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ガスとう
ふりがな文庫
“
瓦斯燈
(
ガスとう
)” の例文
新字:
瓦斯灯
そして間をおいて青白い
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の
点
(
とも
)
っている右側の敷石の上を歩いてゆくと、突然前方の暗闇から自動車が
疾走
(
はし
)
ってきて、彼の横を通り過ぎた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
最早
(
もはや
)
十一時をや過ぎけん、モハビツト、カルヽ街通ひの鉄道馬車の軌道も雪に埋もれ、ブランデンブルゲル門の
畔
(
ほとり
)
の
瓦斯燈
(
ガスとう
)
は寂しき光を放ちたり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
お杉は漆喰の欄干にもたれたまま片手で額を
圧
(
おさ
)
えていた。彼女の傍には、豚の骨や吐き出された砂糖黍の噛み
粕
(
かす
)
の中から
瓦斯燈
(
ガスとう
)
が傾いて立っていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
小女
(
こむすめ
)
は左へ曲って林の中へ入った。
微暗
(
うすくら
)
い
木立
(
こだち
)
の間にはそこここに
瓦斯燈
(
ガスとう
)
が
点
(
とも
)
って、ぽつぽつ人が通っていた。
白粉
(
おしろい
)
をつけた怪しい女も通って往った。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「あの、
一
(
ひ
)
イ
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
イ……四つ目の
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の出てるところだよ。
松葉屋
(
まつばや
)
と書いてあるだろう。ね。あの
家
(
うち
)
よ。」
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
月
(
つき
)
のない
坂
(
さか
)
を
上
(
のぼ
)
つて、
瓦斯燈
(
ガスとう
)
に
照
(
て
)
らされた
砂利
(
じやり
)
を
鳴
(
な
)
らしながら
潛戸
(
くゞりど
)
を
開
(
あ
)
けた
時
(
とき
)
、
彼
(
かれ
)
は
今夜
(
こんや
)
此所
(
こゝ
)
で
安井
(
やすゐ
)
に
落
(
お
)
ち
合
(
あ
)
ふ
樣
(
やう
)
な
萬一
(
まんいち
)
はまづ
起
(
おこ
)
らないだらうと
度胸
(
どきよう
)
を
据
(
す
)
ゑた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
隣りの文房具店の前へ来るとしばらく店口の飾りを眺めていたが戸を押し開けてはいって行った。眩しいような
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の下に所狭く並べた絵具や手帳や封筒が美しい。
まじょりか皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それは街に青い
瓦斯燈
(
ガスとう
)
がまたたき出した頃で、職人がその一日の仕事を終えてその木の馬や鳥や、それからそのコーモリの弟である沢山のコーモリなどをかたづけてから
おもちゃの蝙蝠
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
広い通りへ出ると、両側の
妓楼
(
ぎろう
)
の二階や三階に薄暗い
瓦斯燈
(
ガスとう
)
が
点
(
とも
)
れて、人影がちらほら見えた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
瓦斯燈
(
ガスとう
)
に大きい
蛾
(
が
)
がひとつ、ピンで留められたようについている。ふと見ると、ベンチにあの人がいる。私の散歩の癖を知っているから、ここで待ち伏せていたのであろう。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
女は馬車の隅に、楽に身を寄せて、車の心地好く滑って行くのを喜び、夜の薄明りと、ひらめく
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の明りとの間を出没する、種々の事物の移り変るのを眺めて楽しんだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
そこから間もなく、西洋人の名札の出た、白いペンキ塗りの、小さい
平家
(
ひらや
)
だての西洋館の前を通つて一寸行くと、右手の杉垣のつゞきの中に、青木さんのお家の
瓦斯燈
(
ガスとう
)
が見えた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
一寸
(
ちょっと
)
不思議な気がする、——その便所の
廂
(
ひさし
)
へ
瓦斯燈
(
ガスとう
)
がさびしく
点
(
とも
)
れていた。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
日本橋に一軒という
稀
(
まれ
)
なものであったが、それが
瓦斯燈
(
ガスとう
)
に変り、電燈に移って今日では五十
燭光
(
しょっこう
)
でもまだ暗いというような時代になって、ランプさえもよほどの
山間僻地
(
さんかんへきち
)
でも全く見られない
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
トム公は、足を宙にバタバタさせながら、水上警察署の青い
瓦斯燈
(
ガスとう
)
を見た。馬車はその門の中へ、半分はいっていた。馭者は、石段の上の扉を半分押して、内部の巡査へ応援をさけんでいる。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古き
槻
(
けやき
)
が巨人の腕を張つた様に茂つてる陰に『篠田』と書いた
瓦斯燈
(
ガスとう
)
が一道の光を放つてるヂヤないか、アヽ此の戸締もせぬ自由なる家の
