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突嗟
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とっさ
ふりがな文庫
“
突嗟
(
とっさ
)” の例文
味方の士気を奮い立たすような正しい言葉を——
機微
(
きび
)
適切な
突嗟
(
とっさ
)
に——いえるような侍ならば、それはよほど千軍万馬往来の士か
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
林は確にエリスがやったのだと思った。
突嗟
(
とっさ
)
の場合にも、彼はどうかしてこの犯罪を隠蔽して、哀れなエリスを救わねばならぬと焦った。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
多計代は、
突嗟
(
とっさ
)
にそれを口に出して議論するだけまとまった反撥のよりどころを伸子に対してもっているわけではないのだった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ひょいとズックの
手提鞄
(
てさげかばん
)
のようなものを目に入れて、ずかずかと入っていって、
突嗟
(
とっさ
)
に旅行の決心をして、それを買い求めた。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
これぞ天の助くるところと、甚内は
突嗟
(
とっさ
)
に思案を決めると、パッと雨戸へ飛びかかり、引きあける間ももどかしく
家内
(
なか
)
へはいって戸を立てた。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
突嗟
(
とっさ
)
に、その女中の話をきいて、これは夫がいきなりこの離れ家にやって来るに相違ないと想像し、いそいでその中の人間を裏口から出して
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
その時、笠森仙太郎は、窓のところに近寄って、幸い窓に背を向けた丹波丹六のうしろから
突嗟
(
とっさ
)
の間に這い上りました。
奇談クラブ〔戦後版〕:11 運命の釦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は
突嗟
(
とっさ
)
に、少しウロ/\した様子をし、それから帽子に手をやって、「S町にはこっちでしょうか——それとも……」
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「ええ。じゃ、もっと歩きましょう」と私の心の奥にあるものが、私の理性を押しのけて
突嗟
(
とっさ
)
の間に答えてしまった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
決して皮肉の意味からではない。
突嗟
(
とっさ
)
に、つひしてしまつたのであるが、それに多少にやにや笑つてゐたかも知れないが、微塵も悪意はなかつたのである。
山の貴婦人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
が、さすがはこれまで
幾度
(
いくたび
)
となく扮装したことのある京山ですから、
突嗟
(
とっさ
)
の間に、ある考えを思いつきました。
稀有の犯罪
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それを
突嗟
(
とっさ
)
の間に自分の手許から袖の中にでもかくしたのだ、としたら……事件が解って人々が騒ぎはじめる。
撞球室の七人
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
その声はまるで氷の上へばらばらと
礫
(
こいし
)
を投げたように、彼の寂しい真昼の夢を
突嗟
(
とっさ
)
の
間
(
あいだ
)
に打ち砕いてしまった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は
突嗟
(
とっさ
)
に起ちあがって、電報を握ったまま暗い石段を駈け下り、石段の下で娘に会ったが同じことを言って、夢中で
境内
(
けいだい
)
を抜けて一気にこぶくろ坂の上まで走った。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
山のような岩の大塊のかげに、
蒼白
(
まっさお
)
にぶるぶる顫えている幽霊のような顔が二ツ三ツちらちらしたばかりだ。「これだけしか生き残らなかったんだ!」
突嗟
(
とっさ
)
に井村は思った。
土鼠と落盤
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
不慮の驚きに
動顛
(
どうてん
)
したとは言っても、
突嗟
(
とっさ
)
にそのような空想を描くようなかれらでない。
幻覚の実験
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
自分は
突嗟
(
とっさ
)
に、この夏の苦しいあの出来事があたまに殺到して浮んできたのであった。
或る少女の死まで
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それに
何
(
ど
)
うもこの怪談というやつは
再聞
(
またぎき
