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身上
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しんしょう
ふりがな文庫
“
身上
(
しんしょう
)” の例文
お雪ちゃん、お前の前だけれども、女というものは、なんのかんのと言うけれど、つまるところは面だけが
身上
(
しんしょう
)
じゃねえのかなあ——
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
家を堅くしたと言われる祖父が先代から
身上
(
しんしょう
)
を受取る時には、銭箱に百文と、米蔵に二俵の
貯
(
たくわ
)
えしか無かった。味噌蔵も空であった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
第一
身上
(
しんしょう
)
が違う、三河町の吉田屋へ転がり込めば、相手が仏様になっていても、まさか唯じゃ投り出されない——まず欲得ずくだろうな
銭形平次捕物控:182 尼が紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その苦労をおとらは能くお島に言聞せたが、
身上
(
しんしょう
)
ができてからのこの二三年のおとらの心持には、いくらか
弛
(
たる
)
みができて来ていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何んと恐しかろう。捻平さん、かくまで
身上
(
しんしょう
)
を思うてくれる婆どのに対しても、無駄な祝儀は出せませんな。ああ、
南無阿弥陀仏
(
なむあみだぶつ
)
。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
わたくしは抽斎の師となるべき人物を数えて
京水
(
けいすい
)
に及ぶに当って、ここに京水の
身上
(
しんしょう
)
に関する
疑
(
うたがい
)
を
記
(
しる
)
して、世の人の
教
(
おしえ
)
を受けたい。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
久「
己
(
おら
)
ア
此家
(
こっち
)
の旦那の身寄りだというので、
皆
(
みんな
)
に大きに
可愛
(
かわい
)
がられらア、この
家
(
うち
)
の
身上
(
しんしょう
)
は去年から金持になったから、おらも鼻が高い」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身上
(
しんしょう
)
を潰したのも八橋が半分は手伝っている。命と吊り替えというほどの千両を残らず
煙
(
けむ
)
にしたのも、みんな八橋のためである。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
僕の一家は
宇治紫山
(
うじしざん
)
という人に
一中節
(
いっちゅうぶし
)
を習っていた。この人は酒だの遊芸だのにお蔵前の札差しの
身上
(
しんしょう
)
をすっかり費やしてしまったらしい。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
当時頭を
擡
(
もた
)
げて来たのが東金家だった。東金君のお父さんは一代で
身上
(
しんしょう
)
を拵えるくらいの人だから、ナカ/\の
遣手
(
やりて
)
で、兎角の風評があった。
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
律義な爺さんの一代にしっかり
身上
(
しんしょう
)
を持ち上げ、
偕白髪
(
ともしらが
)
の老夫婦、子、孫、曾孫の繁昌を見とどけてのめでたい往生でした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お前も知ってのとおり深田はおら
家
(
うち
)
などよりか
身上
(
しんしょう
)
もずっとよいし、それで旧家ではあるし、おつねさんだって、あのとおり十人並み以上な娘じゃないか。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
智慧の
環
(
わ
)
のような金具を出して五ツの
鈎
(
かぎ
)
に解き放し、それを
長押
(
なげし
)
へ一つずつ懸けて、笠、衣類、合財袋、煙草入れ、旅の
身上
(
しんしょう
)
をのこらずこれに吊ってみせる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とにかく大師の立寄った家では
身上
(
しんしょう
)
がよくなると言って、今でもひそかに心待ちにしている人もあるという。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
伊豆伍
(
いずご
)
は、
身上
(
しんしょう
)
二十五万両と言われる神田三河町の
大店
(
おおだな
)
だ。一
代分限
(
だいぶんげん
)
で、
出生
(
しゅっせい
)
は越後の
柏崎
(
かしわざき
)
だという。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ドーブレクは彼を刑事と思った。ドーブレクにしろ、警視庁にしろ、この事件の
中
(
うち
)
へ第三の怪物が飛び込んで来た事を未だに知らないでおる。それだけが彼の
身上
(
しんしょう
)
だ。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
女道楽をはじめとして私行的の道楽なら、いくら金を使っても池上の
身上
