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葛藤
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かっとう
ふりがな文庫
“
葛藤
(
かっとう
)” の例文
この奇怪な心の
葛藤
(
かっとう
)
に加えて、葉子の健康はこの十日ほどの激しい興奮と活動とでみじめにもそこない傷つけられているらしかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
けれどその時間の長短は、その人たちには実に余儀ない推移で、思いきりや
諦
(
あきら
)
めでは到底満足されない生死の
葛藤
(
かっとう
)
が無論あったはずだ。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それが政治的な
葛藤
(
かっとう
)
を持ったりして、平家と戦うから、前の保元の時でも、ことしの平治の乱でも、手もなく敗れてしまったのだ。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しからばなんのためのこの両国の
葛藤
(
かっとう
)
ぞというに、ひっきょうは経済上における利害の衝突、これが両国不和の根本的原因である。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
逆
(
ぎゃく
)
に受くる
膝頭
(
ひざがしら
)
のこのたびは、立て直して、長きうねりの
踵
(
かかと
)
につく頃、
平
(
ひら
)
たき足が、すべての
葛藤
(
かっとう
)
を、二枚の
蹠
(
あしのうら
)
に安々と始末する。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
風習の圧抑への反抗心を主題とする
白浪物
(
しらなみもの
)
、——すべてそれらにおいて劇の
葛藤
(
かっとう
)
を生み出す根拠は、常に社会の一時的なる風習である。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
しかしその巧妙な律動的なモンタージュによって観衆の心の中の奥底には一つの
葛藤
(
かっとう
)
がだんだん発展し高調されて行くのである。
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
境に
黄泉比良坂
(
よもつひらさか
)
という名のあるのが不審なくらい、自由に人の世から
往
(
ゆ
)
き通う旅の神があり、また恋があり人情の
葛藤
(
かっとう
)
があった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私達の無言の
葛藤
(
かっとう
)
を乗せて、汽車はいつの間にか数十里の山河を走っていました。そして、間もなく河野の下車すべき駅に到着したのです。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それをまた後の、いたずらの心から、さる人によって、この供養が営まれた。いずれをいずれにしても、倒逆の
葛藤
(
かっとう
)
を免るることはできません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「青春は、友情の
葛藤
(
かっとう
)
であります。純粋性を友情に於いて実証しようと努め、互いに痛み、ついには半狂乱の純粋ごっこに落ちいる事もあります。」
みみずく通信
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
……その頃になると、高子と順一の長い間の
葛藤
(
かっとう
)
は結局、
曖昧
(
あいまい
)
になり、思いがけぬ方角へ解決されてゆくのであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そんな
葛藤
(
かっとう
)
なら、僕はもう
疾
(
と
)
っくに解決してしまっている。僕は画かきになる時、
親爺
(
おやじ
)
が見限ってしまって、現に高等遊民として取扱っているのだ。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
葉子の鎌倉日記に書いた氏との
葛藤
(
かっとう
)
、氏の病的や異常が
却
(
かえ
)
って葉子に氏をなつかしく思わせるのは何と皮肉であろう。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ああ、汝、
提宇子
(
でうす
)
、すでに悪魔の何たるを知らず、
況
(
いわん
)
やまた、天地作者の方寸をや。
蔓頭
(
まんとう
)
の
葛藤
(
かっとう
)
、
截断
(
せつだん
)
し去る。
咄
(
とつ
)
。
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この、消え失せたこけ猿の茶壺——耳が一つ
虧
(
か
)
けているので、耳こけ猿、こけ猿という……この壺の秘密をめぐる
葛藤
(
かっとう
)
が、本講談の中心でございます。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そうしているうちに自分でも
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らず神にまで引き上げられてゆく驚き、その心の
葛藤
(
かっとう
)
