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離室
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はなれ
ふりがな文庫
“
離室
(
はなれ
)” の例文
そして、庭の外はすぐ東山裾の深い竹林につづいている奥まった
離室
(
はなれ
)
に通って、二、三の食べる物などを命じてしばらく話していた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
やがてお客様達がお食堂の方へお入りになると、
乳母
(
ばあ
)
やさんは達也様を抱いて、静かなお
離室
(
はなれ
)
へやって来て、一息
吐
(
つ
)
いていました。
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「拙者は酒に弱いので早く酔いつぶれて、
離室
(
はなれ
)
を借りて寝てしまった、火事の知らせがあるまで、なにも知らずに眠っていたのだ」
初午試合討ち
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
……そこへおまえさんという
鴨
(
かも
)
がかかったから、早速、馴じみの与力衆から手を廻して、今、わたしの出て来る前に、
離室
(
はなれ
)
でその取引さ
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
離室
(
はなれ
)
になっている奥の居間へ行ってみると、竹の葉影のゆらぐ半月窓のそばに、
二月堂
(
にがつどう
)
が出ているだけで、あるじはいなかった。
ユモレスク
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
「嘘よ——。相変らず
離室
(
はなれ
)
で寝てゐるわよ。皆なが来てゐるから一処に遊びませんかツて、
妾
(
わたし
)
が先刻お迎へに行つたらばね——」
夜の奇蹟
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
窓から見える草間の
離室
(
はなれ
)
へ、あさに晩にこっそり出入りしている
隻眼
(
せきがん
)
のお侍が、栄三郎様と同じ作りの陣太刀を
佩
(
は
)
いていることを知って
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
客は、なまじ自分の
他
(
ほか
)
に、
離室
(
はなれ
)
に老人夫婦ばかりと聞いただけに、廊下でいきなり、女の顔の
白鷺
(
しらさぎ
)
に擦違ったように
吃驚
(
びっくり
)
した。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
視野を
遮
(
さえぎ
)
るのは長崎屋の巨大な
棟
(
むね
)
、——その下には、巨万の富を護るために抱えておくという、二人の浪人者の住んでいる
離室
(
はなれ
)
も見えます。
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
竹村夫婦は、どこかの
離室
(
はなれ
)
めいたところに暮していて、
柴折戸
(
しおりど
)
のような門口から、飛石づたいにいきなり座敷の前に出た。
二つの庭
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
で、靜子は下女に手傳はして、兄を寢せ、座敷を片附けてから、一人
離室
(
はなれ
)
に入つた。夜氣が
濕
(
しつと
)
りと籠つて、人なき室に洋燈が明るく點いてゐる。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一人の息子さんがおありのようだが、土蔵の裏の
離室
(
はなれ
)
が空いているから、そこを勉強室にした方がよかろう、と言った。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
ところがこの家では、お祖母さんが
離室
(
はなれ
)
で、おりおり卵の壺焼をこさえては、おやつ代りに恭一と俊三とに与えている。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
F楼の廊下から中庭の飛び石へ、
離室
(
はなれ
)
からまた店へ——彼女の遁げめぐる
痕々
(
あとあと
)
へ生命の最後の赤い点滴が綴られた。
ある遊郭での出来事:公娼存廃論者への参考資料としての実例
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
彼はその眼から、自分と自分を引きもぎるようにして、鈎の手の廊下で半ば
離室
(
はなれ
)
になってる自分の室へ退いた。
幻の彼方
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ことに私はいつも
其家
(
そこ
)
の
離室
(
はなれ
)
に滞在する事にきめてあるので少しの遠慮もいらないから、とたって勧める。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
大きい木戸から作り庭の
燈籠
(
とうろう
)
の灯影や、橋がかりになった
離室
(
はなれ
)
の
見透
(
みすか
)
されるような家は二軒とはなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
