のま)” の例文
嗚呼ああ! 何故あの時自分は酒をのまなかったろう。今は舌打して飲む酒、呑ばい、えば楽しいこの酒を何故飲なかったろう。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ふところにいだき入んとするにしうとめかたはらよりよくのませていだきいれよ、みちにてはねんねがのみにくからんと一言ひとことことばにもまごあいするこゝろぞしられける。
申せしゆゑ早々さう/\かへりしと見えたりさぞかし本意ほいなく思ひしなるべしと云ひながら文右衞門煙草たばこのまんと煙草盆たばこぼん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ハテなと思い眼をすえて熟視よくみると、三十くらいで細面ほそおもてやせた年増が、赤児に乳房をふくませ、悄然しょうぜんとして、乳をのませていたのである、この客平常つね威張屋いばりやだが余程臆病だと見え
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
さるほどに相添あひそひてより五ねんはるうめころのそゞろあるき、土曜日どえうび午後ごゝより同僚どうりよう二三にんうちつれちて、葛飾かつしかわたりの梅屋敷うめやしきまわかへりは廣小路ひろこうぢあたりの小料理こりようりやに、さけふかくはのまたちなれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それ外日いつぞや友人いうじんところで、或冬あるふゆさけみながらおそくまで話込はなしこんでゐたときこと恋愛談れんあいだんから女学生ぢよがくせい風評うはさはじまつて、其時そのとき細君さいくん一人ひとり同窓の友クラスメートに、散々さん/″\或学生あるがくせい苦労くらうをした揚句あげく熱湯にえゆのまされて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
お源は亭主のこの所為しょさに気をのまれて黙って見ていたが山盛五六杯食って、未だめそうもないのであきれもし、可笑おかしくもなり
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
りしが甲夜よりして枕に着たるゆゑなるか夜半の鐘に不斗ふとを覺し見ればかたへにお光のをらぬにさて雪隱せついんへでも行きたるかと思うてやほら寢返ねがへりなし煙草たばこのまんと枕元を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
留守中一回もないた事が無く、しかも肥太こえふとりて丈夫に育つ事、あまりに不思議と、我も思えば人も思い、段々だんだん噂が高くなり、ついには母の亡霊きたりて、乳をのますのだと云うこと、大評判となり家主より
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
自分達夫婦は最初から母にのまれていたので、母の為ることをいかり、恨み、罵ってはみる者の、自分達の力では母をどうすることも出来ないのであった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
云なさかななくのまれるものか又骨折は別だぞと云中お節も出來たるに女房娘を始めとして皆々かどへ送り出風呂敷包ふろしきづつみは駕籠に付サア/\急いでやつくれと云に何れも合點がつてんと二ちやうの駕籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そんなら何故なぜお前さん月のうち十日は必然きっと休むの? お前さんはお酒はのまないし外に道楽はなし満足に仕事に出てさえおくれなら如斯こんな貧乏は仕ないんだよ。——」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)