すす)” の例文
時として長距離をすすはしって後同じ道筋を跡へ戻る事数百ヤードにしてたちまち横の方へ高跳たかとびして静かにかくれ居ると犬知らず前へ行ってしまう。
蒲田が一切を引受けて見事にらち開けんといふに励されて、さては一生の怨敵おんてき退散のいはひと、おのおのそぞろすすむ膝をあつめて、長夜ちようやの宴を催さんとぞひしめいたる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
競争者におくれずすすまず、ひまだにあらば一躍して乗っ越さんと、にらみ合いつつ推し行くさまは、この道堪能かんのうの達者と覚しく、いと頼もしく見えたりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よって臣勇を奮いすすみ窺いて、確かに妖蟒ようもうを見る。頭、山岳の如く、目、江海に等し。首をぐればすなわち殿閣ひとしく呑み、腰を伸ばせば則ち楼垣尽くくつがえる。
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
しかれども地方の巡邏じゅんら甚だ密にして、官船を除くの外、一切近づきすすむを許さず、これがために踟蹰ちちゅうす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
天下何事か為すからざらんや、と奮然として瓜を地になげうてば、護衛の軍士皆激怒して、すすんで昺と貴とをとらえ、かねて朝廷に内通せる葛誠かつせい盧振ろしんを殿下に取っておさえたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いやに手数てすうが掛りますな」と主人は戦争の通信を読むくらいの意気込で席をすすめる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
揉上もみあげの心持ち長い女の顔はぽきぽきしていた。銀杏返いちょうがえしの頭髪あたまに、白いくしして、黒繻子くろじゅすの帯をしめていたが、笹村のそこへ突っ立った姿を見ると、笑顔えがおで少しすすみ出て叮寧に両手をいた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
近くは乃木大将の「征馬すすまず人語らず、金州城外斜陽に立つ」
閑人詩話 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
沈黙つてゐるは、しめたものと、吉蔵膝をすすませて
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
五百賊を討つに独り進んで戦い百人を射、余りの四百人に向い、汝らすすんで無駄死にをするな、傷ついた者の矢を抜いて死ぬるか生きるかを見よと言うた。
満枝は彼のにはか捩向ねぢむきてひざすすむをさへ覚えざらんとするを見て、ゆがむる口角くちもとゑみを忍びつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その具もとより備わらず、術また熱せず、舟ややもすれば木葉の如く波上に廻旋してすすまず、波濤漠々として前途茫たり、最早もはやき、腕脱し、如何ともするあたわざる場合に迫りしも
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
二尺すすむと向うでも二尺前む。三尺四尺は愚か、千里を行き尽しても、タンタラスは腹が減り通しで、咽喉が渇き続けである。おおかた今でも水と菓物を追っけて歩いてるだろう。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高煦こうこう急を見、精騎数千をひきい、すすんで王とがっせんとす。瞿能くのうまた猛襲し、大呼して曰く、燕を滅せんと。たま/\旋風突発して、南軍の大将の大旗を折る。南軍の将卒あいて驚き動く。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ひろく牙大にしてこの騎士を撃たんとすすむ、両足獅のごとく尾不釣合に長く、首尾の間確かに二十二足生え、酒樽に似て日に映じて赫耀かくようたり、その眼光りて浄玻璃じょうはりかと怪しまれ
南軍の将平安へいあん驍勇ぎょうゆうにして、かつて燕王に従いて塞北さいほくに戦い、王の兵を用いるの虚実をる。先鋒せんぽうとなりて燕に当り、ほこふるいてすすむ。瞿能くのう父子もまた踴躍して戦う。二将のむかう所、燕兵披靡ひびす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
母のその目はみはり、そのひざすすみ、その胸はつぶれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
我今すなわちすでに好きむこを得たりと。すなわち、指語すらく中に宿るべしと。阿那律すなわちすすみて室に入り結跏趺坐けっかふざす。坐して未だ久しからずしてまた賈客あり、来たりて宿を求む。
左右の肋骨をこもごも引き寄せて体を代る代る左右に曲げ、その後部をすすめる中、その一部(第三図)また自ら或る凸起にり掛かると同時に、体の前部今まで曲りおったのが真直ぐに伸びて
きゆみで射ようとすると汝疑うなかれといいながらすすみ来て、この地に福がない、君の子孫は西涼の王となるはず故酒泉しゅせんに遷都せよと勧めて去った、すなわち酒泉に奠都てんとし西涼国を立てたという