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訣別
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けつべつ
ふりがな文庫
“
訣別
(
けつべつ
)” の例文
しかるにヘーゲルの見たソクラテスは、徹底的な合理主義者であって、その哲学により古い信仰や風習から
訣別
(
けつべつ
)
したことになっている。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
訣別
(
けつべつ
)
の歌だから、
稍
(
やや
)
形式になり易いところだが、海上の小島を以て来てその気持を形式化から救っている。第四句が中心である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
小仏
(
こぼとけ
)
の
渓谷
(
けいこく
)
において、日本左衛門とああいう
訣別
(
けつべつ
)
をした金吾が、そのごの一念をお粂の行方に傾倒していたのは想像に難くないことです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうかと思うと一方には、代がわりした『毎日新聞』の翌々日に載る沼南署名の
訣別
(
けつべつ
)
の辞のゲラ
刷
(
ずり
)
を封入した自筆の手紙を友人に配っている。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
いつもであると、
訣別
(
けつべつ
)
に際し、各艦は水平線上に浮かびあって、甲板上に整列し、
答舷礼
(
とうげんれい
)
を以て、お
互
(
たがい
)
の
武運
(
ぶうん
)
と無事とを祈るのが例であった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
否
(
いな
)
、自分に
訣別
(
けつべつ
)
するため、
外
(
よそ
)
ながら自分を見ようとした時、偶然自分が危難に遭遇したため、前後の思慮もなく飛び込んだのではないだろうか。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
優善が家を出た日に書いたもので、一は
五百
(
いお
)
に
宛
(
あ
)
て、一は成善に宛ててある。
並
(
ならび
)
に
訣別
(
けつべつ
)
の書で、
所々
(
しょしょ
)
涙痕
(
るいこん
)
を
印
(
いん
)
している。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
時に同僚の昔の部下が、斬込みに行くため
訣別
(
けつべつ
)
のあいさつに来た。そんな時でも彼等はわらっていた。わらいながら手を振って、洞窟を出て行った。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
訣別
(
けつべつ
)
の宴につらなった良致氏は、黙々として静かにホークを取っただけで、食後の話もなく、翌日、
出立
(
しゅったつ
)
のおりもプラットホームに石の如く立って
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ラウペパは信じなかった。彼は覚悟していた、自分は二度とサモアの地を踏めまいと。彼は、全サモア人への
訣別
(
けつべつ
)
の辞を
認
(
したた
)
めて、マターファに渡した。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
一は『新時代』紙との
訣別
(
けつべつ
)
、他は自身のアカデミー脱退という否定的な形で現われているにすぎないから、ここでは一応除外するのを至当とするだろう。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
沢山の麻油や孤踏夫人や又その
愛撫
(
あいぶ
)
を思い出しもしたのであるが、親愛なるものに
訣別
(
けつべつ
)
したがるかたくなな
寂寥
(
せきりょう
)
は、やはりその時も有るには有ったらしい。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
用途への離別は工藝への
訣別
(
けつべつ
)
である。その距離が隔るほど、工藝の意義は死んでくる。あの美術品を作ろうとする今の工藝家の驚くべき錯誤を許し得ようや。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
その式は終わった、客は涙をおさえかね、最後の
訣別
(
けつべつ
)
をして室を出て行く。彼に最も親密な者がただ一人、あとに残って最期を見届けてくれるようにと頼まれる。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
シャアは黙って太子に従い、太子もまた黙然と
佇立
(
ちょりつ
)
して私たちの方に
訣別
(
けつべつ
)
の眼を向けていられる。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この様子ではいつまで嘆願をしていても、とうてい見込がないと思い切った武右衛門君は突然かの偉大なる
頭蓋骨
(
