孟子もうし)” の例文
けだし聖人せいじん君子くんし高僧こうそう等より見れば、普通にわれわれの賞賛する武勇は猛獣もうじゅうの勇気に類したもので、孟子もうしのいうところの匹夫ひっぷの勇に過ぎぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私は上編において今日多数の人々が貧乏線以下に沈淪ちんりんしていることを述べたが、これらの人々は孟子もうしのいわゆる恒産なきのはなはだしきものである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
或る人またいわく、「妾を養うは後あらしめんがためなり、孟子もうしの教えに不孝に三つあり、後なきを大なりとす」と。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
はるばるこの国へ渡って来たのは、泥烏須デウスばかりではありません。孔子こうし孟子もうし荘子そうし、——そのほか支那からは哲人たちが、何人もこの国へ渡って来ました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きょは気を移すと云う孟子もうしの語は小供の時分から聞いていたが戦争から帰った者と内地に暮らした人とはかほどに顔つきが変って見えるかと思うと一層感慨が深い。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「みずから門を閉じるものだ。書物をひらいて、すこし孟子もうしの言葉でも噛みしめてみるがいい」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孟子もうし』の好処は尽心じんしんの章にある。「君子有三楽くんしさんらくあり而王天下しかもてんかにおうたるは不与存焉あずかりそんぜず父母倶存ふぼともにそんし兄弟無故けいていことなきは一楽也いちらくなり仰不愧於天あおぎててんにはじず俯不怍於人ふしてひとにはじざるは二楽也にらくなり得天下英才てんかのえいさいをえて而教育之これをきょういくするは三楽也さんらくなり
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
養老館は天明てんめい年間に建てられた藩の学校で、孟子もうしの養老の語を取って名附けたのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
『僕は孟子もうしが好きですからそれでおたずねしたのでございます』と、急所を突いた。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
孟子もうしはゝやおどろかん上達じようたつすみやかさ、うまいとめられて今宵こよひも一まわりと生意氣なまいきは七つ八つよりつのりて、やがてはかた置手おきてぬぐひ、鼻歌はなうたのそゝりぶし、十五の少年せうねんがませかたおそろし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人道を根蔕こんたいとして考えるならば、なんらその解決に苦しむべき理由が無い。人道とは孟子もうしのいわゆる仁義である。即ち利己的でなく、自己を利するを思うと同時に他をも利するを思う。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
孟子もうし』の和訓に涅を「くりにすれども」と読ませたのは第二次の誤りである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
剛勇、冷静、明智になるのだ、孟子もうし所謂いわゆる浩然こうぜんの気はへそを讃美した言葉だ、へそだ、へそだ、へそだ、おまえは試験場で頭がぐらぐらしたらふところから手を入れてしずかにへそをなでろ
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
あれを奸悪かんあくだなど言うのは、奸悪のきばを磨く機縁に恵まれぬやから所詮しょせんは繰り言にしか過ぎん。ではそんな詰らん老人をなぜ背負って火の中を逃げた。孟子もうしは何とやらのじょうと言ったではないか。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
早い話が、理屈で世間がどうか、なるならもう、とうに人間はみんな幸福しあわせになっているだろうと思われるんだ。日本にゃあ、神の道があるし、唐天竺からてんじくにゃあ孔子こうし孟子もうし、お釈迦しゃかさんもおいでなのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
たしか『孟子もうし』だったと思いますが、こんなことが出ています。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
孟子もうしにはそれが牛の血を塗ることになっているのである。
鐘に釁る (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし暗夜は暗夜の徳あって、孟子もうしのいわゆる「夜気やき」は暗黒のたまものである。いにしえの学者の言に、「好悪こうあくりょう夜気やききざす」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼等は皆孟子もうしの著書は、我々の怒にれ易いために、それを積んだ船があれば、必ずくつがえると信じています。科戸しなとの神はまだ一度も、そんな悪戯いたずらはしていません。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あたか孟子もうしの云いし浩然こうぜんの気に等しく、これを説明することはなはかたしと雖も、人にしていやしくもその気風品格の高尚なるものあるに非ざれば、才智伎倆ぎりょう如何いかんかかわらず
それを、そなたにいうのは孟子もうしほうくようなものだが、武家ぶけつみである、群雄割拠ぐんゆうかっきょして領土りょうどと領土のあばきあいのほか、なにごとも忘れている兵家へいかの罪でなければならぬ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
決してそんな造作ぞうさのないものではない。孟子もうし求放心きゅうほうしんと云われたくらいだ。邵康節しょうこうせつ心要放しんようほうと説いた事もある。また仏家ぶっかでは中峯和尚ちゅうほうおしょうと云うのが具不退転ぐふたいてんと云う事を教えている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
孟子もうしの母やおどろかん上達のすみやかさ、うまいとめられて今宵こよひも一廻りと生意気は七つ八つよりつのりて、やがては肩に置手ぬぐひ、鼻歌のそそり節、十五の少年がませかた恐ろし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あれを奸悪かんあくだなど言ふのは、奸悪のきばを磨く機縁に恵まれぬやから所詮しょせんは繰り言にしか過ぎん。ではそんな詰らん老人をなぜ背負つて火の中を逃げた。孟子もうしは何とやらのじょうと言つたではないか。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
子貢のまつりごとを問うに答えてはすなわちまず食を足らすと述べ、孟子もうしもまた、民の産を制して、楽歳に身を終うるまで飽き、凶年にも死亡を免れしめ、しかるのちって善にゆかしむるをもって
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
ここに覇業のついに成す無く、一時迂闊に見えても終局の勝利の王者に宿るゆえんを開悟せなければならぬ。これ孟子もうし梁恵王りょうけいおうに人を殺すをたしなまざるものくこれを一にせんと教えたゆえんであった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
孟子もうしの、「おもんぱからざる所にして知るものは人の良知なり」と言った通り、おもんぱからずして、ほとんど無意識に会得えとくしてある教訓きょうくんに従うを道徳と称するものでなかろうか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
少くとも、最後の一刻を除いて、修理に対する彼の忠心は、終始変らないものと信じていた。「きみ君為きみたらざれば、臣臣為らず」——これは孟子もうしの「道」だったばかりではない。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ほかの者は詩経しきょうを読むの書経しょきょうを読むのとうのに、私は孟子もうし素読そどくをすると云う次第である。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
孟子もうしのいわゆる民のごときは恒産こうさんなくんばって恒心こうしんなしで、心も魂も堕落こそすれ、とても明徳を明らかにするちょう人生の目的を実現する方向に進めるわけのものではない、ということである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
支那に於ても、その春秋戦国時代の末に賢人、孟子もうしが現れた。この孟子は孔子こうしの孫子思ししの門人に業を受けたというから、孔子とは頗る時代を隔てているけれども、思想の径路は両者全くいつにした。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)