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豊饒
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ほうじょう
ふりがな文庫
“
豊饒
(
ほうじょう
)” の例文
旧字:
豐饒
そして、胸のふくらみから腰から脚へかけての線など、その
豊饒
(
ほうじょう
)
な肉体の弾力のある充実を、めざましく、ものの美事に示している。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
三十五歳で不遇のうちに死んだモーツァルトの遺産が、なんと後世の生活を
豊饒
(
ほうじょう
)
にし、張り合いのあるものにしたことであろうか。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
イギリスの土地のある小さな部分を美しく平和にかつ
豊饒
(
ほうじょう
)
なるものにしようと試みよう。そこには蒸汽機関も鉄道も一切なしにしよう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
次にこの鉢を持って裏の畑へ行き、最も
豊饒
(
ほうじょう
)
らしい土を一鉢分失敬した。だが、いくら豊饒でも、畑の土には石や枯れ葉がまざっている。
雪割草の花
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
一時の愛と母性というただ二つの偶像に
燔祭
(
はんさい
)
としてささげられて、いたずらに燃えつくしてる、その熱烈
豊饒
(
ほうじょう
)
な力をもってる無数の女を
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
たとえば、五穀の
豊饒
(
ほうじょう
)
を祈り、風水害の免除をいのり、疫病の流行のすみやかに
消熄
(
しょうそく
)
することを
乞
(
こ
)
いのみまつったのである。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
活溌な有機的関係によって相互的に各面が
豊饒
(
ほうじょう
)
になりつつあること、
強靱
(
きょうじん
)
になりつつあることの自覚を高めているのです。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
北斎
(
ほくさい
)
などの読み本の挿画には、田舎の
豊饒
(
ほうじょう
)
を写し出そうとすると、きまって
鳴子
(
なるこ
)
に
頓著
(
とんじゃく
)
せぬらしい雀の大群が描いてある。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
物足りなさに
啜
(
すす
)
り泣いていた
豊饒
(
ほうじょう
)
な肉体——かの女が規矩男のその肉体をまざまざ感じたその日、かの女は武蔵野へ規矩男を無断で置いて来た。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私が一度その坂の上に立った時は秋で、
豊饒
(
ほうじょう
)
な稲田は黄色い海を見るようだった。向の方には千曲川の光って流れて行くのを望んだこともあった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
だが元々、藩士の
性骨
(
しょうぼね
)
は、この五
穀
(
こく
)
豊饒
(
ほうじょう
)
で風光のもの
和
(
やわ
)
らかな瀬戸内の潮風や中国の土だけに出来上ったものじゃない。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこには何か宇宙的なものがあり、世界のつきることのない活力と
豊饒
(
ほうじょう
)
とを、そうすることを禁じられるまではいつまでも宣べ伝えているのであった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
小さい愛の神のアモールたちは、そのまわりでワニとたわむれていました。
豊饒
(
ほうじょう
)
の角の中にはごく小さいアモールがひとり、
腕
(
うで
)
を組んですわっていました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
豊饒
(
ほうじょう
)
な土地には、もう立札が立っている。雪の中に埋められて、馬鈴薯も食えずに、一家は次の春には餓死することがあった。それは「事実」何度もあった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
それで歩きながらわたしの目は
両側
(
りょうがわ
)
を
限
(
かぎ
)
っている
丘
(
おか
)
や、
豊饒
(
ほうじょう
)
な田畑よりも、よけい水の上に注がれていた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
これが実現されると領内の耕作地はたちまち
豊饒
(
ほうじょう
)
な田園に一変するが、しかし、これに隣接する他領
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
豊饒
(
ほうじょう
)
な大陸文化を十分に摂取しながら、よく日本独特の美の源泉を濁らしめず、現場の技術者等をも用捨なく指揮統率あらせられた御姿は実に
颯爽
(
さっそう
)
たるものであった。
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
豊饒
(
ほうじょう
)
な土地に
卸
(
おろ
)
された種が伸びやかに生長して美しき花を咲かせやすいように、よき周囲の状態に置かれた心は純粋にまた正直に育って行って美しき夢を結びやすい。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
と、歌にさえ作られて唄われた、その
豊饒
(
ほうじょう
)
の伊那平野には青い物の影さえ見られなくなった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
はたしてこの地つづきの原野に、報告されたほどの
豊饒
(
ほうじょう
)
な土があるか?