)
のことが多い。その中でもまだあまり人に話したことのない比較的最も深い印象を与えられたものというと、
突嗟
(
とっさ
)
の場合
先
(
ま
)
ずこの二題を
推
(
お
)
す。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
村瀬が胸をのめらせて枕に
縋
(
すが
)
りついた。明子は
突嗟
(
とっさ
)
に自分の両手で吐かれる血を受けた。彼女は血だらけになつた両手を村瀬の口に押しつけながら、顔すれすれに近づけてささやいた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
遊びではないように高飛車に出た少年のその無智無思慮を自省せぬ点を
憫笑
(
びんしょう
)
せざるを得ぬ心が起ると、殆どまた同時に引続いてこの少年をして
是
(
かく
)
の如き語を
突嗟
(
とっさ
)
に発するに至らしめたのは
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
雪之丞の頭の中では、
突嗟
(
とっさ
)
にこうした懸念が、火花を散らして渦を巻いた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
すなわちただ敵を
斫
(
き
)
ろう、前に進もうという考えで
齷齪
(
あくせく
)
するあいだは、勝つことも進むこともおぼつかない、しかるに一歩一寸
退
(
しりぞ
)
く余裕があれば、その
突嗟
(
とっさ
)
に敵の
隙
(
すき
)
がわかる。そこで勝てる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私は
突嗟
(
とっさ
)
に富士登山の
杖
(
つえ
)
が浮いてるのをとって、窓の外の弟にわたした。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
さすがに、まさかこんな時、
突嗟
(
とっさ
)
に口に上ろう、とは思うて居なかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
呉用が大きく
頷
(
うなず
)
いた
突嗟
(
とっさ
)
である。またも末座から
剽軽
(
ひょうきん
)
な声で、「——ほいッ、御用とございますなら、あっしを忘れちゃいけませんぜ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのとき
突嗟
(
とっさ
)
に——どうしてもそう考えてやったとは思われないほど突嗟に——ずかずかと簾の方に近づいて、それに手をかけそうにせられた。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「あぶない!」と彼はその
突嗟
(
とっさ
)
、自分の心を
緊張
(
ひきし
)
めた。「考えてはいけない考えてはいけない。無念無想、一念透徹、やっつけるより仕方がない」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私はその時私たちのような仕事をしているものゝみが持っているあの「予感」を
突嗟
(
とっさ
)
に感じて、——「あ
直
(
す
)
ぐだ」と云って、ザブ/\と顔を洗った。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
泉原の
周囲
(
まわり
)
の人々は一斉に振返って、奇声をあげた小さな日本人を不思議そうに
瞶
(
みは
)
っている。泉原は
突嗟
(
とっさ
)
の間に
雑沓
(
ざっとう
)
の間を縫ってM駅行の切符を
購
(
か
)
った。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
寝馴れた自分の部屋の中だのに、ひろ子は自分の頭がどっちを向いているか、
突嗟
(
とっさ
)
にはっきりしなかった。
乳房
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
が、それにしてもこのままでは余りにも
身窄
(
みすぼ
)
らしい。
突嗟
(
とっさ
)
の間にも私はこう思いついた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
よく
浄瑠璃
(
じょうるり
)
や
琵琶
(
びわ
)
の曲などに、「襷十字にあやどりて」という文句を聴くが、是は婦人が
突嗟
(
とっさ
)
の場合に仮に働けるなりを作るためにするので、常は襷はそうして用いるものでない故に
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
碧
(
あお
)
い
単衣
(
ひとえ
)
に赤い帯も印象的ですが、それよりもほの白く清らかな頬や、霞む眉や、少し脅えては居たが、聡明らしい眼が、
突嗟
(
とっさ
)
の間ながら、平次に素晴らしい印象を与えてくれたのです。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
然し其時の闘は如何にも
突嗟
(
とっさ
)
に急激に敵が
斫入
(
きりい
)
ったので、氏郷自身まで
鎗
(
やり
)
を取って戦うに至ったが、事済んで営に帰ってから身内をばあらためて見ると、
鎧
(
よろい
)
の
胸板
(
むないた
)
掛算
(
けさん
)
に
太刀疵
(
たちきず
