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厭世
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えんせい
ふりがな文庫
“
厭世
(
えんせい
)” の例文
〕更に例を求めるとすれば、僕は正宗白鳥氏の作品にさへ
屡々
(
しばしば
)
論ぜられる
厭世
(
えんせい
)
主義よりも寧ろ
基督
(
キリスト
)
的魂の絶望を感じてゐるものである。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女にはもちろん不平や
厭世
(
えんせい
)
のために、山に隠れるということがない。気が狂った結果であることは、その挙動を見れば誰にでも分った。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
とありますが、「初夜の鐘は諸行無常、入相の鐘は寂滅為楽」などというと、いかにも
厭世
(
えんせい
)
的な
滅入
(
めい
)
ってゆくような気がします。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
私はただ長生きの罪にしてあきらめますが、若いあなたのような人を、こんなふうに少しでも
厭世
(
えんせい
)
的にする世の中かと思うと恨めしくなります
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その結果がビフテキ主義となろうが、
馬鈴薯
(
じゃがいも
)
主義となろうが、
将
(
は
)
た
厭世
(
えんせい
)
の徒となってこの生命を
咀
(
のろお
)
うが、決して
頓着
(
とんじゃく
)
しない!
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
私はたった一人で桜山の百姓家の離れ座敷を借りて味気ないその日その日を送り迎えていた頃であったから、幾分
厭世
(
えんせい
)
的になっていた私の心には
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
余はその頃国語の先生が兼好法師の
厭世
(
えんせい
)
思想を攻撃したのが
癪
(
しゃく
)
に障ってそれを讃美するような文章を作って久保君に渡したことなどを記憶している。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
濡
(
ぬ
)
れた
褌
(
ふんどし
)
をぶら下げて、暑い夕日の中を帰ってくる時の
気色
(
きしょく
)
の悪さは、実に
厭世
(
えんせい
)
の感を少年の心に
目醒
(
めざ
)
めさせた。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
けれどうち明けて言いますと、私はあまりに年老いてる
厭世
(
えんせい
)
家ですから、彼らのどの家にはいっても安楽な心地はしません。私には自由な空気が必要です。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「何だか
厭世
(
えんせい
)
の様な呑気の様な妙なのね。
私
(
わたし
)
よく分らないわ。けれども、少し
胡麻化
(
ごまか
)
していらっしゃる様よ」
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
博士夫人の
厭世
(
えんせい
)
自殺とか何とか、三面記事の隅っこに小さい記事を留めるに過ぎなかったが、その名探偵のお蔭で、我々もすばらしい話題が出来たというものだ。
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼はゆうべ細君とやりあったこと、またそのあと、近所の呑み屋で侮辱されたことなどから、少なからず
厭世
(
えんせい
)
的な気分になっており、そのため感情が
苛
(
いら
)
だっていた。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
信仰の動揺より
来
(
きた
)
りし
厭世
(
えんせい
)
懐疑の世は過ぎて、生命の力の発揮する処
爰
(
ここ
)
に深甚の歓喜と悲痛を求む。
矢立のちび筆
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
前の句と同じく、或る荒寥とした、心の隅の寂しさを感じさせる句であるが、その「寂しさ」は、勿論
厭世
(
えんせい
)
の寂しさではなく、また芭蕉の寂びしさともちがっている。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
ルコント・ドゥ・リイルの出づるや、哲学に
基
(
もとづ
)
ける
厭世
(
えんせい
)
観は
仏蘭西
(
フランス
)
の詩文に致死の
棺衣
(
たれぎぬ
)
を投げたり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
厭世
(
えんせい
)
だの自暴自棄だの
或
(
ある
)
いは深い
諦観
(
ていかん
)
だのとしたり顔して
囁
(
ささや
)
いていたひともありましたが、私の眼には、あのお方はいつもゆったりしていて、のんきそうに見えました。
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それはA市にある家庭に宛てたもので、商売上の失敗から
厭世
(
えんせい
)
自殺をする旨の遺書で、その自殺の方法として、飛行機から飛び降りる事を
択
(
えら
)
んだとしたためられてあった。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
純一は顔を
蹙
(
しか
)
めた。そして作者の
厭世
(
えんせい
)
主義には多少の同情を寄せながら、そのカトリック教を唯一の退却路にしているのを見て、因襲というものの根ざしの強さを感じた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
合歓綢繆
(
ごうがんちゅうびゅう
)
を全うせざるもの詩家の常ながら、特に
厭世
(
えんせい
)
詩家に多きを見て思うところなり。
抑
(
そもそ
)
も人間の生涯に思想なる者の発芽し
来
(
きた
)
るより、善美を
希
(
ねが
)
うて醜悪を忌むは自然の理なり。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それにこの大学生は肺結核を
煩
(
わずら
)
っていて、日に増し悲観な
厭世
(
えんせい
)
に陥るようになった。あれやこれやで
何処
(
どこ
)
か
他
(
わき
)
へ
宿替
(
やどがえ
)
をするようなことになった。その時主人は、幸い物置が
空
(
あ
)
いている。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
「こいつ飛んでもない
驢馬
(
ろば
)
になってしまったんで……」と
厭世
(
えんせい
)
的な面持を浮べた。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
自然の
最奥
(
さいおう
)
に秘める暗黒なる力に対する
厭世
(
えんせい
)
の情は今彼の胸を
簇々
(
むらむら
)
として襲った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
しこうしてその文字の中には胸裏に
蟠
(
わだかま
)
る不平の反応として
厭世
(
