記臆きおく)” の例文
この話は最近読んだばかりだから、まだ記臆きおくには新しい方だ。色や光や臭いという方面から突込つっこむのも面白いが、この話は音の怪に属する。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
五年を経過した今日になってもなおあきらか記臆きおくしているのである、『竹の里人選歌』なども、先生存生中に自ら選び直さるるならばとにかく
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こと艇尾ていび兩瑞りようたん裝置さうちされたる六枚ろくまいつばさいうする推進螺旋スクリユー不思議ふしぎなる廻轉作用くわいてんさようあづかつてちからあること記臆きおくしてもらはねばならぬ。
始めから終りまで読むのに三時間かかった事を記臆きおくしている。今は「テレグラフ」を取っておらん、「スタンダード」だ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上等品と下等品とはこれほどの差があるとよく記臆きおくしておいて今度外で醤油を買うときに一々それと対照てりあわせて見るのです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ムスメはつひにうつむいたまヽ、いつまでも/\わたし記臆きおく青白あをじろかげをなげ、灰色はいいろ忘却ばうきやくのうへをぎんあめりしきる。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
しかし前日の母の教へを記臆きおくして居りましたから、まんざら吾儘わがまま慾張よくばつた様なことだけ其中そのうちありませんかつた。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
かくおもたせたまへとて、かみ迷惑氣めいわくげにもえずいざなふにぞ、それからんとてなつのさしりより、別室はなれざしき仮住かりずみ三月みつきばかりのしゝが、歸邸きてい今日けふいまなほのこ記臆きおくのもの二ツ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この低度の理屈すなわち最も簡単の知とは記臆きおく比較の類のごときものにして、いかなる純粋の文学的感情といえども多少の記臆力比較力を交えざる時は文学として成り立つものには無之候。
あきまろに答ふ (新字新仮名) / 正岡子規(著)
怪物くわいぶつといふものがあるならば、この軍艇ぐんていこそたしか地球ちきゆう表面ひやうめんおいて、もつとおそるべき大怪物だいくわいぶつとして、なが歐米諸國をうべいしよこく海軍社會かいぐんしやくわい記臆きおくとゞまるであらう。
宗教しゆうけう關聯くわんれんして宗助そうすけ坐禪ざぜんといふ記臆きおくおこした。むか京都きやうとにゐた時分じぶんかれ級友きふいう相國寺しやうこくじつて坐禪ざぜんをするものがあつた。當時たうじかれその迂濶うくわつわらつてゐた。「いまに……」とおもつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして少年せうねんのやぶれたこヽろはつくのはれたけれど、舞台ぶたいのうへで姫君ひめぎみのきられたといふことはわすれられない記臆きおくであつた。また赤毛布あかけつとうらをば、んだ姫君ひめぎみあるいたのも、不可思儀ふかしぎ発見はつけんであつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
今は一々いちいち記臆きおくに存していないのがはなはだ遺憾である。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
◎櫻木豫備海軍大佐の行衞==讀者どくしや記臆きおくせらるし、先年せんねんしゆ強力きやうりよくなる爆發藥ばくはつやく發明はつめいし、つゞいて浮標水雷ふへうすゐらい花環榴彈等くわくわんりうだんとう二三の軍器ぐんき有功いうこうなる改良かいりようほどこしたるをもつ
揺籃えうらん記臆きおく
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)