“這出(はひだ)” の例文
見(み)えますとも、乾溝(からどぶ)の背後(うしろ)がずらりと垣根(かきね)で、半分(はんぶん)折(を)れた松(まつ)の樹(き)の大(おほき)な根(ね)が這出(はひだ)して居(ゐ)ます。其(その)前(まへ)に、束(つく)ねた黒土(くろつち)から蒸氣(いきれ)の立(た)つやうな形(かたち)で居(ゐ)るんですよ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
狹い柳町の通は、造兵歸(ざうへいがへり)の職工で、煑(にえ)くり返るやうである。軒燈(けんとう)が徐々(そろ/\)雨の中から光出して、暖かい煙の這出(はひだ)して來る飯屋(めしや)の繩暖簾(なはのれん)の前には、腕車(くるま)が幾臺となく置いてある。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ヤー這出(はひだ)して竹の皮を広(ひろ)げやアがつた、アレ丈(だけ)悉皆(みんな)喰(く)つちまうのか知ら。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何だ、又調練場(てうれんば)から小蛇でも這出(はひだ)して來たのかい」
凄(すさま)じい虫(むし)の唸(うなり)、軈(やが)て取(と)つて返(かへ)した左(ひだり)の手(て)に熊蜂(くまばち)が七ツ八ツ、羽(は)ばたきをするのがある、脚(あし)を揮(ふる)ふのがある、中(なか)には掴(つか)んだ指(ゆび)の股(また)へ這出(はひだ)して居(ゐ)るのがあツた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
堪(たま)らねえ、去年(きよねん)の沙魚(はぜ)の乾(ひ)からびた頭(あたま)ばかり、此(こゝ)にも妄念(まうねん)があると見(み)えて、北(きた)を向(む)いて揃(そろ)つて口(くち)を開(あ)けて居(ゐ)ら。蕨(わらび)を胴(どう)につけてうよ/\と這出(はひだ)しさうだ、ぺつ/\。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
譬(たと)ひ這出(はひだ)した処(ところ)でぬら/\と遣(や)られては凡(およ)そ五分間(ふんかん)位(ぐらゐ)は尾(を)を出(だ)すまでに間(ま)があらうと思(おも)ふ長虫(ながむし)と見(み)えたので已(や)むことを得(え)ず私(わし)は跨(また)ぎ越(こ)した、途端(とたん)に下腹(したはら)が突張(つツぱ)つてぞツと身(み)の毛(け)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
首(くび)を締(し)めて殺(ころ)さば殺(ころ)せで、這出(はひだ)すやうに頭(あたま)を突附(つきつ)けると、真黒(まつくろ)に成(な)つて小山(こやま)のやうな機関車(きくわんしや)が、づゝづと天窓(あたま)の上(うへ)を曳(ひ)いて通(とほ)ると、柔(やはらか)いものが乗(の)つたやうな気持(きもち)で、胸(むね)がふわ/\と浮上(うきあが)つて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)