(
しんしょう
)
としては
嵩
(
たか
)
が知れたものである。たゞ事業の道楽をやられては怖い。父の理兵衛がよい手本である。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
長火鉢は拭き込んでてらてら光るところが
身上
(
しんしょう
)
なのだが、この
代物
(
しろもの
)
は欅か桜か
桐
(
きり
)
か元来不明瞭な上に、ほとんど
布巾
(
ふきん
)
をかけた事がないのだから陰気で引き立たざる事
夥
(
おびただ
)
しい。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ものをしまつにする
術
(
すべ
)
を知らないで、一生乏しい乏しいで終わったものの子供は、生まれながらに福分うすく、一代で
身上
(
しんしょう
)
を起こしたというような人は、その親であった人も
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
一体その娘の死んだ
親父
(
おやじ
)
というのが恐ろしい道楽者で自分一代にかなりの
身上
(
しんしょう
)
を奇麗に飲み
潰
(
つぶ
)
してしまって、後には借金こそなかったが、随分みじめな中をお
母
(
ふくろ
)
と二人きりで
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
その代り
身上
(
しんしょう
)
の贅沢はいわない、どのみち何とか色は附けてくれるんだろうから。——さきの出ようが出ようだから。こっちも構わねえ、高飛車に出てやったとそういっていた。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
千吉は今では新しい得意もでき、子育ての中で家を建てたり、畑を買ったり、やりくりのうまい女房のおかねは
身上
(
しんしょう
)
を作るのに夢中で、近所づき合いもろくにしない暮し方をしていた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「じゃ、あんたは一度にひと
身上
(
しんしょう
)
こさえてしまわなくちゃ承知できないの?」
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
袘
(
ふき
)
のすりきれた古袷と剥げッちょろ塗鞘の両刀だけの
身上
(
しんしょう
)
。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
身上
(
しんしょう
)
を起すには今日を逸してはならぬと寄手は勇み立った。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
目
(
め
)
はしの
利
(
き
)
いたところが、まず
何
(
なに
)
よりの
身上
(
しんしょう
)
なのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
身上
(
しんしょう
)
だって
財産
(
かまど
)
だって、
潰
(
つぶ
)
れてしまうのあたりめえだ……
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「伊勢屋の後家だよ、たいした
身上
(
しんしょう
)
だとさ。それをつけ廻して三年、とうとうものにしたじゃないか、忘れもしない、あの前の晩だよ」
銭形平次捕物控:349 笛吹兵二郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あすこも近ごろは
身上
(
しんしょう
)
を作ったそうで、
良人
(
おやじ
)
からお庄をくれてやろうかなんて言ってよこしましたけれど、私は返事もしましねえ。」
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
旅順は落ちると云う時期に、
身上
(
しんしょう
)
の有るだけを酒にして、漁師仲間を大連へ送る舟の底積にして乗り出すと云うのは、着眼が好かったよ。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「この店もしかるべき大家のようだが、こう
人真似
(
ひとまね
)
をするようになっちゃあ、
身上
(
しんしょう
)
が左前になったのかな……番頭にいいのがいねえんだな」
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
質屋と云っても半分は農家で、相当の
身上
(
しんしょう
)
であるらしい。その裏手に二軒の
家作
(
かさく
)
があって、大工や左官などがはいっていた。
半七捕物帳:57 幽霊の観世物
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今では
横浜
(
はま
)
へ往って居りやすが、何うも
身上
(
しんしょう
)
を大きくするくらいの奴は無理な算段でもって店を明けるような事が有ろうが、何うもへゝゝゝゝ
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この路を去る十二三町、停車場
寄
(
より
)
の海岸に、石垣高く松を
繞
(
めぐ
)
らし、廊下で
繋
(
つな
)
いで
三棟
(
みむね
)
に分けた、門には新築の長屋があって、手車の車夫の控える
身上
(
しんしょう
)
。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕は遊びに行っていて、これじゃ
迚
(
とて
)
も
敵
(
かな
)
わないと思ったことがある。村の連中は
