、神の子が捕縛せられてその前に引き据えられるとは! こんな
顛倒
(
てんとう
)
した光景がまたと世にあろうか。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
なぜ名探偵をして、かの如く気を
顛倒
(
てんとう
)
せしめたか。その答は一つ。老探偵——いや名探偵は恋をせり、あの女に惚れたからだと……
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
そして、造花屋のことなどは忘れて、人通りの多い
賑
(
にぎ
)
やかな方へ賑やかな方へと往ったが、気が
顛倒
(
てんとう
)
しているので方角が判らない。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
なぜ今日の作がかくも冷やかになったか、この上下の位置が
顛倒
(
てんとう
)
したのが一つの起因である。機械そのものには何の悪もないであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
『どうすればええだろう?』と私は気が
顛倒
(
てんとう
)
していますから言うことがおずおずしています、そうしますと武はこわい眼をして
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ところが骨を
揉
(
も
)
まなければ
癒
(
なお
)
らぬとか、臓腑の位置を一度
顛倒
(
てんとう
)
しなければ根治がしにくいとかいって、それはそれは残酷な
揉
(
も
)
み方をやる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ふたりは、啓之助に襟がみをつかまれながら
顛倒
(
てんとう
)
した。そして、何か口走ったが、それは意味をなさないくらい
平心
(
へいしん
)
を欠いたものだった。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
教えという字はなぐるとか
叩
(
たた
)
くとかいうことを含んでいるようだが、育という字は子という字を
顛倒
(
てんとう
)
し、下に
肉月
(
にくづき
)
がついている。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
左右
顛倒
(
てんとう
)
の事実は別として顔の大きさというものに対しても正当な観念を得る事はおそらく非常に困難だろうと思われだした。
自画像
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
木俣は再度の失敗にもう気が
顛倒
(
てんとう
)
してきた。かれはいまここで生蕃を殺さなければふたたび世人に顔向けがならないと思った。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
ふと気がついてみると、いまの墜落で、ひどく
顛倒
(
てんとう
)
したときに体を縛ってある縄が切れたと見えて、手足が自由になっている。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
どないしてええのんか
顛倒
(
てんとう
)
してしもてると、「こないなったら、柿内さんとこい電話かけて揃いの着物取り寄せるよりしょうがないでしょ」
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
人と制度との主客関係を
顛倒
(
てんとう
)
し、制度のために個人の自我発展を阻止し、個人の活力を圧殺して顧みないものだと思います。
激動の中を行く
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
筆を執るものここにおいてあるいは文勢を変じあるいは省略の法を取り、あるいは叙事の前後を
顛倒
(
てんとう
)
せしめて人を飽かしめざらん事をつとむ。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
自分から
顛倒
(
てんとう
)
していて突当った人を見ると、
蛇
(
じゃ
)
の道は
蛇
(
へび
)
で、追廻す蝶吉がまた追廻す探索は届いて、顔まで
見知越
(
みしりごし
)
の恋の
仇
(
あだ
)
。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前者を無視し、または前者と後者との考察の順序を
顛倒
(
てんとう
)
するにおいては「いき」の把握は単に
空
(
むな
)
しい意図に終るであろう。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
結句に始めて雪をいへる歌にして第二句に「ふかさ」といへるは順序
顛倒
(
てんとう
)
ししかもその距離遠きは余り上手なるよみ方にあらず。(三月三十日)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
見ると、年若い助手の久吉も、
矢張
(
やは
)
り気が
顛倒
(
てんとう
)
したものか、
歪
(
ゆが
)
んだ顔に、血走った眼を光らせながら、夢中になって、カマに石炭を
抛込
(
なげこ
)
んでいる。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
上役にうまく取入って威張っていたもの等が、ガラ/\とその位置を
顛倒
(
てんとう
)
して行った。支え柱を一旦失うと、彼等は見事に皆の仲間
外
(
はず
)
れを食った。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
木の根に
躓
(
つまず
)
いて
顛倒
(
てんとう
)
しそうになっても、にこりともせず、そのまま、つんのめるような姿勢のままで、走りつづけた。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そうして僕が捕えてやっとソファの上へ腰かけさせた時には、親じの口も目も片一方引き吊って、まるですっかり気が
顛倒
(
てんとう
)
していることが分かった。
グロリア・スコット号
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
それ故ある人々は、ヘルンがもし悪妻をめとり、意地悪の姑等と同居したら、彼の神国日本観は、おそらく
顛倒
(
てんとう
)
した結果になったろうと言っている。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
ラスコーリニコフは突如として、例の件に関する彼の考えをすっかり
顛倒
(
てんとう
)
させ、いよいよ意見を固めさせたのである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
子供は手の甲を知らず知らず眼の所に持って行ったが、そうしてもあまりの心の
顛倒
(
てんとう
)
に矢張り涙は出て来なかった。
卑怯者
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
稀
(
まれ
)
に外国の方から来た毛色の違った旅人を見て「異人が通る」と思った彼自身の位置は丁度
顛倒
(
てんとう
)
してしまった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
源氏も今日の高い地位などは皆忘れて、魂も
