トップ
>
慳貪
>
けんどん
ふりがな文庫
“
慳貪
(
けんどん
)” の例文
物言ふは用事のある時
慳貪
(
けんどん
)
に申つけられるばかり、朝起まして機嫌をきけば不圖脇を向ひて庭の草花を態とらしき褒め詞
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
即ち
慳貪
(
けんどん
)
そばから来たものであって、慳貪とは、
吝嗇
(
けち
)
の事、引いては安直という意味になり、つまり御手軽に安直に食べられるそばの事である。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
その身振りをながめ、またその男の服装と荷物とを見て取って、テナルディエの上さんの愛想顔はまた
慳貪
(
けんどん
)
になった。彼女は冷ややかに言った。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
併し、御者のわざ/\斯う訊いたのは決して言葉通りの意味でないことを私は直ぐ感じた。此奴、驛前の宿屋で聞いて來たナ、と思ひながら
慳貪
(
けんどん
)
に
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
苦しいのはお互ひさまではないか! と斯う彼女の弱音に荒々しい批難と突つ
慳貪
(
けんどん
)
な叱聲を向けないではゐられないエゴイスチックな衝動を感じた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
▼ もっと見る
不機嫌
(
ふきげん
)
そうに勝手の間の入口に立って、何ですと
慳貪
(
けんどん
)
に問懸けるを、秋元の女房は下から上へじろりと見て、お坐んなさいと自分の座を少しさがり
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
案に相違して、
突
(
つ
)
っ
慳貪
(
けんどん
)
に、両袖を払った新九郎は顔を上に
反向
(
そむ
)
けて、わざと、言葉まで常より荒い伝法づかい。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから谷の深い処には
細
(
こま
)
かなうすぐろい
灌木
(
かんぼく
)
がぎっしり生えて光を通すことさえも
慳貪
(
けんどん
)
そうに見えました。
マグノリアの木
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と、如何にも
突
(
つ
)
ッ
慳貪
(
けんどん
)
にピシャリと障子を立て切って了った。面喰った苦学生はそこ/\に逃げて行ったが、親父はまだ眼を怒らし、せい/\息をはずませて
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妻は
慳貪
(
けんどん
)
にこういって、
懐
(
ふところ
)
から
塩煎餅
(
しおせんべい
)
を三枚出して、ぽりぽりと噛みくだいては赤坊の口にあてがった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
…………阿父さんは、晃兄さんには仕方が無いけれど、阿母さんに何故あゝ
慳貪
(
けんどん
)
に物を被仰るんだらう。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
いわくマルサスのバラセ町へ貧僧来り、富家に宿を求めると、主婦無情で亭主
慳貪
(
けんどん
)
の由言って謝絶した。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「奥に寝ている様子でしたが、親父があんまり
突
(
つ
)
っ
慳貪
(
けんどん
)
なんで、気を揉んで起きて来ましたよ。少しやつれてはいたが、好い女ですね、あれは。親分の
前
(
めえ
)
だが——」
銭形平次捕物控:044 お民の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
世には大なる福分を有しながら
慳貪
(
けんどん
)
鄙吝
(
ひりん
)
の性癖のために、少しも分福の行爲に出でないで、憂は他人に分つとも、好い事は一人で占めようといふが如き人物もある。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は養父母の手前始終自分に対してにこにこしていた父と、厄介物を
背負
(
しょ
)
い込んでからすぐ
慳貪
(
けんどん
)
に調子を改めた父とを比較して一度は驚ろいた。次には
愛想
(
あいそ
)
をつかした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然らば
彼
(
かれ
)
安助
(
あんじょ
)
を造らば、即時に
科
(
とが
)
に落つ可きと云う事を知らずんばあるべからず。知らずんば、
三世了達
(
さんぜりょうだつ
)
の智と云えば虚談なり。また知りながら造りたらば、
慳貪
(
けんどん
)
の第一なり。
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
荒物屋でも買物をしたことがあるが、店番をしていた小女は眠そうな顔をしていて、手の甲に
皹
(
あかぎれ
)
をきらしていた。私はなんとなくこの家の主人は
慳貪
(
けんどん
)
なのではなかろうかと想像した。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
その時母が父にも
怒
(
いかり
)
を移して
慳貪
(
けんどん
)
に口をきいたことをも思い出し、父のこと母のこと、それからそれへと思を
聯
(
つら
)
ね、果は親子の愛、兄弟の愛、夫婦の愛などいうことにまで考え込んで
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と
慳貪
(
けんどん
)
に
逐
(
お
)
っぱらわれ、彼女も度を失い、すごすご台所へ立って行くのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
おのれ善をなして、おのれその
報
(
むく
)
ひの来るを待つは
直
(
なほ
)
きこころにもあらずかし。又
悪業
(
あくごふ
)
慳貪
(