身上
(
しんしょう
)
の大小で人間の値打を
定
(
き
)
める。最も興味のある話題は人の家の財産だ。
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「ねいおッ
母
(
か
)
さん、小手の家では必ず省作に
身上
(
しんしょう
)
を持たせるといってるそうだから、ここは早く
綺麗
(
きれい
)
に向うへくれるのさ。おッ母さんには御異存はないですな」
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
諸人の
羨望
(
せんぼう
)
の的であって、一代に
身上
(
しんしょう
)
を作ったものの器量と才覚では、とうていこれと競争もできず、本人たちもまたたとい隆々たる家運を誇ることはできぬまでも
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
どうも、うちの老先生のようじゃ、とても
身上
(
しんしょう
)
の持ち直しは
覚束
(
おぼつか
)
ないですねえ。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
細君が年に一度の願だから是非
叶
(
かな
)
えてやりたい。
平生
(
いつも
)
叱りつけたり、口を聞かなかったり、
身上
(
しんしょう
)
の苦労をさせたり、小供の世話をさせたりするばかりで何一つ
洒掃薪水
(
さいそうしんすい
)
の労に
酬
(
むく
)
いた事はない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
父子各自の
身上
(
しんしょう
)
についてはすべてかれこれと互いに異議をいれずに適宜に処置するであろう、神葬墓地の修繕を怠るまじきことはもとより庭園にある記念の古松等はみだりに伐採しないであろう
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
井筒屋の引っ越したのも、それにつづいての二三げんの空家になったのも、おそらく……ではない、まちがいなく、またしても、そこに、大きな
身上
(
しんしょう
)
の、銀行あるいは会社ができるにちがいない……
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
「旦那、まだありますよ、——
身上
(
しんしょう
)
を
潰
(
つぶ
)
してしまった研屋五兵衛に、三千五百両という大金を融通したのは、ありゃ、何のためでした」
銭形平次捕物控:072 買った遺書
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それに自分の着物を畳みもせずに、
脱
(
ぬぎ
)
っぱなしで寝て了うなんて、それだから御父さんも、この
身上
(
しんしょう
)
は譲られないと言うんじゃないか」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女のために
身上
(
しんしょう
)
を棒に振るほどの粋人でないだけが恨みだが、半七よりもいくらか若くて、武骨で、ウブなところが嬉しい。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その償いの一端にさえ、あらゆる
身上
(
しんしょう
)
を
煙
(
けむ
)
にして、なお足りないくらいで、焼あとには灰らしい灰も残らなかった。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「その家主の煙草屋は関口屋という古い店で、
身上
(
しんしょう
)
もよし、近所の評判も悪くない
家
(
うち
)
です。そこの女中のお由という若い女が二、三日前に死にました」
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
丈「いや奉公人も大勢置いたが、宿屋もあわんから奉公人には
暇
(
いとま
)
を出して、
身上
(
しんしょう
)
を仕舞おうと思って
居
(
い
)
るのさ」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
差当り、銀さんは
唯
(
たった
)
一人の内弟子だった。経歴は商業学校卒業、会社員、斯ういう芸道の志望者としては珍らしい。親父さんが義太夫に
凝
(
こ
)
って
身上
(
しんしょう
)
を
潰
(
つぶ
)
した。
心のアンテナ
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だって随分いろいろな事をして、一代のうちに
身上
(
しんしょう
)
を拵えた人だと云うのですから、わたくしどんな気立の人だか分からないと思って、心配していたのですわ。そうですね。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
または
細
(
こまか
)
く裂かずに一枚の附木を使ったために、
身上
(
しんしょう
)
が持てぬと謂って帰された嫁の話なども、つまりはこの物が火吹竹と同じに、
銭
(
ぜに
)
を払わなければならぬ発明であるが故に
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
“身上”の意味
《名詞1》
身の上。
身分。
財産。
《名詞2》
身体の表面。
取り柄。
身の上。
(出典:Wiktionary)
身
常用漢字
小3
部首:⾝
7画
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“身上”で始まる語句
身上噺
身上話
身上持
身上談
身上骨
身上判断