きう)” の例文
「お客が歸るとお島さんを呼んで掃除さうぢをさせつかれたからと仰有つて一杯召し上がつて、朝のうち忘れてゐたきうを据ゑさしたやうで」
も待ず進み出御道理だうりの御尋問せがれ惣内は幼少えうせうの頃私しが毎度きうゑしによりて灸あとこれ有又子供同士の口論にかまきず
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きうずきの祖母が日に二三度づつお灸をすゑる。もの心覺えてから灸點の役が、いつかあたしの仕事になつてゐた。
お灸 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
しかきうごとあとをぽつ/\ととゞめたのみで衣物きもの心部しんぶふかまなかつた。ほこりかれえてはしつた。與吉よきち火傷やけど疼痛とうつううつたへてひとりかなしくいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
翌日よくじつ牛込改代町うしごめかいたいちやうたふさふらふせつは、ぜに貫文くわんもん海苔鮨のりずしぼんそれより午過ひるすぎ下谷上野町したやうへのまちたふさふらふせつたゞきう
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
江戸末期の英吉利イギリス公使だつた Sir Rutherford Alcock はきうゑてゐる子供を見、如何に僕等は迷信の為にみづから苦めてゐるかと嘲笑した。
寝小便やおきうのことばかり夢みてゐたので、こゝへ来てから長いあひだの経験か父親のいましめかで、夜になると湯水をこらへてゐたせゐで、一度も失敗しくじつたことのなかつたのが
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「どう?」「まだ下痢が止まらないんだよ」「この間、人に教はつて、へそに、味噌きうをすゑたら、ぼくの下痢には効いたがね」説明すると「それ、すゑてくれよ、ぼくに」といふ。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
かく余程親父には気に入らないと見えて、とかく親父の日におきうゑられる。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
芥子粉からしこを湯でこねて足にべつたりぬりつけて見たり、ひざの下にそら豆くらゐのきうをすゑて見たり、たね茄子なすを焼いて二つに割り、まだ熱いうちに足のうらにはりつけて見たり、そのほか
百姓の足、坊さんの足 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
また……遣直やりなほしぢや。)とつぶやきながら、のみをぶらげると、わたし茫然ばうぜんとしたあひだに、のそのそ、と越中褌ゑつちうふんどしきうのあとのしりせて、そして、やがて、及腰およびごしほこら狐格子きつねがうしのぞくのがえた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬の頭をりをり光り大人おとなしくきうすゑられてありにけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此處は隣の十五疊と打つて變つた簡素な部屋でひと通りの夜具布團と、誰がゑるのかおきうの道具があるだけ。
與吉よきちはにかんだやうにして五りん銅貨どうくわくちびるをこすりながらつてた。かれくち兩端りやうはしにはからすきうといはれてかさ出來できどろでもくつゝけたやうになつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
或る田舎ゐなか家の縁先で、ばあさんが子供にきうをすゑてゐるのを見て
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
現身うつしみの馬にてせば観世音きうすゑられてありにけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「それだとおきうもんだね。」
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「それくらゐのことは誰でも知つてゐる——あれくらゐのことなら、はりきうの方でもわかつてゐる筈だよ」
「おゝえやまあ、えけきうあとぢやねえけえ」と一人ひとりばあさんがおどろいていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あかあかときう押しすゆる馬の腹馬はたまらず嘶きにけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
俺は先刻はりきうことを訊きに行くと言つたらう。近所の鍼の名人で、巳之市みのいちといふのが居るんだ。
あの晩半兵衞が一杯飮んで、きうゑられてウトウトするのを見ると急に殺す氣になつたのだらう。隣の離屋には煙硝えんせう彈丸たまも込めて先刻半兵衞が武家に見せた見本の鐵砲がある。
「親分、何も彼もよくわかりましたよ。あのお銀といふ女の背中のきうあとまで」
灸點きうてん横町の多の市といふのはおきうはりの名人で、神田中に響いた盲人ですが、稼業のかたはら高利の金を廻し、吸ひ附いたら離れないからといふので、蛸市と綽名あだなを取つてゐるほど、したゝか者だつたのです。