)” の例文
「……そらそら、すこしすいたと思ったらまた参詣人がんで来たよ。押さないで、押さないで——おい若いの——順番におしよ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
表の店のほうも客がんできたのだろう、板場へ注文をとおす女たちの声や、客の話したり笑ったりする声が賑やかに聞えた。
源蔵ヶ原 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「待つてくれ。そんなら、お吉の窓の戸に細工をしたのは誰だ、——お峯に引入れて貰ふくらゐなら、あんな手のんだ細工は無駄ぢやないか」
んでいる。乗る。電車の中は、人の体温で生あたたかく、そうして、ひどく速力が鈍い。電車の中で、走りたい気持。
犯人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして或る人は荒寥こうりようとした極光地方で、孤独のぺんぎん鳥のやうにして暮してゐるし、或る人は都会の家並のんでる中で、賭博場や、洗濯屋や
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
私は萱の葉のんだ所から無理にのぞいて見ましたら二人ともメリケン粉の袋のやうなものを小わきにかゝへてその口の結び目を立ったまゝ解いてゐるのでした。
二人の役人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
付け旅も少しは草臥くたびれて辛い事の有るのが興多しあまり徃來の便を極めぬうち日本中を漫遊し都府を懸隔かけへだちたる地の風俗をぜにならぬうちに見聞けんもん山河やまかはも形を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「いえもうそれは、たいへんった話になりますが、今日はちょっとかいつまんで申上げます」
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
野尻のじり三留野みどのの宿役人までが付き添いで、関東御通行中の人馬備えにということであった。なにしろおびただしいみ合いで、伊那の助郷もそうそうは応援に出て来ない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
最初心ざして行った家がんで居て、そこからされて来たことをいうと、ともかくも通されたのが、ささやかな中庭を見下ろす奥の二階、それが折れ曲った廊下のはずれで
雨の宿 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
恐ろしくんでいる場内は、霧のような濁った空気にたされて、黒く、もくもくとかたまって蠢動しゅんどうしている群衆の生温かい人いきれが、顔のお白粉を腐らせるように漂って居た。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
店は、ごった返しのみようである。私たちは二階の隅に坐っていた。女中が去ると
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
「そして、貞ちやんや光ちやんはどうなりました?」と、お梅が傍から口を出したが村上は差し當つてのつた川村家の事情を迂闊うくわつにお梅などには打ち開けないで、曖昧に言ひ濁した。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
杏雲堂側面未明まだきは暗き窻あけてみ合ひの屋根に霜の置く見つ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
人出が多く、茶店はかなりんでいる。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伊豆口の三島みしまには尊氏方の仁木義長の軍勢がみ入っていたので、箱根の西裾にしすそをたどって北条のさとへ落ちのび、小寺や民家にわかれてかくれ込んだのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或る人は都會の家竝のんでる中で、賭博場や、洗濯屋や、きたない酒場や理髮店のごちやごちやしてゐる路地を求めて、毎日用もないのにぶらついてゐる。
散文詩・詩的散文 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
私は萱のんだところから無理むりにのぞいて見ましたら二人ともメリケンふくろのようなものを小わきにかかえてその口のむすび目を立ったままいているのでした。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「それ、この通り、お百の首に附いて居る跡は、太い細引の跡だ、——手のんだ眞田紐の跡ぢやない。小指ほどの細引、そんなものが此處にないでせうか、親分」
ことに、余り客の立てんでいない昼湯ひるゆの、あの長閑のどか雰囲気ふんいきは、彼のよう所在しょざいのない人間が、贅沢ぜいたくねむりからめたのちの体の惰気だきを、そのまま運んでゆくのに最も適した場所であった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たぼたぼとかはづふ日のさかり田岸は白き虎の尾のはな
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
こう、仁木、西条など、けじめもつかぬ泥ンこな兵どもが、われがちに三条河原を逃げ渡って、対岸の足利陣地内へみ入ったことなので、尊氏、直義の帷幕いばくでは
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「話が少しんがらかつたやうだ。一さい御破算ごはさんにして、——圓三郎はお銀をかばひ立てして、つまらねえ拵へごとを言つた——といふことだけはお前にもわかるだらう」
小松こまつだ。みつだ。んでいる。それから巨礫きょれきがごろごろしている。うすぐろくて安山岩だ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「いらっしゃいまし。今日は土曜の晩なもんで、こうんでんのよ、センセーッ」
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たぼたぼとかはづふ日のさかり田岸は白き虎の尾のはな
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こんなうちにも、そうの屋敷の外は黒山の人だかりだった。虎見物にと押しかけてきた村々の老幼男女は家人の制止もきかばこそ、内門のかきの辺までみ入って来て。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よし/\、それ以上負けさしちや、多賀屋も冥利みやうりが惡からう。お前は思つたより良い男だ、手のんだ人殺しなんかするより、心を入れ替へて商賣でもはげむがよからう。
うしろでだれかこごんで石ころをひろっているものもある。小松ばやしだ。んでいる。このみちはずうっと上流じょうりゅうまで通っているんだ。造林ぞうりんのときはなえや何かを一杯つけた馬がぞろぞろここを行くんだぞ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
早やかなし和田の岬の夕潮にいも洗ふごとく子らぞみ合ふ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
暗いところで、手のんだ殺しが出來るわけはない。手さぐりでは何んにも出來ないから、——最初は行燈が灯いてゐたに違ひあるまい。曲者が入つた時は、佐野松はあかり
城際しろぎわから町屋へみ入った大久保忠世の兵、鳥居彦右衛門の兵、井伊直政の隊など——どれひとり弱兵というのではないが、時と所と統率を得ないではその力もふるうすべもない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夕明き横狭よこさの入江あはれなり葦村つづき舟める見ゆ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
行 ┃ 和賀わがんだ松並木のときだつて
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
この界隈かいわいの野伏をかたらって、乱波組らっぱぐみ(第五列)をつくり、放火とともに、敵の中へみ入るのを妙としていた男だが、この朝も、狐河きつねがわから鳥羽とばへのあいだで、ふと目ざましい大将姿が六
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「思ひの外、み入つて居さうだ」
んだ野ばらやあけびのやぶ
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ひとつに立ちみたる馬、車、ひまなくにぎはしけれど
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)