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額際
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ひたいぎわ
ふりがな文庫
“
額際
(
ひたいぎわ
)” の例文
額際
(
ひたいぎわ
)
から
顱頂
(
ろちょう
)
へ掛けて、少し長めに刈った髪を真っ直に
背後
(
うしろ
)
へ向けて
掻
(
か
)
き上げたのが、日本画にかく
野猪
(
いのしし
)
の毛のように逆立っている。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
色の青褪めた、
貧
(
ひん
)
に
窶
(
やつ
)
れた母親が娘の枕元に来た。じっと
憂
(
うれ
)
わしげに、眼を閉じている苦しげな娘の
額際
(
ひたいぎわ
)
に手を当てて熱をはかって見た。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼女は
丁度
(
ちょうど
)
奥の窓から
額際
(
ひたいぎわ
)
に落ちるキラキラした朝の
日光
(
ひかげ
)
を
眩
(
まぶ
)
しさうに眼を
顰
(
しか
)
めながら、
閾
(
しきい
)
のうへに
爪立
(
つまだ
)
つやうにして黒い
外套
(
がいとう
)
を脱いだ。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
金蔵の首へかけた縄は放さなかったけれど金蔵の刀は避けられず、またしても左の
額際
(
ひたいぎわ
)
を
一刀
(
ひとたち
)
やられた。血が
迸
(
ほとばし
)
って眼へ入る。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
額際
(
ひたいぎわ
)
とか、
揉
(
も
)
み上げのようなところは金平糖が小さいので、それは別に
頃合
(
ころあ
)
いの笊を注文して、頭へ一つ一つ
釘
(
くぎ
)
で打ち附けて行ったものです。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
我
(
わ
)
が
罪
(
つみ
)
のやうに
平
(
ひら
)
あやまりに
謝罪
(
あやまつ
)
て、
痛
(
いた
)
みはせぬかと
額際
(
ひたいぎわ
)
を
見
(
み
)
あげれば、
美登利
(
みどり
)
につこり
笑
(
わら
)
ひて
何
(
なに
)
負傷
(
けが
)
をするほどでは
無
(
な
)
い
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
長火鉢の
猫板
(
ねこいた
)
に
片肱
(
かたひじ
)
突いて、美しい
額際
(
ひたいぎわ
)
を抑えながら、片手の
火箸
(
ひばし
)
で炭を
突
(
つ
)
ッ
衝
(
つ
)
いたり、灰を
平
(
なら
)
したりしていたが、やがてその手も動かずなる。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
眼も鼻も口もみな
額際
(
ひたいぎわ
)
へはねあがって、そこでいっしょくたにごたごたとかたまり、厖大な顎が夕顔棚の夕顔のように、ぶらんとぶらさがっている。
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
額際
(
ひたいぎわ
)
の髪にはゴムの長い
櫛
(
くし
)
をはめて髪を押さえて居る。四たび変って鬼の顔が出た。この顔は先日京都から送ってもろうた牛祭の鬼の面に似て居る。
ランプの影
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
その上に
紫
(
むらさき
)
のうずまくは
一朶
(
いちだ
)
の暗き髪を
束
(
つか
)
ねながらも
額際
(
ひたいぎわ
)
に浮かせたのである。金台に
深紅
(
しんく
)
の
七宝
(
しっぽう
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたヌーボー式の
簪
(
かんざし
)
が紫の影から顔だけ出している。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこへ
塩気
(
しおけ
)
がつく、
腥気
(
なまぐさっけ
)
がつく、
魚肉
(
にく
)
が
迸裂
(
はぜ
)
て飛んで
額際
(
ひたいぎわ
)
にへばり着いているという始末、いやはや眼も当てられない
可厭
(
いや
)
な
窘
(
いじ
)
めようで、叔母のする事はまるで
狂気
(
きちがい
)
だ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
顔は胸まで
俯向
(
うつむ
)
いている。雪のように白い
頭髪
(
かみのけ
)
を二房たらりと
額際
(
ひたいぎわ
)
から垂らし、どうやら
髻
(
もとどり
)
も千切れているらしく
髷
(
まげ
)
はガックリと小鬢へ
逸
(
そ
)
れ歩くにつれて顫えるのである。
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
内儀さんは、家にいても夫婦一つの部屋で
細々
(
こまごま
)
話をするようなことは、めったになかった。
悧発
(
りはつ
)
そうなその優しい目には、始終涙がにじんでいるようで、狭い
額際
(
ひたいぎわ
)
も曇っていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女の方では、何のことやら自分でも解らずに、両手を彼の肩に置いたまま、暫くはうっとりと眼が
眩
(
くら
)
んだようになって、彼の
聡明
(
そうめい
)
な皮肉な顔や、
額際
(
ひたいぎわ
)
や、眼や、美しい
髯
(
ひげ
)
をじっと眺めていた。
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
年は五十に近いのだが、でっぷりと太って、
額際
(
ひたいぎわ
)
に向う傷があって人相が
険
(
けわ
)
しい。これは前にしばしば名前の出た鳥沢の粂という男であります。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
けれども長い足を大きく動かした代助は、二三町も歩かないうちに
額際
(
ひたいぎわ
)
に汗を覚えた。彼は頭から鳥打を
脱
(
と
)
った。黒い髪を夜露に打たして、時々帽子をわざと振って歩いた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
額際
(
ひたいぎわ
)
へ膏薬が張ってある。もうこれだけでも見分けはつくまい。その上右の
頤
(
あご
)
の辺に、上手に
痣
(
あざ
)
が描いてある。悪い病気と不養生とで、やつれた女の
態
(
さま
)
である。その枕もとに薬がある。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
生温
(
なまぬる
)
く帽を吹く風に、
額際
(
ひたいぎわ
)
から
煮染
(
にじ
)
み出す
膏
(
あぶら
)
と、
粘
(
ねば
)
り着く
砂埃
(
すなほこ
)
りとをいっしょに
拭
(
ぬぐ
)
い去った
一昨日
(
おととい
)
の事を思うと、まるで去年のような心持ちがする。それほどきのうから寒くなった。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
甚三郎は静かに、
艶
(
つや
)
やかな髪の毛の分け目を
額際
(
ひたいぎわ
)
から左へ撫でました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
秘蔵の
義董
(
ぎとう
)
の
幅
(
ふく
)
に
背
(
そむ
)
いて
横
(
よこた
)
えた
額際
(
ひたいぎわ
)
を、小夜子が
氷嚢
(
ひょうのう
)
で冷している。
蹲踞
(
うずくま
)
る枕元に、泣き
腫
(
はら
)
した眼を赤くして、氷嚢の
括目
(
くくりめ
)
に寄る
皺
(
しわ
)
を勘定しているかと思われる。容易に顔を上げない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
額
常用漢字
小5
部首:⾴
18画
際
常用漢字
小5
部首:⾩
14画
“額”で始まる語句
額
額縁
額部
額越
額髪
額田
額堂
額口
額田王
額風呂