美迦野
(
みかの
)
さんは、
炬燵布団
(
こたつぶとん
)
の
綴糸
(
とぢいと
)
をまるい
白
(
しろ
)
い
指
(
ゆび
)
ではじきながら、
離室
(
はなれ
)
の
琴歌
(
ことうた
)
に
声
(
こえ
)
をあはせた。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
桂木先生と誰れも褒めしが、下宿は十町ばかり我が家の北に、法正寺と呼ぶ寺の
離室
(
はなれ
)
を
仮
(
かり
)
ずみなりけり、幼なきより教へを受くれば、
習慣
(
ならはし
)
うせがたく我を愛し給ふこと人に越えて
雪の日
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
周囲を廻れば五町もあろうか、
主屋
(
おもや
)
、
離室
(
はなれ
)
、客殿、
亭
(
ちん
)
、
厩舎
(
うまや
)
、
納屋
(
なや
)
から小作小屋まで一切を入れれば十棟余り、実に堂々たる
構造
(
かまえ
)
であったが、その主屋の一室に主人紋兵衛は
臥
(
ふ
)
せっていた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十分ばかり
経
(
た
)
つた
後
(
のち
)
、僕は息を切らしながら、当時僕等の借りてゐた、
宿
(
やど
)
の
離室
(
はなれ
)
に帰つて来た。離室はたつた
二間
(
ふたま
)
しかない。だから
見透
(
みす
)
かし同様なのだが、どこにも久米の姿は見えなかつた。
微笑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その鉱泉旅館へ一二回往ったことのある二人は、すぐ多摩川の流れを
欄干
(
らんかん
)
の前に見る
離室
(
はなれ
)
へ通された。二人はその離室で
午食
(
ごしょく
)
とも
夕食
(
ゆうしょく
)
とも判らない食事をしながら話した。章一は酒を飲んでいた。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と夫婦打ち連れ、廊下伝いに娘お豊の
棲
(
す
)
める
離室
(
はなれ
)
におもむきたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
コゼットは父が病気なのを見て、
母家
(
おもや
)
をすて、小さな
離室
(
はなれ
)
と裏の中庭とにまた多くいるようになった。彼女はほとんど終日ジャン・ヴァルジャンのそばについていて、彼の好きな書物を読んでやった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「その家には、
離室
(
はなれ
)
でも、別にあるのかね?」
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「その謠の先生いふ家が、たゞの家とは違ひまんねと。奧に
離室
(
はなれ
)
座敷があつて、おみつつあんみたいな娘さんが、五人も六人も集まつて來るしくみになつてゐますさうな。うちのおつさんが、饂飩屋で聞いて來やはりましてん。」
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
友人の
離室
(
はなれ
)
などで
わがひとに与ふる哀歌
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
一緒に家へ帰ってみるとなるほど、奥の
離室
(
はなれ
)
の方から賑かな楽しそうな笑声が聞えています。従兄の仙ちゃんが来ているんです。
深夜の客
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
その奥庭の
離室
(
はなれ
)
だ。
午下
(
ひるさが
)
りのうららかな陽が、しめきった障子に木のかげをまばらにうつして、そよ風に乗ってくる梅の香。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
御新造
(
ごしんぞ
)
のお利榮さんと、私と手代の勘次郎と、下女のお萬と、それつきりでございます。——それから
離室
(
はなれ
)
のお安さん」
銭形平次捕物控:165 桐の極印
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
で、静子は下女に手伝はして、兄を寝せ、座敷を片付けてから、一人
離室
(
はなれ
)
に入つた。夜気が
湿
(
しつと
)
りと籠つて、人なき
室
(
へや
)
に洋燈が明るく
点
(
つ
)
いてゐる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私の生れたのは今私が籠居してゐるあのまゝの
離室
(
はなれ
)
であり、あの撥釣瓶でその産湯が汲まれたのであるといふやうなことを呑気に告げたのである。
心象風景(続篇)
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
その一つは三日まえにこの佐原屋の二階の
離室
(
はなれ
)
へ泊りこんだ客の、ずしりと重い
懐中
(
ふところ
)
である、旅へ出ての手始め、三次は気負ってこいつを狙った。
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と慌ててそこから庭下駄の音を転ばせた千浪が、前の