、——そういったものに何か胸をいっぱいにさせ出していた。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
単に情痴といって
嗤
(
わら
)
ってしまえないような、人間愛慾の
葛藤
(
かっとう
)
で、それが
娼婦型
(
しょうふがた
)
でないにしても、とかく二つ三つの人情にほだされやすいこの
稼業
(
かぎょう
)
の女と
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は自分が殆んど悪魔の底意地の悪さで痴川伊豆の
葛藤
(
かっとう
)
を血みどろの終局へ追いやろうとしている冷酷な潜在意識を読んだ。
併
(
しか
)
し驚きも
周章
(
あわて
)
もしなかった。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
が、眉山の家庭には気の毒な面倒臭い
葛藤
(
かっとう
)
が
絶間
(
たえま
)
なかったそうで、
何時
(
いつ
)
でも晴れやかな顔をして
駄洒落
(
だじゃれ
)
をいってる内面には人の知らない苦労が絶えなかったそうだ。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
またときどき彼はドイツにしばらく滞在した。しかし結局、そしてドイツとフランスの
葛藤
(
かっとう
)
の切迫してるにもかかわらず、彼をいつもひきつけるのはパリーであった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
是が非でもあの人と別れねばならんという考えと、どうしても別れることはできないという感情との
葛藤
(
かっとう
)
が妾に何もかも忘れさせ、判断する力を奪ってしまったのです。
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
六条の
御息所
(
みやすどころ
)
と先夫人の
葛藤
(
かっとう
)
が源氏を懲りさせたともいえることであった。御息所の立場には同情されるが、
同棲
(
どうせい
)
して精神的の融和がそこに見いだせるかは疑問である。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
百二歳の老人が親の代からと言うのだから、古い
葛藤
(
かっとう
)
に相違ない。但し税を払わないのを
村是
(
そんぜ
)
のように言ったのは何分百有二歳の老人だから、頭が
何
(
ど
)
うかしていたのだろう。
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
闇の女の
葛藤
(
かっとう
)
、脱走した犯罪者の末路、女を中心とする無頼漢の闘争というが如きメロドラマが流行し、いずこの舞台にもピストルの発射されないことはないようになった。
裸体談義
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
けれども夫婦間の心理
葛藤
(
かっとう
)
や肉躰的な消息は、単に言葉だけ追求しても役には立たない。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして宿命の避くべからざる
葛藤
(
かっとう
)
に触るるや直ちに、マリユスは
覚醒
(
かくせい
)
するであろう。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そしてまた、それらの諸事情によってかもし出された「運命」と「愛」との新しい
葛藤
(
かっとう
)
によって、「永遠」への彼の道が、これまでとはかなりちがった
様相
(
ようそう
)
を呈しはじめたという点で。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
かのグラッドストン氏のごときもとより一世の英豪といえども、エジプトの
葛藤
(
かっとう
)
、スーダンの遠征、往々その思うところを逞しゅうせざるゆえんのものはただ過去の抑圧あるがゆえなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
人間世界にありうちの卑しい考は少しもなかったのだから罪はないような者であるが、そこにはいろいろの事情があって、一枚の肖像画から一編の小説になるほどの
葛藤
(
かっとう
)
が起ったのである。
墓
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
対辞であれば、その間に早くも
葛藤
(
かっとう
)
が生じて、「無事」ではなくなる。
改めて民藝について
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ともあれ、大老は徳川世襲伝来の精神をささえていた
大極柱
(
だいこくばしら
)
の倒れるように倒れて行った。この
報知
(
しらせ
)
を聞く
彦根
(
ひこね
)
藩士の憤激、続いて起こって来そうな彦根と水戸両藩の
葛藤
(
かっとう
)
は寛斎にも想像された。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
丁度此の時、
扉
(
ドア
)
の
彼方
(
あなた
)
の寝台の上に、夢を破られた女は、親子の間の浅ましい
葛藤
(
かっとう
)
を、聞くともなく耳にすると、
其
(
その
)
美しい顔に、
凄
(
すご
)
い微笑を浮べると、雪のような
羽蒲団
(
はねぶとん
)
を又再び深々と、
被
(
かぶ
)