顛倒
(
てんとう
)
させたふうに泣き泣き恨みを言うのであるが、宮は心の底からおくやしそうでお返辞もあそばさない。ただ
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ただ明らかなのは、彼が感動し
顛倒
(
てんとう
)
していたことである。しかしその感激はいかなる性質のものであったか。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
というのは、いま道庵が、聞くは末代の恥、聞かぬは一時の恥と言ったのは、たしかに比較が
顛倒
(
てんとう
)
している。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
概して論ずれば松陰は、攘夷のために、倒幕を唱えたれども、その後継者は、倒幕のために、攘夷を唱えたるなり。目的と手段とは、実に
顛倒
(
てんとう
)
したりしなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
女の言葉が前後
顛倒
(
てんとう
)
していて、ただ何か訴うるがごとく、ぶつぶつと恨みを述べているらしいほか、果して何を口説いているのか少しも
要領
(
ようりょう
)
を得ないのである。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ある日信子は例の切り通しの坂で
顛倒
(
てんとう
)
した。心弱さから彼女はそれを夫に秘していた。産婆の診察日に彼女は
顫
(
ふる
)
えた。しかし胎児には異状はなかったらしかった。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
多少順序は
顛倒
(
てんとう
)
するようですが、ソオリヤ君に、まずこの航海記録から始めてもらうことにしましょうか
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
必ずしもその必要はないのです、にもかかわらず、今日ではそれをいかにも化粧の第一条件にしております。主客
顛倒
(
てんとう
)
もはなはだしいといわざるを得ないのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
吾々の
平生
(
へいぜい
)
の生活が、それぞれ小説を書いているということになり、また、その中で、小説を作っているべき
筈
(
はず
)
だ。どうもこの本末を
顛倒
(
てんとう
)
している人が多くて困る。
小説家たらんとする青年に与う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
妻君は気が
顛倒
(
てんとう
)
して昨夜から床に就いたきりで面会はできないというし、
孝子
(
たかこ
)
という娘に会ったが何も事情は分からず、詰めかけていた
親戚
(
しんせき
)
のだれかれに訊いても
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
彼の肉体に植物の繁茂し始めた歴史の最初は、彼の雄図を確証した
伊太利
(
イタリー
)
征伐のロジの戦の時である。彼の眼前で彼の率いた一兵卒が、弾丸に撃ち抜かれて
顛倒
(
てんとう
)
した。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
場所が場所だけに、学生の遊里帰りとでも、間違えたのでしょう、ひどく反感をもった態度でしたが、こちらは何しろ気が
顛倒
(
てんとう
)
しています。言い値どおりに乗りました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
石燈籠
(
いしどうろう
)
は
餘
(
あま
)
り
強大
(
きようだい
)
ならざる
地震
(
ぢしん
)
の
場合
(
ばあひ
)
にも
倒
(
たふ
)
れ
易
(
やす
)
く、さうして
近
(
ちか
)
くにゐたものを
壓死
(
あつし
)
せしめがちである。
特
(
とく
)
に
兒童
(
じどう
)
が
顛倒
(
てんとう
)
した
石燈籠
(
いしどうろう
)
のために
生命
(
せつめい
)
を
失
(
うしな
)
つた
例
(
れい
)
は
頗
(
すこぶ
)
る
多
(
おほ
)
い。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
転んだ小虎は古杭で、横腹を打って、
顛倒
(
てんとう
)
した。それをお鉄は執念深くも、
足蹴
(
あしげ
)
にして、
痰唾
(
たんつば
)
まで吹掛けた。竜次郎はつくづく此お鉄の無智な圧迫に耐えられなく成った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
肉体的価値を得んがために永遠の価値に呼び掛けるごときは、軽重の
顛倒
(
てんとう
)
もまたはなはだしい。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
木曽義明は
顛倒
(
てんとう
)
した。と云うのは自家の乱脈は、
蔽
(
おお
)
おうとしても蔽い難く、足利将軍家から遣わされた、見届けの使者の三好春房に、見現わされるのが知れていたからである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鳴鐘の機械装置はいかなる方法によっても、そう云う
顛倒
(
てんとう
)
した鳴り方を許さぬのである。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
シナにたいするロンドンとニューヨークの地位を
顛倒
(
てんとう
)
するという見通しの点で、この報告書とマルクスの評論は一致するが、海軍専門家の推論は、何らの経済学的なものを含まず
汽船が太平洋を横断するまで
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
それから先の問答は、気が
顛倒
(
てんとう
)
しておりましたせいか一々記憶に止まっておりません。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
殺戮
(
さつりく
)
されることは、その状態なのだ! (以下七字不明)! もし、新聞や、その他の社会が事実を
顛倒
(
てんとう
)
してると考えるならば、それは、君が資本主義の社会を見ていないからだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
甚
(
はなは
)
だしきは全くその意味を
異
(
こと
)
にして居るのもあり、また一つの訳本に出て居る分が
外
(
ほか
)
の本には出て居らないのもあり順序の
顛倒
(
てんとう
)
したのもあるというような訳で種々
雑多
(
ざった
)
になって居ります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
彼はいつの間にか客が殺されているのを見て、このまま届出たら自分の犯行と見られるにきまっていると考え、気も
顛倒
(
てんとう
)
して、死体を(袋づめにしたのだったと思う)裏の川に投げ込む。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
顛
漢検準1級
部首:⾴
19画
倒
常用漢字
中学
部首:⼈
10画
“顛倒”で始まる語句
顛倒上下
顛倒夢想
顛倒淋漓
顛倒狼狽
顛倒衆生