ずがいこつ
)
を畳の上に
圧
(
お
)
しつけて、無言の
裡
(
うち
)
に暗に
訣別
(
けつべつ
)
の意を表した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ユダの去った後、イエスは残る十一人の弟子にむかい、懇々として
訣別
(
けつべつ
)
の遺訓を述べた。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
古典的秩序へのあこがれやら、
訣別
(
けつべつ
)
やら、何もかも、みんなもらって、ひっくるめて、そのまま歩く。ここに生長がある。ここに発展の路がある。称して浪曼的完成、浪曼的秩序。
一日の労苦
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは
訣別
(
けつべつ
)
の悲哀を物語る眼だったのか。断じてそんなものではない。先生の眼が、そんなことで、あんなにつめたく、あんなに険しくなろうとは、とうてい想像も出来ないことなのだ。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
わがZ曲馬団は
愈々
(
いよいよ
)
数日中に東京市民諸君に
訣別
(
けつべつ
)
致すこととなりましたが、訣別にのぞみ御愛顧御礼として、来る×月×日午後一時より、特別番外猛獣団長大山ヘンリー氏の出演を
乞
(
こ
)
い
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
問 予は予の机の
抽斗
(
ひきだし
)
に予の秘蔵せる
一束
(
ひとたば
)
の手紙を——しかれどもこは幸いにも多忙なる諸君の関するところにあらず。今やわが心霊界はおもむろに薄暮に沈まんとす。予は諸君と
訣別
(
けつべつ
)
すべし。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
母が世の常の母であり、わたくしが以前のわたくしなら、むろんこう告白して、父
歿
(
な
)
き後は親一人子一人である母に向って理解されないまでも自分の口ずから
訣別
(
けつべつ
)
の印をしましたことでしょう。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これは女房の奴には内証だが、私はこの屋根裏部屋にときどき閉じ籠っては、全く一人っきりで、昔の自分にそっくりそのままの自分に返って、心ゆくまで自分の青春に
訣別
(
けつべつ
)
を告げようという陰謀。
卜居:津村信夫に
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
年来の忠勤をいたはる暇もなく
訣別
(
けつべつ
)
をつぐ。誰にてもあれ、我に劣らぬもののふにこの
大鹿毛
(
おほかげ
)
を給ふべきなり。
愛
(
め
)
で給へかし。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
入港がまだ終らないうちに、隆夫のたましいは汽船ゼリア号に
訣別
(
けつべつ
)
をし、風のように海の上をとび越えて、海岸へ下りた。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その報をきいて
駈
(
かけ
)
付けた門弟たちは、師の
病体
(
からだ
)
を神戸にうつすと同時に「
楠公
(
なんこう
)
父子桜井の
訣別
(
けつべつ
)
」という、川上一門の
手馴
(
てな
)
れた史劇を土地の大黒座で開演した。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
譲吉と、夫人との間には多くの僧侶が介在し、多くの縁者親戚が介在し、譲吉は単なる会葬者の一人として、遠くから、夫人の遺骸に
訣別
(
けつべつ
)
の涙を
手向
(
たむ
)
けたに過ぎなかった。
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
奉仕に活きる志、これが心霊を救う道であるが如く、工藝をも救う道である。実用を離れるならば、それは工藝ではなく美術である。用途への離別は工藝への
訣別
(
けつべつ
)
である。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
黙って鏡の
裏
(
うち
)
から夫の顔をしけじけ見詰めたぎりだそうだが、その時夫の胸の
中
(
うち
)
に
訣別
(
けつべつ
)
の時、細君の言った言葉が
渦
(
うず
)
のように
忽然
(
こつぜん
)
と
湧
(
わ
)
いて出たと云うんだが、こりゃそうだろう。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは万治三年に綱宗が罪を
獲
(
え
)
て、品川の屋敷に
遷
(
うつ
)
つた時、品は附いて往つて、綱宗に請うて一日の
暇
(
いとま
)
を得て、日道を始、親戚故旧を会して
馳走
(
ちそう
)
し、
永
(
なが
)
の
訣別
(
けつべつ
)
をしたと云ふ事実である。
椙原品
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
たといその中に、
訣別
(
けつべつ
)
