さん)” の例文
致し罷り在候處さんぬる十二月中私し儀上野の大師へ參詣さんけい途中とちう上野車坂下にて大橋文右衛門にめぐり逢ひ夫れより同人宅へ參り樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
原口はらぐちたき、いはれあり、さんぬる八日やうか大雨たいう暗夜あんや、十ぎて春鴻子しゆんこうしきたる、くるまよりづるに、かほいろいたましくひたりて、みちなる大瀧おほたきおそろしかりきと。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
望める盾を貸し申そう。——長男チアーはさんぬる騎士の闘技に足を痛めて今なおじょくを離れず。その時彼が持ちたるは白地に赤く十字架を染めたる盾なり。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其方も見つらん、さんぬる春の花見の宴に、一門の面目とたゝへられて、舞妓まひこ白拍子しらびやうしにも比すべからんおの優技わざをば、さも誇り顏に見えしは、親の身の中々にはづかしかりし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
其の方儀さんぬる十二月二十一日、江戸橋に於て罪人友之助引廻しの際、一行を差止め、我こそ罪人なりと名告なので候う由なるが、全く其の方は数人の人殺しを致しながら
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さんぬる建安八年の戦いに、父の凌操りょうそうは、黄祖を攻めに行って、大功をたてたが、その頃まだ黄祖の手についていたこの甘寧のために、口惜しくも、彼の父は射殺されていた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さんぬるとし中泉なかいづみから中尊寺ちうそんじまうでた六ぐわつのはじめには、細流さいりうかげ宿やどして、山吹やまぶきはなの、かたかひきざめるがごといたのをた。かれつめた黄金わうごんである。これあたゝかき瑠璃るりである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さんぬる六月十五日の夜同所北割下水大伴蟠龍軒の屋敷へ忍び込み、同人舎弟なる蟠作並びに門弟安兵衞やすべえ、友之助妻むら、同人母さき殺害せつがいいたし、今日こんにちまで隠れ居りしところ、友之助が引廻しの節
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
越前守殿見られ馬喰町二丁目武藏屋長兵衞ならびに前名新藤市之丞當時たうじ紙屑屋長八その共儀どもぎ此程うつたへの趣きいま一應其所そこにて申し立よ且又さんぬる十二月中越後高田浪人大橋文右衞門へ尋ねの儀に付紙屑問屋かみくづとんやならびに屑買等一同呼出したるせつ其方江戸内に住居致しをりしや又旅行留守中にてもありたりや其仔細しさいつゝまず申し立よと申さるゝに長八つゝしんで答る樣私し儀は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さんぬる頃、旅籠屋はたごやの主人たち、三四人が共同で、熱海神社の鳥居前へ、ビイヤホオルを営んだ時、近所から狩催かりもよおした、容眉みめむすめの中にまじって、卓子テエブル周囲まわりを立働いた名残なごりであるのを
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此ののちどのようなる悪事を仕出来しでかすかも知れぬ、さぞ町人方が難渋するであろうと思いますと、矢もたてたまらず、彼等の命を絶って世間の難儀を救うにかずと決心いたし、さんぬる十五日の
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さんぬる……いやいや、いつの年も、盂蘭盆うらぼんに墓地へ燈籠を供えて、心ばかり小さなあかりともすのは、このあたりすべてかわりなく、親類一門、それぞれ知己ちかづきの新仏へ志のやりとりをするから、十三日
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)