眼元めもと)” の例文
香織かおりわたくしよりは年齢としが二つ三つわかく、顔立かおだちはあまりくもありませぬが、眼元めもとあいくるしい、なかなか悧溌りはつでございました。
おほきなそろへて、ふすまかげからはひつて宗助そうすけはういたが、二人ふたり眼元めもとにも口元くちもとにも、いまわらつたばかりかげが、まだゆたかにのこつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と彼は微笑して言った、その眼元めもとには心の底にひそんで居る彼のやさしい、正直な人柄の光さえ髣髴ほのめいて、自分には更にそれいたましげに見えた、其処そこで自分もわらいを含み
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いろのくつきりとしろい、口元くちもと父君ちゝぎみ凛々りゝしきに眼元めもと母君はゝぎみすゞしきを其儘そのまゝに、るから可憐かれん少年せうねん
この人若いに似合にあわ沈着おちついたちゆえ気をしずめて、見詰めおりしが眼元めもと口元くちもと勿論もちろん、頭のくしから衣類までが同様ひとつゆえ、始めて怪物かいぶつなりと思い、叫喚あっと云って立上たちあが胖響ものおと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
髪の結様ゆいようどうしたらほめらりょうかと鏡にむかって小声に問い、或夜あるばん湯上ゆあがり、はずかしながらソッと薄化粧うすげしょうして怖怖こわごわ坐敷ざしきいでしが、わらい片頬かたほに見られし御眼元めもと何やらるように覚えて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
膝の上になか繰弘くりひろげたる文は何の哀れを籠めたるや、打ち見やる眼元めもとに無限のなさけを含み、果は恰も悲しみに堪へざるものの如く、ブル/\と身震ひして、丈もて顏を掩ひ、泣音なくねを忍樣いぢらし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
るところお年齢としはやっと二十四五、小柄こがら細面ほそおもての、たいそううつくしい御縹緻ごきりょうでございますが、どちらかといえばすこしずんだほうで、きりりとやや気味ぎみ眼元めもとには
貴方あなたも相変らず呑気のんきな事をおつしやるのね」とたしなめた。けれども其眼元めもとにはわらひかげうかんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兵曹へいそうわたくしとは、うや/\しく敬禮けいれいほどこしつゝ、ふと、其人そのひとかほながめたが、あゝ、この艦長かんちやう眼元めもと——その口元くちもと——わたくしかつ記臆きおくせし、誰人たれかのなつかしいかほに、よくも/\ことおもつたが