)
鎗疵
(
やりきず
)
が四ヶ処
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と、
突嗟
(
とっさ
)
に悟って、匕首に手を掛けてお初
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
お小夜は、抱えていた装束台を、小袖ぐるみ、相手の
面
(
おもて
)
へ投げつけて、次の
突嗟
(
とっさ
)
に、短い刃を抜くや否、身を
挺
(
てい
)
して、斬りつけて行った。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は
突嗟
(
とっさ
)
にドギついて、それでも「何んしろ、その……」と笑いながら云いかけると「まだ若いからでしょう?」と、おばさんは
終
(
しま
)
いをとって、笑った。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
突嗟
(
とっさ
)
に思案が浮かばなかった。と云って落ち着いてはいられなかった。防がなければならなかった。そうしなければ、捕えられるだろう。捕えられたら殺されるだろう。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
母が
突嗟
(
とっさ
)
に立って、早く雨戸をおしめ、抑えつけた緊張した声で云うなり、戸袋のところへ走って行った。私は、戸袋から母がくり出す雨戸を出来るだけ早く馳けて押した。
からたち
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それから、証拠が聴き度いと言われるなら、言ってしまいましょう、これは彼女——阿修羅も気が付かなかったかも知れませんが、——最後の晩ライターの光で、
突嗟
(
とっさ
)
の間に私は彼女の大きな目印を
法悦クラブ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
男は
彼方
(
かなた
)
の廃院へでも急ぐのか、ふンとまた、鼻で笑いすてて歩き出した。その
虚
(
きょ
)
や狙うべしと思ったか、智深は
突嗟
(
とっさ
)
に
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
突嗟
(
とっさ
)
のことで、船長は
棒杭
(
ぼうぐい
)
より、もっとキョトンとした。然し、すぐ彼は自分の立場を取り戻した。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
何か宏子に言葉をかけようとした
突嗟
(
とっさ
)
にやっぱり母らしい文句しか出ず、ただそれを今朝は
雑沓
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
然
(
しか
)
るに私はそうとは思わず、耳飾を盗みは盗んだものの、後から閣下が追跡するので、隠し所に困まったあげく、
突嗟
(
とっさ
)
にそれを飼葉に混ぜて、牛に食わせたと斯う思いました。
闘牛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうで無いまでも、手が廻ったと知ったら、百万円入のトランクを、
自棄
(
やけ
)
半分川へ投げこまないものでもありません。
突嗟
(
とっさ
)
に思案を
定
(
き
)
めて、川蒸気の屋根から橋の下へ飛付いたのはそうしたわけです。
悪人の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは、役人より早く、女たちの眼を、
吃驚
(
びっくり
)
させた影だった。みんなが、きゃっといって、逃げる
突嗟
(
とっさ
)
に、兵部の後ろへ廻って、
屈
(
かが
)
み
込
(
こ
)
んだのである。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
斯うして彼等は月光の下を鹿のように早く走ったが、小丘の頂上まで来た時に、
目下
(
めのした
)
に見える二軒の
家
(
うち
)
の其一軒の背戸畑の辺で
拳銃
(
ピストル
)
の音の起こったのを
突嗟
(
とっさ
)
にハッキリ耳にした。
死の復讐
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
伯父の顔の上にぶつけるような気で、杉子は
突嗟
(
とっさ
)
に伊田を紹介しようと思った。
杉子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その
示唆
(
しさ
)
を、下野の顔つきから、読み取ろうとするのかも知れなかった。そういう
突嗟
(
とっさ
)
の機謀は非常にするどい大将だとは下野もかねて聞いているところである。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
スルスルと前方へ走って行く者が、美作であるということと美作の正面にお粂がいて、脇差しをあぶなさそうに青眼に付けて、立っているのとを
突嗟
(
とっさ
)
に感じて、紋也がお粂へ注意をしたのであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
突
常用漢字
中学
部首:⽳
8画
嗟
漢検1級
部首:⼝
13画
“突”で始まる語句
突
突然
突立
突込
突出
突飛
突如
突兀
突伏
突張