鍬
(
くわ
)
をふるって開墾するだけがわれわれのあたえられた
途
(
みち
)
か? 土民になるのが唯一の生きる途であろうか?
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
もっとも最近になって、
独逸
(
ドイツ
)
のヒッペルのように、先生の仕事を引用して、火花の形の研究から
豊饒
(
ほうじょう
)
な研究の領域が
拓
(
ひら
)
けるであろうということを指摘しているような人もないではない。
指導者としての寺田先生
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼女はそれらの行のうちに感じた、情に燃えた熱烈な
豊饒
(
ほうじょう
)
な正直な性質を、
聖
(
きよ
)
い意志を、大なる悲哀と大なる希望を、思いもだえる心を、また
恍惚
(
こうこつ
)
たる喜びの発揚を。その手記は何であったか。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ジャン・クリストフの眼つきに接しただけですでに、世界に散在してる未見の友人らは、この作品の源泉たる悲壮な友愛、この勇壮な気力の河流が出てきた
豊饒
(
ほうじょう
)
な絶望を、感じてくれたのである。
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
ここが最も
豊饒
(
ほうじょう
)
な産地であろうと語られた。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
豊饒
(
ほうじょう
)
な科学のみのりが
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
そして今二人いっしょにいると
豊饒
(
ほうじょう
)
な気がした。クリストフの影に身を置いて、オリヴィエは光にたいする趣味を見出した。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
立派な作、
豊饒
(
ほうじょう
)
な作、こう讃えるより外はない。上部左右には四角の面相対し、合せて下部一条の円筒形に相対する。驚くべき確かな
均合
(
つりあい
)
とその調和。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
仏伊の通俗楽に
通暁
(
つうぎょう
)
した彼にとっては、その
豊饒
(
ほうじょう
)
なる創作力を傾けて、美しき組曲、序曲、その他の器楽曲を生産せしむる唯一の機会でもあったのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
ニオはすなわち
稲村
(
いなむら
)
のこと、中央部でスズミともスズシともいうものと同じであって、この日新たにこれを積んで見るのは、秋の
豊饒
(
ほうじょう
)
を祝する意と思われるが
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
泡鳴著作多く、
詩歌
(
しいか
)
に小説に、独自の異才を放つ。その感情の
豊饒
(
ほうじょう
)
と、着想の奇抜は、時人を驚せり。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
過ぐる長雨から起き直った
畠
(
はたけ
)
のものは、半蔵らの行く先に待っていて、美濃の盆地の
豊饒
(
ほうじょう
)
を語らないものはない。今をさかりの
芋
(
いも
)
の葉だ。
茄子
(
なす
)
の花だ。
胡瓜
(
きゅうり
)
の
蔓
(
つる
)
だ。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこは河南の
陳留
(
ちんりゅう
)
(開封の東南)と呼ぶ地方である。沃土は広く
豊饒
(
ほうじょう
)
であった。南方の文化は北部の重厚とちがって進取的であり、人は敏活で機智の眼がするどく働いている。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
和金の
清洒
(
せいしゃ
)
な顔付きと背肉の盛り上りを持ち胸と腹は琉金の
豊饒
(
ほうじょう
)
の感じを保っている。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
けっして誤ることのないのは何事もなさない者ばかりである。生きたる真理のほうへ
邁進
(
まいしん
)
する
誤謬
(
ごびゅう
)
は、死んだ真理よりもいっそう
豊饒
(
ほうじょう
)
である。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
湖北某村とあるのみだが、春秋の二度、村社において行わるる家内安全五穀
豊饒
(
ほうじょう
)
を祈る神事で、春は一月から二月の間に行われ、この村の実例は二月十二日だとある。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この谷間は割合に
豊饒
(
ほうじょう
)
で、傾斜の上の方まで耕されている。
眼前
(
めのまえ
)