った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかもこの場合劇中人物のあらゆる事件│
葛藤
(
かっとう
)
は観客自身の利害と感情的にはとにかく事実的になんの交渉もないのであるから
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ともかく君はかかる内部の
葛藤
(
かっとう
)
の激しさに堪えかねて、去年の十月にあのスケッチ帳と真率な手紙とを僕に送ってよこしたのだ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかし何といっても、一人の男性を囲んで三人の女が共にせまい配所で起居するかたちは不自然な
葛藤
(
かっとう
)
以外なものではなかった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども、世の中で認めている偉い人とか高い人とかいうものは、ことごとく長火鉢や台所の卑しい人生の
葛藤
(
かっとう
)
を超越しているのだろうか。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寧ろ
混淆
(
こんこう
)
せられている。小説も出来る事なら、そんな風に二つの部分があらせたい。そしてその二つの部分の
反応
(
はんおう
)
、
葛藤
(
かっとう
)
、調和を書くことにしたい。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ごらんなさい、総ての人間界の浅ましい
葛藤
(
かっとう
)
のすべては、みんなこの所有という悪魔の巧妙な眩惑のわなにひっかかったその結果じゃありませんか。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
庄太郎を外にして、そんな立場の人物が存在するであろうか。それに悪いことは、弟の奥村二郎が、彼等の間の恋の
葛藤
(
かっとう
)
をよく知っていたことである。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
其処に人世の暗いものと、心の
葛藤
(
かっとう
)
とがなければならない。結びついて
絡
(
から
)
まった、ついには身を殺されなければならない悲劇の要素があったに違いない。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
かくのごとくにして英独両国の
葛藤
(
かっとう
)
は結びて久しく解けず、ついに発して今次の大戦となるに至りしものである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
この男は自分の立場を弁証する積りか、何彼につけて夫婦者を
貶
(
けな
)
す。家庭を
修羅場
(
しゅらば
)
のように言う。夫婦生活は一人の男と一人の女の
葛藤
(
かっとう
)
の外に何にもないように思っている。
髪の毛
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ただ山城
蟹旛寺
(
かにはでら
)
の
縁起
(
えんぎ
)
などにおいては、外部の救援が必要であったに反して、こちらはかよわい小娘の智謀一つで、よく自ら
葛藤
(
かっとう
)
を脱しえた点を、異なれりとするのみである。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それから二、三日は、また仲をよく暮らすのであるが、後からじきに
些細
(
ささい
)
な
葛藤
(
かっとう
)
が起きる。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんな小さな
葛藤
(
かっとう
)
までが、なにか皮肉な現代史の一場面のように、僕たちの目に映った。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
が、芸術となると二葉亭はこの国士的性格を離れ
燕趙
(
えんちょう
)
悲歌的傾向を忘れて、天下国家的構想には少しも興味を持たないでやはり市井情事のデリケートな心理の
葛藤
(
かっとう
)
を題目としている。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
お願いしたいのは、私がこれを人間的
葛藤
(
かっとう
)
の
比喩
(
ひゆ
)
に使っていると思っていただきたくないことである。これは事実そのままを語っているのであり、現実に「あった」ことなのである。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
婦人たちはただその情熱を訴えることに急であって、その情緒の複雑さを分析し描写する余裕を持たなかったが、しかしそれは複雑な心の
葛藤
(
かっとう
)
を経験しなかったということではない。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
他日自分たちがはいってゆき、昔攻撃したあらゆる偏見と妥協しながら、世間普通の生活を静かに営むようになるだろうとわかってるような社会とは、
葛藤
(
かっとう
)
を結ぶ気はさらになかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
葛
常用漢字
中学
部首:⾋
12画
藤
常用漢字
中学
部首:⾋
18画
“葛”で始まる語句
葛籠
葛
葛西
葛城
葛飾
葛湯
葛餅
葛布
葛根湯
葛野