という感傷が私の肉眼を多分に
歪
(
ゆが
)
めていたとしても——
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ルパンは下界の群衆に向って、
訣別
(
けつべつ
)
の大雄弁をふるった。無論相手に聞える訳ではない。仮令聞えたところで、日本の群衆にフランス語が分る筈はない。これはルパンの無邪気な癖なのだ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私の帆船が彼の島を立去る時、
豪毅
(
ごうき
)
朴直な此の独裁者は、殆ど涙を浮かべて、「彼を少しも欺さなかった」私の為に、
訣別
(
けつべつ
)
の歌をうたった。彼は其の島で唯一人の吟遊詩人でもあったのだから。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私はそれを、青春への
訣別
(
けつべつ
)
の辞として、誰にも
媚
(
こ
)
びずに書きたかった。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あの生活に妙な
落着
(
おちつき
)
と
訣別
(
けつべつ
)
しがたい愛情を感じだしていた人間も少くなかった筈で、雨にはぬれ、爆撃にはビクビクしながら、その毎日を結構たのしみはじめていたオプチミストが少くなかった。
続堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
死なんとする刹那、人の生理は、異常な機能を働かせて自己の通って来た全生涯に、平常の追想に似た
訣別
(
けつべつ
)
をなすものらしい。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
依
(
よ
)
ってこの手紙により私は
金力
(
きんりょく
)
を以って女性の人格的尊厳を無視する貴方に永久の
訣別
(
けつべつ
)
を告げます。私は私の個性の自由と尊貴を
護
(
まも
)
りかつ
培
(
つちか
)
うために貴方の
許
(
もと
)
を離れます。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
壕
(
ごう
)
にすみ、雨にぬれ、行きたくても行き場がないよとこぼしていたが、そういう人もいたかも知れぬが、然し、あの生活に妙な
落付
(
おちつき
)
と
訣別
(
けつべつ
)
しがたい愛情を感じだしていた人間も少くなかった筈で
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
さて約束が
極
(
き
)
まつた時、四郎左衛門は
訣別
(
けつべつ
)
のために故郷へ立つた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
血みどろな修行の
壇
(
だん
)
としてきた、叡山に対して、永遠の
訣別
(
けつべつ
)
を告げていたのであったが、送る人々は、なにも気づかなかった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
親愛な人々を見暮らす
根気
(
こんき
)
が尽きて、限りなく懐しみ乍ら
訣別
(
けつべつ
)
を急ごうとする広々とした
傷心
(
しょうしん
)
を抱き、それを
慈
(
いつく
)
しんで汽車に乗った。知る友のない海浜の村落へ来て、海を眺めた時、ほっとした。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
おなじ
館
(
たち
)
から今日半日の遊楽にみたされてぞろぞろ帰って行く老幼男女の影や散所芸人たちの群れをである。——介は、不思議な国をいま
訣別
(
けつべつ
)
してゆく感だった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
などと、それぞれ心から
訣別
(
けつべつ
)
の辞をのべに来て、銃器、弾薬、食糧などを、みな彼の陣へ、与えて行った。墓場へ花や
供物
(
くもつ
)
を捧げるように、置いて行ったのであった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はい」と、明瞭に答えて、父の面に、じっと
訣別
(
けつべつ
)
を告げていた。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真っ正直な彼は、どうかして曹操と会い、そして大丈夫と大丈夫とが約したことの履行によって、快く
訣別
(
けつべつ
)
したいものだと日夜苦しんでいたのであるが、いまはもう百年開かぬ門を待つものと考えた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“訣別”の意味
《名詞》
訣別(けつべつ 「決別」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
きっぱりと別れること。完全に離れること。
暇請いすること。
(出典:Wiktionary)
訣
漢検準1級
部首:⾔
11画
別
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
“訣別”で始まる語句
訣別演奏会