看破みやぶ)” の例文
白「道徳高き名僧智識は百年先の事を看破みやぶるとの事だが、貴僧あなたの御見識誠に恐れ入りました、きましてわたくしが済まない事が出来ました」
翌る朝、草川巡査に報告に行った時には、まさかこんな田舎の駐在所に居るッポコ巡査に、看破みやぶられるような心配はあるまい。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一人大岡越前守のみ夫が邪曲じやきよくうかゞしり身命しんめい投打なげうち既往きわう今來こんらいを尋ね遂に奸計かんけい看破みやぶつて處刑しよけいせしといふ有名いうめいの談話にてかゝる奸物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうして、政吉は昨夜どこへも行かないとふるえ声で申し立てた。そのおどおどしている様子で、半七はそれが嘘であることをすぐ看破みやぶった。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「だがな、八。俺にも隱してある役札がもう一枚あるよ。それは、大した事ぢやないが、お玉は女ぢやないと看破みやぶつたことさ」
素性すじょう看破みやぶられ、数日にわたる執拗な追跡に、最早もはや逃亡の気力も失せたので、博士に手柄を立てさせるよりは、自ら一命を絶つ決心をしたのだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
若い時分から勤王家の運動に心を寄せていることを家中のだれよりも先に看破みやぶったくらいのおまんだから、今さら半蔵がなすべきことをなして
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おんなたちは、目が高いと言っていいか、低いと言っていいか、主水之介をそれと看破みやぶって成田屋、おいらん、二人が取巻きの川涼みと思ったらしく
なお心耳しんじのある名将となると、いかに上手じょうずが吹いても、敵の看破みやぶり、虚実を察し、鋭鈍えいどんはかり、決して、その耳をあざむくことはできないという。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畜生、小僧め、看破みやぶったなあ、もうこうなれば何ももぶちまけてやる。おれは復讐に来たんだ。サルビヤ号事件では、よくもよくもおれをやっつけたな。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
福介や、とうとう鬼唐人きとうじんのからくりを看破みやぶってくれた。ひとを馬鹿にしやがッて、実にどうも飛んでもない野郎だ。
夫人とお延の間柄を、内面から看破みやぶる機会に出会った事のない津田にはまたその言葉を疑う資格がなかった。彼は大体の上で夫人の実意を信じてかかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いまいましき門閥、血統、迷信の土くれと看破みやぶりては、わが胸のうちに投げ入るべきところなし。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それはつまり疑っとるからだ。それに君は君の隣の男の変装を看破みやぶる事が出来ない。詰り信じとるからだ。信じているのと疑っているのと程、結果に影響するものは少いな。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
拈り廻して「何にしても此青い封蝋が大変な手掛りだ何うかして看破みやぶらねば」との声を洩せり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
なるほどそこにはジャヴェルと、自分を知ってる古い囚徒のブルヴェー、シュニルディユー、コシュパイユがいるだろう。しかし確かに彼らは自分を看破みやぶることはできまい。
私はどんなに気取ってみたところで必ず看破みやぶられるにきまっている。それこそ、尨犬むくいぬの正体見たり小悪魔、ということになり、私は足蹴にされるかも知れない。大学生は鬼門である。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
そうして見ると、私の嘘は看破みやぶられたのではなかった。が、お前のそういう誤解が、私を苦しめたのは、それ以上だった。むしろ、そんな薄情なやつになるより、嘘つきになった方がましだ。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
お前に看破みやぶられるかと思って、ずいぶん用心したよ。お前が手紙の封をきったことも、鍵穴からのぞいていたこともよく知っていたさ。この効果を見るために僕は四十日間狂言をしていたんだ
玄鶴は彼の計画も甲野の為に看破みやぶられたのを感じた。が、ちょっとうなずいたぎり、何も言わずに狸寝入たぬきねいりをした。甲野は彼の枕もとに婦人雑誌の新年号をひろげ、何か読みけっているらしかった。
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのただ一親戚しんせきなる川島家は富みてかつ未亡人の覚えめでたからざるにもあらざれど、出すといえばおくびも惜しむ叔母おばの性質を知れる千々岩は、打ち明けて頼めば到底らちの明かざるを看破みやぶ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
