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腰障子
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こししやうじ
土の
上に
散らばつてゐる
書類を
一纏にして、
文庫の
中へ
入れて、
霜と
泥に
汚れた
儘宗助は
勝手口迄持つて
來た。
腰障子を
開けて、
清に
ト
日があたつて
暖たかさうな、
明い
腰障子の
内に、
前刻から
靜かに
水を
掻𢌞す
氣勢がして
居たが、ばつたりといつて、
下駄の
音。
其所にも
摺硝子の
嵌まつた
腰障子が二
枚閉ててあつた。
中では
器物を
取り
扱ふ
音がした。
宗助は
戸を
開けて、
瓦斯七輪を
置いた
板の
間に
蹲踞んでゐる
下女に
挨拶をした。
向うて
筋違、
角から二
軒目に
小さな
柳の
樹が一
本、
其の
低い
枝のしなやかに
垂れた
葉隱れに、一
間口二
枚の
腰障子があつて、一
枚には
假名、一
枚には
眞名で
豆腐と
書いてある。
……
行くと、
腰障子の、すぐ
中で、ばちや/\、ばちやり、ばちや/\と
音がする。……
御米は
其時もう
框から
下り
掛けてゐた。すぐ
腰障子を
開ける
音がした。
宗助は
其音を
聞き
送つて、たつた
一人火鉢の
前に
坐つて、
灰になる
炭の
色を
眺めてゐた。
彼の
頭には
明日の
日の
丸が
映つた。
商に
出た
留守の、
晝過は
森として、
柳の
蔭に
腰障子が
閉まつて
居る、
樹の
下、
店の
前から
入口へ
懸けて、
地の
窪むだ、
泥濘を
埋めるため、
一面に
貝殼が
敷いてある、
白いの、
半分黒いの、
薄紅