に連なる青田は一面緑の波のように見える。士族地からここへ通って来るということも先生方を悦ばせた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この家の娘が身を
賭
(
か
)
けるようにして、河上を探りつつ試みたあの土俗地理学者との恋愛の話の味い、またその娘が
遂
(
つい
)
に流れ定って行った海の果の
豊饒
(
ほうじょう
)
を親しく見聞して来た私には
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
浙江
(
せっこう
)
一帯の沿海を持つばかりでなく、揚子江の流域と河口を
扼
(
やく
)
し、気温は高く天産は
豊饒
(
ほうじょう
)
で、いわゆる南方系の文化と北方系の文化との飽和によって、
宛然
(
えんぜん
)
たる呉国色をここに劃し
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その比類なき魅力は、
豊饒
(
ほうじょう
)
なりっぱな土地にかかってるとともにまた、不屈
不撓
(
ふとう
)
な民衆の努力にかかってるのだった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
五穀は
豊饒
(
ほうじょう
)
だし、塩は増産されるし、風土はよし、
物質
(
もの
)
にも、天然にも、余りめぐまれているので、おまえ達、町人初め、百姓も、藩士も、貧困を知らずに少し
暢
(
の
)
んびりしすぎておるよ。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれどもそういうものの起ったとき、無暗にこれ等の
豊饒
(
ほうじょう
)
な果ものにかぶりつくのです。
暴戻
(
ぼうれい
)
にかぶりつくのです。すると、いつの間にか慰められています。だから手元に果物は絶やさないのです
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
とりあえず半蔵らはその
請書
(
うけしょ
)
を
認
(
したた
)
め、ついでにこの地方の人民が松本辺の
豊饒
(
ほうじょう
)
な地とも異なり深山幽谷の間に居住するもののみであることを断わり、
宿場
(
しゅくば
)
全盛の時代を過ぎた今日となっては、茶屋
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
力と愛とにあふれてる健全な
豊饒
(
ほうじょう
)
な魂にとっても、神が存在するか否かを
懸念
(
けねん
)
することより、もっと緊急な
沢山
(
たくさん
)
の仕事があたかもないかのようである。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
玄徳は、劉表に代って、国主の「
豊饒
(
ほうじょう
)
を共に慶賀するの文」を読みあげた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてその原始の自然に食い込んで生活を立てて行く仕事が、何の種類であれ、人間の生きる姿の単一に近いものであるように考えさせられた。始終自然から
享
(
う
)
ける直接の
豊饒
(
ほうじょう
)
な直観に浸れもしよう。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これまで灰色の幻像にばかり限られていた禁欲生活の補いをつけた。運命のために息をふさがれていた彼の
豊饒
(
ほうじょう
)
な性質は、これまで用いなかった享楽の力を突然意識しだした。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
唯々
(
いい
)
とご承諾になったようですが、何といっても
淮南
(
わいなん
)
は
豊饒
(
ほうじょう
)
の地、
袁
(
えん
)
一族は名望と伝統のある古い家柄です。先ごろ呂布と一戦してやぶれたりといえども、決して軽々しく見ることはできません。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしこんどの新しい神秘な結合は、それよりもさらに
豊饒
(
ほうじょう
)
であった。というのは、オリヴィエがかつて所有しなかったまれな宝を、喜悦を、グラチアは彼にもたらしたのだった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
行ってみると、ここは地味
豊饒
(
ほうじょう
)
で
銭粮
(
せんろう
)
の蓄えも官倉に満ちているので
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ついに彼は、昔自分が攻撃した精神傾向を他人のうちに是認したばかりでなく、それを享楽するまでになった。なぜなら、それは世界の
豊饒
(
ほうじょう
)
に貢献するところがあるようだったから。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
豊
常用漢字
小5
部首:⾖
13画
饒
漢検1級
部首:⾷
21画
“豊”で始まる語句
豊
豊後
豊前
豊国
豊頬
豊臣
豊太閤
豊後守
豊穣
豊麗