あの天一坊てんいちぼうも、この、またたきもしない眼に看破みやぶられたのである。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は、運転手に、心の中を看破みやぶられたような気がした。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ですから万一、今のようなお話をお聞きになった暁には、いつドンナ処から自分の正体を看破みやぶられるかわからない。警戒の仕様がないでしょう
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その秘密は半七に看破みやぶられたばかりか、あわせて千次郎の秘密までもさらけ出されたので、お登久は急に口惜くやしくなった。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
マアそう云った理窟じゃねえか。貴様が余計なおせっかいをして、俺の正体を看破みやぶったのが運の尽きというものだ。自業自得とあきらめるがいいのさ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そう道誉にも看破みやぶられていた尊氏の気の弱い顔の暗さは翌日までもつづいていた。どこか体の病症でも感じているのか、物にかれた人のようでもあった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岡見の口吻くちぶりで見ると、磯子の組の生徒の中には教師としての捨吉を見つめているような可成かなり冷い鋭い眼が光っている。その眼が先ず捨吉の秘密を看破みやぶったとある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
マッカレーが真珠塔が欲しいと云うので之幸これさいわいと、模造品を商会に造らせ、売り込もうとしたがマッカレーに看破みやぶられ止むなく宅へ持ち帰ったが、八万円もヒド工面でこしらえたので
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
大「えゝとうより此の密書が拙者の手に入って居りますが、余人よじんに見せては相成らんと、貴方の御心中を看破みやぶって申し上げます、どうか罪に陥らんようにお取計いを願いとうござる」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乳房を——いいえ、女である事を看破みやぶられましたが運のつき、——その場にいとしい念日様をくくしあげて、女犯にょぼんの罪を犯した法敵じゃ、大罪人じゃと、むごい御折檻ごせっかんをなさいますばかりか
頭に蝋燭はいたゞかねど見る人毎を呪うとは恐ろしくも忌わしき職業なり立派と云う所を云えば斯くまで人に憎まるゝを厭わず悪人を看破みやぶりて其種を尽し以て世の人の安きを計る所謂いわゆる身を殺して仁を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
いまいましき門閥、血統、迷信の土くれと看破みやぶりては、我胸の中に投入るべきところなし。いやしき恋にうき身やつさば、姫ごぜの恥ともならめど、この習慣ならわしにいでむとするを誰か支ふべき。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ついでにこの船の秘密を看破みやぶってやれという気になってここまで降りて来たのは、いい度胸だったかも知れないが、そいつがドウモ感心しなかったね。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして、それとはこっちも看破みやぶって親房のウラを掻くつもりでは、またいつも尊氏は、自身を泥沼にのたうってしまう破目をまぬがれなかったものである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深い窓にのみこもり暮らしているような継母のおまんが、しかも「わたしはもうおばあさんだ」を口癖にしている五十四歳の婦人で、いつのまに彼の志を看破みやぶったろうとも考えて見た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは変装は横から見ると看破みやぶやすいと云う事である。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
玲子さん……僕は今のお母さんが初めてこのうちに来られた時からこのひとはイケナイ人だ……玲子さんのためにならない人だということを看破みやぶっていたのです。
継子 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何進の側臣たちは、即座に十常侍らの陥穽かんせい看破みやぶって諫めた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまち木村君に看破みやぶられたらしいのです。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「駄目だよ。浦塩うらじおの一粒りを十七人も並べれあ、どんな盲目めくらだって看破みやぶっちまわア」
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……でも叔父でなければどうしてそんな事まで看破みやぶりましょう。……叔父がいつもこうして妾を見張っていてくれる事がわかりますと、妾は有り難いやら、恐ろしいやら致しました
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一つ残らず看破みやぶられているような気がして、一層身体を縮み込ませた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)