さかえ)” の例文
旧字:
さかええよかしでいははれてよめに来たのだ、改良竈かいりやうかまどと同じくくすぶるへきではない、苦労くらうするなら一度かへつて出直でなほさう。いかさまこれは至言しげんと考へる。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
谷から向うのおかにかけて、麦と稲とが彼の為に一年両度緑になり黄になってくれる。雑木林が、若葉と、青葉と、秋葉と、三度のさかえを見せる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もし江戸にいださば朱門しゆもん解語かいごの花をさかせ、あるひは又青楼せいろう揺泉樹えうせんじゆさかえをなし、此隣国りんごく出羽にうまれたる小野の小町が如く美人びじんの名をもなすべきに
おもてをつけず熊野ゆやの舞一くさりあり。久次の牢輿ろうごしにて連れ行かれしを見送り「まことや槿花きんか一日のさかえ、是非もなき世の盛衰ぢやなあ」との白廻せりふまわしもねうちあり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
「また受造者つくられしものみづから敗壊やぶれしもべたることを脱れ神の諸子こたちさかえなる自由にいらんことをゆるされんとの望をたもたされたり」(羅馬書第八章二十一節)とあるは即ちこれなり。
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
が、間もなくそれも消えて、あとにはただ草木のさかえはらんだ、明るい沈黙があるばかりになった。……
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大杉さかえと伊藤野枝のえとが例の恋愛事件に対する告白を読んで見ると、いづれも理屈ばかりならべてゐる。
勝久はこの歌に本づいて歌曲「まつさかえ」を作り、両国井生村楼いぶむらろうで新曲開きをした。勝三郎を始として、杵屋一派の名流が集まった。曲は奉書摺ほうしょずりの本に為立したててかくわかたれた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
現夫人は、紅葉館のひとだということである。丸顔なヒステリーだというほかは知らない。おなじ紅葉館の舞妓まいこで、さかえいみじい女は博文館はくぶんかん主大橋新太郎氏夫人須磨子さんであろう。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もう一枝、河野の幹をさかえさそうと、お前さんが頼みにしている、四番目の娘だがね、つい、この間、暑中休暇で、東京から帰って来た、手入らずの嬢さんは、医学士にけがされたぜ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お春は何処どこか歓楽のさかえちまたへでもゆくように、よろこびいさんで外へ出ます。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
大杉何という人だとくと、大杉さかえさんで皆さん御一緒ですといった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
もみぢ葉のおのづと落ちしたまゆらはさかえのきはみ枯衰ほろびのはじめ
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
 末長うござる方に、さかえを残す事は又よろこばしい。
胚胎 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
だから、私はころされた大杉さかえが好きなのです。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
国家のさかえ、我々の栄のため、大切なおさだめ
恋人かいもとか。うるはしき秋のさかえ
さかえあれ! 神冥の加護なれにあれ!
彼らはエホバのさかえを見ん
もし江戸にいださば朱門しゆもん解語かいごの花をさかせ、あるひは又青楼せいろう揺泉樹えうせんじゆさかえをなし、此隣国りんごく出羽にうまれたる小野の小町が如く美人びじんの名をもなすべきに
の家でも、五人六人子供の無いうちは無い。この部落ぶらくでも、鴫田しぎだや寺本の様に屈強くっきょう男子おとこのこの五人三人持て居るうちは、いえさかえるし、何かにつけて威勢いせいがよい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この月の日課なる馬太伝マタイでんうちには神の王国に就きて重要なる教へ多くあり。しゆのつとめは実にさかえあるものにして、之を守るものは、尤もさいはひにして尤もめぐみあるものとす。
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
その上、威があり力があり、さかえと光とあるものに違いないと思いました。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
弥ざゑもんはからず十両の金をしち入れせし田地をもうけもどし、これよりしば/\さいはひありてほどなく家もあらたに作りたていぜんにまさりてさかえけり。
彼岸花と云う曼珠沙華まんじゅしゃげは、此辺に少ない。此あたりの彼岸花は、はぎ女郎花おみなえし嫁菜よめなの花、何よりも初秋のさかえを見せるのが、紅く白く沢々つやつや絹総きぬぶさなびかす様な花薄はなすすきである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
弥ざゑもんはからず十両の金をしち入れせし田地をもうけもどし、これよりしば/\さいはひありてほどなく家もあらたに作りたていぜんにまさりてさかえけり。