裡
(
うち
)
に、
彼
(
か
)
の燃ゆるが如き憂国愛民の情熱を
抱
(
いだい
)
て先生が
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
覆
(
おお
)
いかかった葉柳に蒼澄んだ
瓦斯燈
(
ガスとう
)
がうすぼんやりと照しているわが家の黒門は、
固
(
かた
)
くしまって扉に打った
鉄鋲
(
てつびょう
)
が魔物のように
睨
(
にら
)
んでいた。私は重い
潜戸
(
くぐりど
)
をどうしてはいることが出来たのだったろう。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
昼夜不断の電燈
瓦斯燈
(
ガスとう
)
。唯物科学の文化の光りが。明るく光れば光って来るだけ。暗くなるのが精神文化じゃ。金じゃ女じゃ。権利じゃ義務じゃと。手段撰ばぬ悪智慧比べじゃ。道理外れた生存競争。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
こよひも
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の光、半ば開きたる窓に映じて、内には笑ひさざめく声聞ゆるをり、かどにきかかりたる二人あり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
甲谷は雨の上った
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
の葉影を洩れる
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の光りに、宮子の表情を確めながら結婚の話をすすめていった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「あの、
一
(
ひ
)
ィ
二
(
ふ
)
ゥ
三
(
み
)
ィ………四つ目の
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の出てるところだよ。
松葉屋
(
まつばや
)
と書いてあるだらう。ね。あの
家
(
うち
)
よ。」とお
糸
(
いと
)
は
屡
(
しば/\
)
橋場
(
はしば
)
の
御新造
(
ごしんぞ
)
につれて来られたり
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
停車場
(
ステーション
)
では
蒼白
(
あおじろ
)
い
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の下に、夏帽やネルを着た人の姿がちらほら見受けられた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「ともかく帰ろう。何にも起ってないことはちゃんと信じているのだ。きっとだ。」男は
執拗
(
しつこ
)
く繰り返しくちのうちで言って、
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の青い光をびっしょりと浴びながら、
二
(
ふ
)
た足ばかりあるいたとき
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
廊下から
微
(
かすか
)
な
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の光が差し込んで、女の身の
周囲
(
まわり
)
を照している。男がくら
闇
(
やみ
)
にいたので、女が知らずに
打
(
ぶ
)
っ付かって、きゃっと
云
(
い
)
った。男はいきなりその肩を
掴
(
つか
)
んで、部屋の中へ引き
摺
(
ず
)
り入れた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
むかしはここに立つ人おのおの
手燭
(
てしょく
)
持つ習なりしが、いま廊下、階段に
瓦斯燈
(
ガスとう
)
用ゐることとなりて、それは
罷
(
や
)
みぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
枝を
截
(
き
)
り払われた菩提樹の若葉の下で、宮子は
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の光りに濡れながら甲谷の近づくのを待っていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
道端の
瓦斯燈
(
ガスとう
)
やらさま/″\な燈火が高く低く入亂れて引續くのと、鋭い冬の星が寒むさうな光を放つ
夜
(
よる
)
の空に不揃ひな屋根の影、恐しく太い電信柱の影が突立つて居るのとで
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
もはや十一時をや過ぎけん、モハビット、カルル街通いの鉄道馬車の軌道も雪に
埋
(
うず
)
もれ、ブランデンブルゲル門のほとりの
瓦斯燈
(
ガスとう
)
は寂しき光を放ちたり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
終日室内には
瓦斯燈
(
ガスとう
)
を點ずる暗い日の續くのに自分はこの
長閑
(
のどか
)
な日本の冬の日影を見ると、靜な公園の
橡
(
とち
)
の葉が眞白な石像の肩に散りかゝる
巴里
(
パリー
)
の十一月、咽び泣く噴水のほとりの冷い腰掛けに
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
黄金
(
こがね
)
の
穹窿
(
まるてんじょう
)
おほひたる、『キオスク』(
四阿屋
(
あずまや
)
)の戸口に立寄れば、周囲に茂れる
椶櫚
(
しゅろ
)
の葉に、
瓦斯燈
(
ガスとう
)
の光支へられたるが、濃き五色にて画きし、窓硝子を
洩
(
も
)
りてさしこみ
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
瓦
常用漢字
中学
部首:⽡
5画
斯
漢検準1級
部首:⽄
12画
燈
部首:⽕
16画
“瓦斯”で始まる語句
瓦斯
瓦斯煖炉
瓦斯灯
瓦斯体
瓦斯竈
瓦斯七輪
瓦斯暖炉
瓦斯注入口
瓦斯織
瓦斯弾