インチ)” の例文
羊皮の表紙に一杯ドス黝い血がこびりついて、六インチに四吋ぐらいの合判あいばんの帳面であったが、綴糸はきれてページはバラバラになっていた。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
前者は十インチ、後者は十二インチ、たった一枚のレコードだが、いずれも珠玉のごとく美しい。(フィッシャーのレコードは全部ビクター)
そして二フィートフィートと列の西に寄るに従って、雫と雫との間隔は一インチインチと大きくなって、やがて吾々の視線から闇の中へ消えている。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「本当でございますか、それは……あのう、十六吋の砲弾、いや十八吋の砲弾、二十インチの砲弾をうちこまれても沈まないのですぞ」
せいぜい四インチばかりの波型の幌飾りが四方を取りまわして、その幌飾りのへりが青で、それが八月の微風に涼しげにそよいでいた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
元来サモア人は体格がいいが、ラファエレも六フィートインチ位はあろう。身体ばかり大きいくせに一向意気地がなく、のろまな哀願的人物である。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その時足跡が残されたのであるが、それは長さ二十二インチ、幅十一吋もある巨大なもので、人間の足跡に似た形であったという。
あんな風なわばおもちゃの大砲なんです。口径は十二インチもありますけれど、弾丸はでっかいキルク玉で、しかも一丁位しか飛びやしないのです
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
支那人の文学的口調を以て言えば、血は流れてきねを漂わす、血が流れて四十二インチ臼砲きゅうほうが漂う、血の洪水、しかばねの山を築く。何の目的でやっているか。
大戦乱後の国際平和 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
血や臓腑の残りをきれいに洗われたやつは、回転庖丁のついた箱を通って幅二インチ半の切身となって受桶へ落ちてくる。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「そうよ。あの鉄の棒は警察で引上げて行ったろう。四分の一インチぐらいの細いパイプだったが……なあ又野……」
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『えい、ふざけたり/\、海賊かいぞくどもものせてれんづ。』と矢庭やには左舷さげんインチ速射砲そくしやほうほうせたが、たちま心付こゝろづいた、海軍々律かいぐんぐんりつげんとして泰山たいざんごと
卿等は百万トンの甲鉄艦にも増し、百インチの砲弾にも優る、男子排斥の一大武器たる肱鉄砲を有するに非ずや。
肱鉄砲 (新字旧仮名) / 管野須賀子(著)
ある場所では三インチにもならぬ牧草が年に三度も刈り取られる。そして谿谷では、草地は球転がしの芝生のように短かく刈られ、鋏で刈り込んだように凹凸がない。
ここにこの御人の十七インチもあるやうな大きな頸は曲げることが出来ないのかといふ心配が起つてくる。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
靴下留はばインチ半以内のもの一つ、眼鏡——眼科医の診断書ならびに領事館の翻訳証明を要す——一個。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
彼女は、すぐれた才能もなく、性質の上でもこれといふ特色もなく、普通の子供の水準レヴェル以上に、一インチでも彼女を上げるやうな、特別に發達した感情も趣味もなかつた。
その前に、紫檀の脚に支えられ、純粋極る東洋紅玉のような閃きを持った皿が、一枚、高貴な孤独を愉しむようにゆったり光を射かえしていた。直径九インチもあろうか。
伊太利亜の古陶 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
で、根気よく一箇年かねんほど、この工場こうばの仕事を続けてみると、五週間に六銭の食費で、鼠一匹の稼ぎ高が、廿五インチの長さの糸を三千三百五十本紡いだといふ勘定になつた。
『最上』の装甲そうこうは三インチ(七・六糎)だ。しかし、この強さは九吋の装甲に負けないのである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
またよくある例は、二インチくらいの長さの細い金棒に紐を結びつけたのを使う。犯人が部屋を出る時に、この棒を恰度てこ代りになるような風に鍵の頭の孔に上から刺しておく。
これはくわしく覚えている、百キロぐらいな爆発薬で船体を部分部分に切り壊して、それを六インチの針金でゆわえて、そうして六百トンのブイアンシーのある船を、水で重くした上
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「熊城君、帽子の寸法サイズで八インチに近い大頭だよ。六五糎もあるのだ。無論手近の役には立たんけれども、兎角数字と云うやつは、推論の行詰まりを救ってくれる事があるからね」
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
現にバアトンが計測した黒人の penis は平均長さ何インチなどと註してある。(未完)
それから七年に一度ずつ、軍馬にった太公がキルデーアの革船と呼ばれている山の廻りを騎り廻します。太守がいなくなった時、その軍馬の銀の蹄鉄は半インチの厚さがありました。
インチほどの獣脂蝋燭が一つ、A・D・印のブライヤのパイプに長刻みのカヴェンデッシュ煙草を半オンスばかりつめた海豹いるか皮の煙草入れ、金鎖のついた銀時計、金貨で五ソヴリン