えんせい
)
的または
嘲俗
(
ちょうぞく
)
的の語句を見るもまた普通のことなり。これ貧に安んずる者に非ずして貧に
悶
(
もだ
)
ゆる者。曙覧はたして貧に悶ゆる者か否か。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
失いたる
厭世
(
えんせい
)
自殺ならむかとも疑われしが右は全く同人の過失にて同日書斎にて猟用二連発銃のケースに火薬装填中過って爆発せしめしものと判明せり
因
(
ちな
)
みに同家は召使いの老婆と二人暮しにて半年たたぬ内に重ね重ねの不幸とて附近の人々は至極同情を
鼻に基く殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
自殺を弁護せるモンテェニュのごときは予が
畏友
(
いゆう
)
の
一人
(
いちにん
)
なり。ただ予は自殺せざりし
厭世
(
えんせい
)
主義者、——ショオペンハウエルの
輩
(
はい
)
とは交際せず。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大きな失望をいたしましたとか申すような時に
厭世
(
えんせい
)
的になって出家をいたすと申すことはあまりほめられないことになっているではございませんか。
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
南北朝以来戦乱永く相つぎ人心
諸行無常
(
しょぎょうむじょう
)
を観ずる事従つて深かりしがその
厭世
(
えんせい
)
思想は漸次時代の修養を経てまづ
洒脱
(
しゃだつ
)
となり
次
(
つい
)
で滑稽諧謔に慰安を求めんとするに至れり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼岸を望んで、此岸を顧みて見ると、万有の根本は盲目の意志になってしまう。それが生を肯定することの出来ない
厭世
(
えんせい
)
主義だね。そこへニイチェが出て一転語を下した。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そんなに思いきるほどの過去があるのだろうか、それとも津田そのひとの気質で、放蕩享楽のはて
厭世
(
えんせい
)
的になったものだろうか。玄一郎にはどちらとも判断はつかなかった。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私の心に
厭世
(
えんせい
)
という暗い芽を吹き出さしめたのは、算術であったといっていい位いだ。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
すると二人の恋からこんな
厭世
(
えんせい
)
に近い覚悟が出ようはずがなかった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不当に恵まれているという、いやな恐怖感が、幼時から、私を卑屈にし、
厭世
(
えんせい
)
的にしていた。金持の子供は金持の子供らしく大地獄に落ちなければならぬという信仰を持っていた。逃げるのは卑怯だ。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
少くとも生涯同一の歎を繰り返すことに
倦
(
う
)
まないのは
滑稽
(
こっけい
)
であると共に不道徳である。実際又偉大なる
厭世
(
えんせい
)
主義者は渋面ばかり作ってはいない。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
厭世
(
えんせい
)
的になっているのは何の理由であるかはわからぬが哀れに思われて、八月の十日過ぎにはまた
小鷹狩
(
こたかが
)
りの帰りに小野の家へ寄った。例の少将の尼を呼び出して
源氏物語:55 手習
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「そんな事を考えると、
厭世
(
えんせい
)
的になってしまいますね」
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし
年月
(
ねんげつ
)
はこの
厭世
(
えんせい
)
主義者をいつか部内でも評判の
善
(
よ
)
い海軍少将の一人に数えはじめた。彼は
揮毫
(
きごう
)
を
勧
(
すす
)
められても、
滅多
(
めった
)
に筆をとり上げたことはなかった。
三つの窓
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
厭世
(
えんせい
)
的なお気持ちにもなられたのであろう、人がその秘密を悟らずにいるとは思われない、
暗闇
(
くらがり
)
に置くべき問題であるから自分には人が告げないのであろうと中将は思った。
源氏物語:44 匂宮
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
古来賭博に熱中した
厭世
(
えんせい
)
主義者のないことは如何に賭博の人生に酷似しているかを示すものである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もうお
上
(
かみ
)
とお
后
(
きさき
)
と申すより一家の御夫婦のようなものですからね。ただ今のお話ですが、さして
厭世
(
えんせい
)
的になる理由のない人が断然この世の中を捨てることは至難なことでしょう。
源氏物語:38 鈴虫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ではなぜどちらも絶望であるか? これは僕の
厭世
(
えんせい
)
主義の「かも知れない」を「である」と云ひ切らせたのである。君は僕を憐んだのか、不幸にもこの虚を
衝
(
つ
)
かなかつた。
解嘲
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
厭世
(
えんせい
)
的にならざるをえませんで、いろいろと
煩悶
(
はんもん
)
をいたしましたが、たびたびかたじけないお言葉をいただきましたことによりまして、今日までこうしていることができたのでございます
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ある一つ二つの場合に得た失望感からゆがめられて以来は
厭世
(
えんせい
)
的な思想になって、出家を志していたにもかかわらず、親たちの
歎
(
なげ
)
きを顧みると、この
絆
(
ほだし
)
が
遁世
(
とんせい
)
の実を上げさすまいと考えられて
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
去年今年と続いて不幸にあっていることについても源氏の心は
厭世
(
えんせい
)
的に傾いて、この機会に僧になろうかとも思うのであったが、いろいろな
絆
(
ほだし
)
を持っている源氏にそれは実現のできる事ではなかった。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
厭世
(
えんせい
)
的になっているというふうを源氏は表面に作っていた。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
“厭世”の意味
《名詞》
厭 世 (えんせい)
この世の中で生きることを、つらくて嫌だと思うこと。
(出典:Wiktionary)
厭
漢検準1級
部首:⼚
14画
世
常用漢字
小3
部首:⼀
5画
“厭世”で始まる語句
厭世的
厭世観
厭世家
厭世主義
厭世感
厭世論
厭世虚無
厭世主義者