庭口にはぐち)” の例文
云號いひなづけと思ひ居る事の嬉敷うれしくは思へども利兵衞殿の心底しんていかはりなければお菊にあふまじと云をお竹は無理むりに吉三郎を連來つれきたり今度は新道しんみちへ廻り庭口にはぐちの切戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二人は一緒にかう云つて庭口にはぐちから出て行つた。鏡子は二けんあとから歩いてくのであつた。車屋の角迄くと、忘れて居るのであらうと思つて居た母親を見返つて
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いつかはなした錦繪にしきゑせるからおりな、種々いろ/\のがあるからとそでらへてはなれぬに、美登利みどり無言むごんにうなづいて、びた折戸をりど庭口にはぐちよりれば、ひろからねども、はちものをかしくならびて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立出たちいで見れば水はなく向ふのいへに話しの老人らうじん障子をひらきて書をよみゐたるに是なる可しと庭口にはぐちより進み入つゝ小腰こごしかゞまことに申し兼たれどもおみづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
悔恨の銀の色のおもりを胸に置かれた鏡子が庭口にはぐちから入つて行つた時、書斎の敷居の上に坐つて英也は新聞を見て居た。座敷のえんではお照がまだ榮子にちゝを含ませて居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
庭口にはぐちぱなして、さぞかし貴郎あなたのおおこあそばしたことではかつたなれど、病人びやうにん見捨みすてゝかへこともならず、今日けふこのやうにおそくまでりまして、何處どこまでもわたしわろ御座ござんするほどに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
相續さうぞく致すべしと有て又忠八も庭口にはぐちより召れ太守たいしゆへ目見をゆるされ其方いやしき若黨の身にて主人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と云つて庭口にはぐちから出たあとで外の家族は朝飯あさげの膳に着いた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
此儘このまゝすぐにとそこ/\身仕度みじたくして庭口にはぐちでんとする途端とたんぢやうさま今日けふもおかけか何處どこへぞと勘藏かんざうがぎろ/\おそろしけれどおくしてなるまじとわざとつくる笑顏ゑがほあいらしく今日けふもとは勘藏かんざうひどいぞや今日けふはとはねばてにを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いとゞしく御不愍ごふびんがりさておやひとあはれのことやまづ庭口にはぐちより部屋へやまでうへきたしとてたまひぬいまこそ目馴めなれたれ御座敷おざしき結搆けつこうにはのたゝずまひ華族くわぞくさまにやとうたがひしはいつぢやうさまの御言語容姿おものごしにもりしものそのうつくしきぢやうさま御親切ごしんせつにも女子同志をなごどうし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)