葡萄ぶだう)” の例文
(僕の見聞する限りでは)たとへばルナアルの「フイリツプ一家の家風」は(岸田国士氏の日本訳「葡萄ぶだう畑の葡萄作り」の中にある)
天道てんたうといふものはありがたいもんだ。春は赤く夏は白く秋は黄いろく、秋が黄いろになると葡萄ぶだうは紫になる。実にありがたいもんだ。」
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
麦と葡萄ぶだう青白あおじらんだ平野の面に赤と紫の美しい線をいろどるのは、野生の雛罌粟コクリコと矢車草とがすべての畦路あぜみちと路傍とをうづめて咲いて居るのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
我眼豆の如く、葡萄ぶだうの如くにして未だこれを發見せず。さいはひに今人が文を論じたる文數篇をたれば、一日千朶山房せんださんばう兀坐こつざして、いさゝか又これを論ず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ポンペイの街をやうやく見物してしまつて、ひる過ぎて入口のところの食店レストランで赤葡萄ぶだう酒を飲み、南伊太利イタリーむきの料理を食べて疲れた身心を休めてゐる。
ヴエスヴイオ山 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「へエ——オランダ渡りの葡萄ぶだうの酒。話には聞いたが、呑むのは初めて——それでは頂戴いたします、へエ——」
新らしく植付けられた林檎や葡萄ぶだう実桜さくらんぼの苗はいづれも面白いやうにずん/\生長おひのびて行つた。下作したさくとして経営した玉葱たまねぎやキャベツのたぐひもそれ/″\成功した。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
土蔵の屋根の上の棚にはしてある葡萄ぶだうの葉蔭から来るそよ風に吹かれながら、二階座敷に寝ころんでゐた私は、眠れもしないので、また下へおりて行つた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
表の間の天井のまん中からは、色テープが八方に引きまはされ、それには、葡萄ぶだうの葉や果がブラ下つたやうに、色さまざまの紙かざりがり下げてありました。
仔猫の裁判 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ひとつにでつちて、葡萄ぶだうふさ一粒ひとつぶづゝくちはないたやうで、手足てあしすぢ凌霄花のうぜんあざむく。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鳥の声や風の音や波のひびきなどをまねた音楽、それから、ロシヤの川船の船頭の歌、スイスの山のなかの樵夫きこりの歌、アルプスのふもとの羊飼ひつじかひの歌、フランスの田舎の葡萄ぶだうつみの歌
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
これを行けば、いくばくもあらぬに、穹窿きゆうりゆうの如く茂りあへる葡萄ぶだうの下に出づ。我等は渇を覺えぬれば、葡萄圃のあなたに白き屋壁の緑樹の間より見ゆるを心あてにあゆみをそなたへ向けたり。
葡萄ぶだう他人ひとすゝめられてたが、れも到底たうていかれ嗜好しかうあざむくことは出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
葡萄ぶだういろの秋の空はまた田舎の朝によろし。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
物足ものたるや葡萄ぶだう無花果いちじゆく倉ずまひ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
葡萄ぶだうふウさうウれたぞ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おかみさんは赤漆塗あかうるしぬりのはちの上にざるを置いて、をけの中から半分つぶれた葡萄ぶだうの粒を、両手にすくって、お握りを作るやうな工合ぐあひにしぼりはじめました。
葡萄水 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
店には小さい飾り窓があり、窓の中には大将旗を掲げた軍艦三笠みかさの模型のまはりにキユラソオの壜だのココアの罐だの葡萄ぶだうの箱だのが並べてある。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
びんの腰をわらで巻いた赤い葡萄ぶだう酒はうせ廉物やすものだらうが、巴里パリイで飲んだ同じ物より本場だけに快く僕を酔はせた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
葡萄ぶだういろの秋の空の、されど又さびしきよ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
水蜜桃すゐみつ葡萄ぶだう
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉髄ぎょくずゐのやうな、玉あられのやうな、又蛋白石たんぱくせきを刻んでこさへた葡萄ぶだうの置物のやうな雲の峯は、たれの目にも立派に見えますが、蛙どもには殊にそれが見事なのです。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
菊と一緒に果物の競進会も開かれて居るが、すもゝより大きい葡萄ぶだうのあるのは日本の子供に見せたい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのほか飾り窓の中の軍艦三笠も、金線サイダアのポスタアも、椅子も、電話も、自転車も、スコツトランドのウイスキイも、アメリカの葡萄ぶだうも、マニラの葉巻も、エヂプトの紙巻も、燻製くんせいにしん
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
葡萄ぶだういろの秋の空をあふげば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
畑の方の手があいて、こゝ二三日は、西の野原へ、葡萄ぶだうをとりに出られるやうになったからです。
葡萄水 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
仔牛はコツコツコツコツと葡萄ぶだうのたねをかみ砕いてゐました。
黒ぶだう (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
葡萄ぶだうをいっぱいとって来た、いゝだらう。
葡萄水 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
清作は、葡萄ぶだうをみんなしぼりあげ
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)