けんどん
)
の人の
富
(
と
)
み
昌
(
さか
)
ふるのみかは、
寿
(
いのち
)
めでたくその
終
(
をはり
)
をよくするは、
一〇四
我に
異
(
こと
)
なることわりあり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
怒りの絶項に達したような突っ
慳貪
(
けんどん
)
な声をあげてふと
背後
(
うしろ
)
を振り向いた途端
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
お勢のいうことが、出戻りを叱るような
慳貪
(
けんどん
)
になったので、がんりきが
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
短気の石山さんが、
鈍
(
どん
)
な久さんを
慳貪
(
けんどん
)
に叱りつける。「車の
心棒
(
しんぼう
)
は
鉄
(
かね
)
だが、鉄だァて
使
(
つか
)
や
耗
(
へ
)
るからナ、
俺
(
おら
)
ァ段々
稼
(
かせ
)
げなくなるのも無理はねえや」と、
小男
(
こおとこ
)
ながら小気味よく稼ぐ
辰
(
たつ
)
爺さんがこぼす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そんな時に何なんですかと突っ
慳貪
(
けんどん
)
に言って自分の顔を見る細君などはたまらないではありませんか。ただ一概に子供らしくておとなしい妻を持った男はだれでもよく仕込むことに苦心するものです。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
『何處でも可いぢやないか!』と、聲は低く、然し
慳貪
(
けんどん
)
だ。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
慳貪
(
けんどん
)
なる
商人
(
あきびと
)
の
方形
(
はうけい
)
に
開
(
ひら
)
く
大口
(
おほぐち
)
なり
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と
慳貪
(
けんどん
)
に云う。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
物言ふは用事のある時
慳貪
(
けんどん
)
に
申
(
まをし
)
つけられるばかり、朝起まして機嫌をきけば
不図
(
ふと
)
脇
(
わき
)
を向ひて庭の草花を
態
(
わざ
)
とらしき
褒
(
ほ
)
め
詞
(
ことば
)
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
夢窓国師は、尊氏公の長所三ツを賞めて、一は生死に
超脱
(
ちょうだつ
)
している、二には慈悲心ふかく人の非もよく
宥
(
ゆる
)
す、三には無欲
恬淡
(
てんたん
)
で物に
慳貪
(
けんどん
)
の風がない——と。その通りでございましょうか
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吝嗇
(
りんしよく
)
で、
慳貪
(
けんどん
)
で、恥知らずで、怠けもので、強慾で——いやその中でも取分け甚しいのは、横柄で高慢で、何時も本朝第一の絵師と申す事を、鼻の先へぶら下げてゐる事でございませう。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
立膝
(
たてひざ
)
で
煙管
(
きせる
)
を
喞
(
くわ
)
えながら盛り方が無作法だとか、三杯目にはもういい加減にしておきなさいとか、
慳貪
(
けんどん
)
に
辱
(
はずか
)
しめるのもいやだったが、病気した時の
苛酷
(
かこく
)
な扱い方はことに非人間的であり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
『何処でも
可
(
い
)
いぢやないか!』と、声は低く、然し
慳貪
(
けんどん
)
だ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
慳貪
(
けんどん
)
なる
男
(
をとこ
)
の
方形
(
はうけい
)
に
開
(
ひら
)
く
大口
(
おほぐち
)
なり
そぞろごと
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
平次の間は少し
突
(
つ
)
っ
慳貪
(
けんどん
)
でした。
銭形平次捕物控:089 百四十四夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女は
慳貪
(
けんどん
)
に言葉を返した。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
物言
(
ものい
)
ふは
用事
(
ようじ
)
のある
時
(
とき
)
慳貪
(
けんどん
)
に
申
(
まをし
)
つけられるばかり、
朝起
(
あさおき
)
まして
機嫌
(
きげん
)
をきけば
不圖
(
ふと
)
脇
(
わき
)
を
向
(
む
)
ひて
庭
(
には
)
の
草花
(
くさばな
)
を
態
(
わざ
)
とらしき
褒
(
ほ
)
め
詞
(
ことば
)
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
兄はわたしを見下しながら、
不相変
(
あひかはらず
)
慳貪
(
けんどん
)
にかう申しました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
慳貪
(
けんどん
)
なる
黒奴
(
くろんぼ
)
の
曲馬
(
きよくば
)
師は
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
“慳貪”の意味
《名詞》
欲が深くけちなこと。
無愛想なこと。冷淡なこと。無慈悲なこと。
盛切りのそばやうどん、酒などの飲食物。倹飩。
家具・建築において、上下に溝を掘り、戸や蓋を上げ落としにしてはめこむ構造。倹飩。
(出典:Wiktionary)
慳
漢検1級
部首:⼼
14画
貪
常用漢字
中学
部首:⾙
11画
“慳”で始まる語句
慳
慳吝
慳嚢
慳相