殺生せつしやう)” の例文
「あの娘の移り香を嗅がせようといふのか、そいつは殺生せつしやうだぜ、腹の滅つて居る時は、そんなのを嗅ぐと、虫がかぶつていけねえ」
得て早速さつそく阿漕あこぎうらへ到り見ればあんたがはずあみおろす者あり與力こゑをかけ何者なれば禁斷きんだんの場所に於て殺生せつしやういたすや召捕めしとるべしと聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あまたの人を斬りて罪業を重ね、恐ろしき欺罔ゲレンの魔道に迷ひ入り、殺生せつしやうまさる邪道に陥り行くうち、人の怨みの恐ろしさを思ひ知りて、われと、わが身を亡ぼしをはんぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
正面しやうめんにはもう多田院ただのゐん馬場先ばばさきの松並木まつなみきえだかさねて、ずうつとおくふかくつゞいてゐるのがえた。松並木まつなみき入口いりくちのところに、かはにして、殺生せつしやう禁斷きんだんつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うちからさをなんぞ……はりいとしのばしてはなかつたが——それは女房にようばうしきり殺生せつしやうめるところから、つい面倒めんだうさに、近所きんじよ車屋くるまや床屋とこやなどにあづけていて、そこから内證ないしよう支度したくして
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「よりによつて、何といふ殺生せつしやうな遊びごとをなされることでござりませう。」
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
なんぼなんでも殺生せつしやうな、よるよるとてくらやみに。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「そんな殺生せつしやうなこと……」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
入用いりえうのときだけ、チヤホヤして引留めるのは、隨分殺生せつしやうだと思はないのか。八五郎はまだ三十そこ/\、あの年で獨り者だぜ」
おろして居られしゆゑ忠右衞門大聲たいせいにて當所たうしよ往古わうこより殺生禁斷せつしやうきんだんの場所なれば殺生せつしやうする者あれば搦捕からめとるなりと呼はるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山川の曲つて流れてゐるところまで來ると、其處からが天滿宮の昔の領地で、「殺生せつしやう禁斷」と深くつた大きな石標が川端にこけむして、倒れさうになつたまゝ立つてゐる。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
が、女房にようばうは、まだわかいのに、後生願ごしやうねがひで、おそろしくいはさんの殺生せつしやうにしてた。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「知るものか、——俺は宗門改めの役人ぢやないよ。お前も餘計な口をきいて、磔刑柱はりつけばしらを二三本おつ立てるやうな殺生せつしやうなことをしちやならねえ」
掛たら彼方はおどろききふ病人の診察みまひもどりと答へし形容ようす不審いぶかしく殊に衣類いるゐ生血なまちのしたゝり懸つて有故其の血しほは如何のわけやと再度ふたゝび問へば長庵愈々驚怖おどろき周章あわて嗚呼ああ殺生せつしやうはせぬ者なりえきなきことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あまり他愛たあいなさに、効無かひな殺生せつしやうやめにしやう、と発心ほつしんをしたばん、これが思切おもひきりのあみくと、一面いちめんじやうぬまみづひるがへして、大四手おほよつで張裂はりさけるばかりたてつて、ざつと両隅りやうすみからたかほしそらかげして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「知らないよ。さらし物でもあつたのか、——相對死あひたいじにの片割れなんかを、ぼんやり眺めてゐるのは殺生せつしやうだぜ」
もつともはあ、殺生せつしやう禁制きんせい場所ばしよでがしたよ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それは親分、殺生せつしやうですよ。三千兩に十年間の利息をつけて出しちや、多賀屋がつぶれてしまひます」
梅若丸うめわかまるの昔から、人さらひの種は盡きないが、子供をさらはれた親の歎きを思ふと、俺は斯う息づまるやうな氣がするよ、——世の中にあれほど殺生せつしやうな惡事はないな」
「書いて來ましたがね、あつしに字を書かせるなんざ、親分も殺生せつしやうが過ぎますよ」
「止せよ、殺生せつしやうぢやないか——こんなのに因縁いんねんをつけられた女が可哀想だ」
お前と菊治が子供の時から一緒に育つたせゐが、赤の他人のくせに、不思議に面差おもざしが似て居る、——俺はそれに騙されて、幾日も/\無駄にした上、三人も五人も餘計殺生せつしやうをさして了つた。
それが確め度さに、少し殺生せつしやうだが、お前に風呂場のぞきをやらせたのだよ。宗之助は色も黒いし、骨組も逞ましいし、一應十四五の男の兒のやうに見えるが、聲が男の子ではなくてどうしても女だ。
「正月の三日ですよ、親分、足止めは殺生せつしやうぢやありませんか」
「知つて居て、あんな目に逢はせるのは殺生せつしやうだぜ、親分」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
殺生せつしやうな曲者ぢやありませんか
殺生せつしやうなことを