彼はじっと、富めるものでも、貧しいものでも、男でも女でも、およそ六フィートたっぷりあろうと思われる人を見つめていた。なぜなら、フランボーはその上六インチばかり大きかったのだから。
人間が『仮り』に定めた尺度でもって、それと相対して僕が五尺三寸あるとか、あの木は四米の高さだとか、このタバコ盆は厚みが四分の一インチだとか、そう唱えているに過ぎないのだからね。
脳波操縦士 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
The better won! たとえ一インチであれ一秒であれ、いやしくも「差」あるならばそれは誇りか諦めかを意味する。この数の厳粛とその運用性、そこにスポーツの深い組織がある。
スポーツの美的要素 (新字新仮名) / 中井正一(著)
鳩を殺すには散弾で足りるとしたら、十二インチ砲をすえつける必要はない。
探偵小説壇の諸傾向 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
しかし馬子は、もう一、二インチで体へ触れそうになっている轍をば両手にこめた満身の力で僅かに支えているけれど、今に精根がつきると轢き殺されるのだ。とても身動きなど出来るものでない。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
低い掘通トンネルから灰の一インチも溜まっている停泊用釜ドンキ・ボイラへ這上って、両脚が一度に這入らない程の穴から為吉は水管の組合っているボイラの外側へ身を縮めた。火の気のない釜の外は氷室ひむろのように冷えていた。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
いろいろあります 口径さしわたしインチのと 大きいのは二十四インチのと
延長參千九フイートインチ
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
延長参千九フィートインチ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
本式の十インチシェラック盤にプレスしたものですが、いうまでもなくラフで、放送局の録音放送などには、盛んにこれを用いております。
やがて成長すれば三二インチの高さ体重一一〇封度ポンドにも達するのでは、まさに犬種中の最大種アイリッシ・ウルフ・ハウンドであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
先程拝見しました白鮫号の白い舷側の吃水線から、一様に五インチ程の上のところに、水平な線に沿って、茶褐色の泡の跡が残っております。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
窓外そうがいを見ると、空は相変らず、どんよりと曇っている。畠には、小麦の芽が、ようやく三、四インチ伸びている。ようやく春になったのである。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
老人の白髯はくぜんを集めて作ったかぶとの飾り毛を風になびかせ、獣歯の頸掛くびかけをつけた・身長六フィートインチの筋骨隆々たる赤銅色の戦士達の正装姿は、全く圧倒的である。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
あの直径二フェートインチ、全長二百何十フェートという、大一番の鋼鉄はがね円棒シャフトだ。重さなんかドレ位あるか、考えたってわかるもんじゃない。実際、傍へ寄ってみたまえ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
道義の力は非常に偉大なるもので、ドレッドノート、十二インチの大砲、百万の軍隊より、道義の力は強いのである(拍手)。道義の力を取除けては、平和は成り立たぬ。
平和事業の将来 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
が、丁抹デンマークの王様だけはホテルの社交室で一眼で認めることが出来た。王様の身長は六フィートインチである。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
氷山へうざんくだけてたま飛散とびちごとく、すでにうしなつて、四途路筋斗しどろもどろ海賊船かいぞくせんに、命中あたるも/\、本艦々尾ほんかんかんびの八インチ速射砲そくしやほうは、たちま一隻いつせき撃沈げきちんし、同時どうじ打出うちだす十二サンチほう榴彈りうだん
だが、(神よ、おゆるし下され!)そのことで私は一時間ばかり前にあのひとが恐ろしく眞面目まじめになるやうなことを云つてやつた。あのひとの口の兩角は、半インチばかり下つたよ。
時にまた、レールの上、十二、三インチの空間をあけて、かの直径七十吋余の截断刃せつだんじんが、むなしくその霊妙音を放って、ただに劉喨りゅうりょう粛々と空廻からまわりしているのである。その旋転光。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
インチをはかって、一揃い、女の子に買ってこらせろ。オット、待て。帽子を見せろ。アレアレ、キミ、何十年かぶったの。帽子から、サルマタから、靴。何から何までじゃないか
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
また同じ頃の或る伊太利イタリー人は、十八インチ平方の紙に、自分の好きな詩を三千行ばかり書き込むで、ひまさへあるといつもポケツトから取り出しては、それに読み耽つてゐたといふ事だ。
私はつて、右足と左足との歩きぐせにたった一インチの相違があった為に、沙漠さばくの中を円を描いて歩き続けた旅人の話を聞いていた。沙漠には雲がはれて、日も出よう、星もまたたこう。
火星の運河 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なるほど、窓の下際から一インチばかり上の処を、見事に貫通した穴があった。