離室
(
はなれ
)
の側まで帰って来ると、
愕
(
おどろ
)
いたように床下からぱっと飛び出した男が、千浪の胸にどんとぶつかった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
旅客用の部屋は
母屋
(
おもや
)
と
鍵形
(
かぎがた
)
になつた
離室
(
はなれ
)
の方で、二階二間、階下二間、すべて六疊づつの部屋なのです。
樹木とその葉:33 海辺八月
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
順造は一寸其処につっ立っていたが、産婆が何かの用事にかかったので
離室
(
はなれ
)
の自分のへ逃て行った。
幻の彼方
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「ことによるとわたし達は冬子さんのいる春風楼へゆくことになるかも知れませんよ。あすこの
離室
(
はなれ
)
が空いているから、そこをお前の勉強室なり、寝室なりにしておいてね」
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
次郎は、はっとして、カステラの箱を小脇に抱えるなり、階段を降りて、大急ぎで
離室
(
はなれ
)
の方に行った。離室は人の頭で真っ黒だった。大ていの人は立ったまま病人を見つめていた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
知合の
家
(
うち
)
が広うございますもんですから、その
離室
(
はなれ
)
のような処へ移しましたんですの。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
幸ひと申しては變ですが、旦那樣はお耳が遠くて、少しくらゐのことでは氣がつかず、若旦那樣方のお部屋は
離室
(
はなれ
)
で、ぐつと遠くなつて居ります
銭形平次捕物控:305 美しき獲物
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
四年以前、野村が初めて竹山を知つたのは、まだ東京に居た時分の事で、其頃渠は駿河臺のとある竹藪の崖に臨んだ、可成な下宿屋の
離室
(
はなれ
)
にゐた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「
離室
(
はなれ
)
のお客さんが、
御酒
(
ごしゆ
)
を所望なすっていられるのです。宿をするぐれえなら、寝酒はつきものだとおっしゃるので」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
恰度
離室
(
はなれ
)
が六畳八畳の二間なので、私はもと/\からの南向きの六畳に、彼は西向きの部屋に、わかれた。
病状
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
龍助の画室は洋館の
離室
(
はなれ
)
を改造したもので、明りとりも大きく、
贅沢
(
ぜいたく
)
な嵌込み
煖炉
(
だんろ
)
があって窓は全部二重
硝子
(
ガラス
)
になっている十坪ほどのがっちりした部屋だった。
正体
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その間に、夫人は、
竹荘
(
ちくそう
)
と呼んでいる奥殿の
離室
(
はなれ
)
で、静かに朝茶の釜を
炉
(
ろ
)
にかけている。その釜の湯のたぎる頃——内匠頭の庭下駄の音がそこへ近づいて来る。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「宅の
離室
(
はなれ
)
をお
貸
(
かし
)
して上げていました。こんどの兄の滞在は余り長くない予定でございましたので——」
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
離室
(
はなれ
)
になつてゐる私の書齋の石段には、常に三四種類の蟻が來て餌をあさつてゐた。眼にも入らぬ埃の樣な追ふにも追はれぬ小さな薄赤い蟻はよく机から本箱の隅までも這ひよつて來た。
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
僕の身分で贅沢なことは云って居られませんから、百姓家の狭い
離室
(
はなれ
)
を借りたのです。僕は士官学校がなお休暇にならないものですから——休暇は八月になってからです——東京に残っていました。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
此室
(
ここ
)
に
貴方
(
あなた
)
と、
離室
(
はなれ
)
の茶室をお好みで、御隠居様御夫婦のお泊りがあるばかり、よい処で、よい折から——と言った癖に……客が
膳
(
ぜん
)
の上の
猪口
(
ちょく
)
をちょっと控えて、それはお前さんたちさぞ疲れたろう
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてお祖母さんは、
離室
(
はなれ
)
の縁から
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
離
常用漢字
中学
部首:⾫
19画
室
常用漢字
小2
部首:⼧
9画
“離”で始まる語句
離
離屋
離座敷
離縁
離家
離亭
離々
離別
離房
離反