祈念きねん)” の例文
ふと庭前を見ると、そこにおおきな岩がある。玄徳はじっと見ていたが、何思ったか、天に祈念きねんをこらし、剣を抜いて振りかぶった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎々つねづね申され候事に、神道を明白に人々の腹へ入る如く書を著し、 天朝より開板して天下へ御頒示はんじされたしとしきり祈念きねん仕り居られ候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
神々かう/″\しき朝日あさひむかつて祈念きねんこらしたこともあつたのです。ふとおもあたつたときにはかれおもはずをどあがつてよろこんださうです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人間の罪をひとりに引受けた孤獨の老僧と見立てるにれよ、祈念きねんつとめるにれの木、潮風はゴモラびとの涙よりからい。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かさねしも女房お光が忠實敷まめ/\しく賃裁縫ちんしごとやら洗濯等せんたくなどなしほそくも朝夕あさゆふけむりたてたゞをつとの病氣全快ぜんくわいさしめ給へと神佛へ祈念きねんかけまづしき中にも幼少えうせうなる道之助の養育やういく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
千代ちいちやんひどく不快わるくでもなつたのかいふくくすりましてれないかうした大変たいへん顔色かほいろがわろくなつてたおばさん鳥渡ちよつと良之助りやうのすけこゑおどかされてつぎ祈念きねん
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このたびの日光御造営がつつがなく終わるように祈念きねんらすだけがわたしの務めさ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
先ほどから、ジュリアの身体より遠くの方に遠慮していた雁金検事と大江山捜査課長とは、このとき目交めくばせをすると、静かにジュリアの枕許まくらもとに歩をうつして、ジュリアの冥福を祈念きねんした。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分みずからなせしわざとは思はず、祈念きねんこらせる神仏しんぶつがしかなさしめしを信ずるなり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それがしは当時退隠たいいん相願い、隈本くまもとを引払い、当地へ罷越まかりこし候えども、六丸殿の御事おんこと心にかり、せめては御元服げんぷく遊ばされ候まで、よそながら御安泰を祈念きねん致したく、不識不知しらずしらずあまたの幾月を相過あいすごし候。
石入いしいりの指輪の輝く華奢きやしやな兩手を合はして暫く祈念きねんした。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
この言大いにわが志を得たり。吾の祈念きねんこむる所は、同志の士甲斐甲斐かいがいしく吾志を継紹けいしょうして尊攘の大功を建てよかしなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かけ用人無事に紀州表の取調とりしら行屆ゆきとゞき候樣丹誠たんせいこらし晝は一間に閉籠とぢこもりて佛菩薩ぶつぼさつ祈念きねんし別しては紀州の豐川とよかは稻荷いなり大明神だいみやうじん遙拜えうはいし晝夜の信心しんじんすこしも餘念よねんなかりしにかゝる處へ伊豆守殿より使者ししや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……それも本意ほいなさのひとつであつた。が、あらためて祈念きねんした。やうなわけで、へんであつたらう。見上みあげるやうな入道にふだうが、のろりとしつはひつてた。づんぐりふとつたが、年紀としは六十ばかり。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
源蔵は、こみ上げる不安と祈念きねんを、歯に噛みしめて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔し矢部駿州は桑名侯へ御預けの日より絶食して敵讐てきしゅうのろいて死し、果して敵讐を退けたり、今足下そっかも自ら一死を期するからは祈念きねんめて内外の敵を払われよ、一心を
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)