厚意こうい)” の例文
とほりかゝつた見知越みしりごしの、みうらと書店しよてん厚意こういで、茣蓙ござ二枚にまいと、番傘ばんがさりて、すなきまはすなか這々はふ/\ていかへつてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しか卯平うへい僅少きんせう厚意こういたいしてくぼんだ茶色ちやいろしがめるやうにして、あらひもせぬから兩端りやうはしちひさなあな穿うがつてすゝるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このとき、真坊しんぼうは、和尚おしょうさまの厚意こういをうれしくおもって、こののち、はちのいしげまいとこころちかったのであります。
真坊と和尚さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
召されてミュンヘンにおもむいたワグナーに幾多の敵とさまたげとはあったにしても、国王の厚意こういでルツェルン湖のほとりに閑居し、若きコジマと結婚して、愛児ジークフリートを挙げ
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
とかくして滞在中川上音二郎かわかみおとじろう一行いっこう、岡山市柳川座やながわざに乗り込み、大阪事件を芝居に仕組みて開場のはずなれば、是非見物し給われとの事に、厚意こうい黙止もだしがたく、一日両親を伴いて行き見るに
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
かるくその厚意こういしゃしたうえで、れいの宿泊所問題につき、じぶんたちはロロー殿下とともに起きふしするのがいいと思うから、いっしょに地下室に入れてもらいたいと、その用件をのべた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
安藤はってから三日めに、くるまを用意して自身じしんむかえにきた。花前は安藤のいうことをこばまなかった。いよいよ家をでるときには主人にも、ややひととおりのあいさつをして、厚意こういしゃした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
唯応爛酔報厚意 まさ爛酔らんすいして厚意こういむくゆべく
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その厚意こうい今なお寸時すんじわするることあたわず。
翌年よくねん一月いちぐわつ親類見舞しんるゐみまひに、夫人ふじん上京じやうきやうする。ついでに、茅屋ばうをく立寄たちよるといふ音信たよりをうけた。ところで、いまさら狼狽らうばいしたのは、そのとき厚意こうい萬分まんぶんいちむくゆるのに手段しゆだんがなかつたためである。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あかいたすきをかけた、出征兵しゅっせいへいは、ただしく、つつましく、って、みんなの厚意こうい感謝かんしゃしていました。それは、徳蔵とくぞうさんが、おくられたときの姿すがたおもさせます。まったくおなじでありました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
とんさんの厚意こういだし、こゑいたら聞分きゝわけて、一枚いちまいづゝでもつけようとおもふと、れてもククともかない。パチヤリとみづおともさせなければ、ばんはまた寂寞しんとしてかぜさへかない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)