めで)” の例文
また心き事はべりき、その大臣の娘おわしき、いろかたちめでたく世に双人ならぶひとなかりき、鑑真がんじん和尚の、この人千人の男に逢ひ給ふ相おわすとのたまはせしを
松は千代も変らぬ常磐木でして新春にまずその色をめでたものです。古人も「常磐なる松の翠も春来れば今一しほの色まさりけり」
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
數多あまたの人にまさりて、君の御覺おんおぼえ殊にめでたく、一族のほまれを雙の肩にになうて、家には其子を杖なる年老いたる親御おやごもありと聞く。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
年頃としごろめで玉ひたる梅にさへ別れををしみたまひて「東風こちふかば匂ひをこせよ梅の花あるじなしとて春なわすれぞ」此梅つくしへとびたる事は挙世よのひとの知る処なり。
あはれ一度ひとたびはこの紳士と組みて、世にめでたき宝石に咫尺しせきするの栄を得ばや、と彼等の心々こころごころこひねがはざるはまれなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
する者もなけれど誰しも欲の世の中なれば身上の太きにめで言込者いひこむものも又多かり然共持參金の不足よりいつも相談とゝのは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たつめでしは修業の足しにとにはあらざれど、これを妻にめかけ情婦いろになどせんと思いしにはあらず、いて云わばただ何となくめでいきおいに乗りて百両はあたえしのみ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
〽流れの泉色も香もめで給わればいそいそと花に習うてちらりとそこに情の通う若たちの心任せに紐ときて上の下のととる手も狂うヨイヨイヨイヨイヨンヤサソレヘ
適間たまたまとぶらふ人も、宮木がかたちのめでたきを見ては、さまざまにすかしいざなへども、三二ていかしこみさをを守りてつらくもてなし、後は戸をてて見えざりけり。
春枝夫人はるえふじんにすぐれて慈愛じひめるひと日出雄少年ひでをせうねん彼等かれらあひだ此上こよなくめでおもんせられてつたので、たれとて袂別わかれをしまぬものはない、しか主人しゆじん濱島はまじま東洋とうやう豪傑がうけつふう
塵居ちりゐ御影みかげ古渡こわたりの御經みきやうの文字やめでしれて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
年頃としごろめで玉ひたる梅にさへ別れををしみたまひて「東風こちふかば匂ひをこせよ梅の花あるじなしとて春なわすれぞ」此梅つくしへとびたる事は挙世よのひとの知る処なり。
久八はとくさつし何事も心切しんせつを盡し内々にて小遣錢こづかひぜに迄も與へかげになり日向ひなたになり心配してくれけるゆゑ久八が忠々まめ/\敷心にめでて千太郎は奉公に來し心にて辛抱しんばう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
としも十七なればかねてむこをと思ひをりたるをりからなれば、かのしのび男が実心まごゝろめで早速さつそくなかだちはしをわたし、姻礼こんれいもめでたくとゝのひてほどなく男子をまうけけり。其家そのいへなほさかゆ。
金谷村より歸りし草臥足くたびれあしなれ共其孝心かうしんめで無量庵大源和尚の庵へ參りし頃はゆふ申刻過なゝつどきすぎにして暫時物語いたせし間歸宅は其夜亥刻頃よつどきごろと申に大岡殿又無量庵に向はれ九助が參りし刻限こくげん歸宅きたくの刻限とも尋問たづねらるに九助同樣の答へなり時に九助は無量庵に向ひ其節那方あなたの仰せには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)