小使こづかい)” の例文
いよいよ寝台が来た、同時に職工や小使こづかいがドヤドヤ室内に入って来た。室の真中にある分析台の上に置いた品物がどこかへ片付けられた。
病中記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
何用あって婦人のいることか、その理由もちょっと解し難かったから、僕は小使こづかいに代って、この婦人に向い、その用をただして
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
月あかりで透かして視ると、かれらはこのごろ顔なじみになった町役場の書記と小使こづかいで、これから近所の川へ夜釣りに行くというのであった。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから車をやとって、中学校へ来たら、もう放課後でだれも居ない。宿直はちょっと用達ようたしに出たと小使こづかいが教えた。随分ずいぶん気楽な宿直がいるものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
右のほかに三使節の家来両三人ずつと、まかない小使こづかい六、七人、この小使の中には内証で諸藩から頼んで乗込んだ立派な士人もある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
銀行会社の小使こづかいなぞ、これらの者殆ど学生と混同して一々その帽子またはボタンの徽章きしょうにでも注意せざれば、何が何やら区別しがたき有様なり。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その、ひとけのない、一階のひろい通路を、ひとりの小使こづかいさんらしい老人が、ほうきとバケツを持って、二階への階段の下まで、歩いてきました。
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こういって、外套室がいとうしつへかけ出した。このとき小使こづかいがベルのボタンをしたので、あじもそっけもない広い校舎こうしゃじゅうへ、けたたましいベルのおとひびき渡った。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
病院びょういん小使こづかい看護婦かんごふ、その子供等こどもらなどはみな患者かんじゃ病室びょうしつに一しょ起臥きがして、外科室げかしつには丹毒たんどくえたことはい。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「じゃあこうしましょう。あとで小使こづかいさんにこれをにてもらい、今日の理科の時間に研究しようじゃないの。それから、蟹っていう題で綴方つづりかたも書いてくるの」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
もしまだこの上永らえるようなことでもございましたら、北四川路のジャウデン・マジソン会社の小使こづかい、陳に王の御名でお訊ね下さいませ。では、さようなら。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
小使こづかいが私の家に走って、母が呼び出された。校長の前に呼び出された母は、初めはちょっと面喰めんくらったような風だったが、母にはすぐ事の真相がつかめたらしかった。
海岸にある「玉井組詰所つめしょ」では、「小使こづかい」と称する賃銀の内金を、松本重雄が子分連中に渡している。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
野辺のおくりが済んで、七々四十九日というのに、自ら恥じて、それと知りつつ今までつい音信おとずれなかった姉者人あねじゃひと、その頃ある豪商の愛妾になっていたのが尋ねて来て、その小使こづかい
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
糟谷は事務所じむしょの入り口で小使こづかいを見た。小使はいつもていねいにあいさつするのだが、けさはすぐわきをとおりながらあいさつもせずにいってしまった。糟谷かすやはいやな気持ちがした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
〔続報〕——事件後約一時間を経て出勤した同アパートの宿直小使こづかい白木某は
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
謙蔵はうす鬼魅きみ悪く思わないでもないが、生死の判らない病人のもとへ帰って往くのに、汽車賃以外に一銭の小使こづかいのないのを心苦しく思っている処であったから、その心は黄金きん指環ゆびわきつけられた。
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「エレベーター・ボーイだとか、小使こづかいの親爺だとか、色々なものをらえて、話を聞いていたのさ、お蔭であのビルディングのことは大分詳しくなった」
小使こづかいのニキタはあいかわらず、雑具がらくたつかうえころがっていたのであるが、院長いんちょうはいってたのに吃驚びっくりして跳起はねおきた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
始めて学校へ来た時当直の人はと聞いたら、ちょっと用達ようたしに出たと小使こづかいが答えたのをみょうだと思ったが、自分に番がまわってみると思い当る。出る方が正しいのだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
校長や先生は勿論、小使こづかいに至るまでも髪を刈り、ひげって、試験中は服装をあらためていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は唯だ来春らいはる、正月でなければ遊びに来ない、父が役所の小使こづかい勘三郎かんざぶろうの爺やと、九紋龍くもんりゅうの二枚半へうなりを付けて上げたいものだ。お正月に風が吹けばよいと、そんな事ばかり思って居た。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
シューラの身体からだはぐるぐるまわされたり、さぐりちらかされたりして、くまなく検査けんさされた。おまけに少しずつはだかにされた。小使こづかい長靴ながぐつをぬがして、ふるって見た。万一のために、靴下くつしたもはいでみた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
小使こづかい、小ウ使。」
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旧藩主M伯爵はくしゃく邸の小使こづかいみたいなことを勤めてかつかつ其日そのひを送っている、五十を越した父親の厄介やっかいになっているのは、彼にしても決して快いことではなかった。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
小使こづかい看護婦かんごふ患者等かんじゃらは、かれ往遇ゆきあたびに、なにをかうもののごと眼付めつきる、ぎてからは私語ささやく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
小使こづかいに負ぶさって帰って来た時、おやじが大きなをして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かすやつがあるかとったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ベルをらした。小使こづかいがやって来た。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
起きているのは、ビルディングの地階に住んでいる管理人や小使こづかいの家族丈けで、彼等は入口の扉を開き、朝の掃除を済ませて、朝食の膳に向っている頃であった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし、全然現実的根拠こんきょのない夢物語では、いかな明智にも、どうするすべもないのだ。そして、丁度ちょうどそうしている所へ、ホテルの小使こづかいが、東京から電話だといって、妙子を探しに来たのであった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
アパートの小使こづかいを呼んで尋ねると、明智氏は確かに部屋にいる筈だというので、不審を起し、合鍵を取寄せて、ドアを開いて見ると、窓際の机に俯伏せになって血に染っている明智氏を発見した。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)